北海道新幹線の札幌延伸開業は2038年度へ! 函館本線山線の廃止は白紙撤回し、活用方策を再検討すべき
北海道新幹線の札幌延伸は2038年度を軸に調整
現在、新函館北斗駅から札幌駅に向けて延伸工事が進められている北海道新幹線であるが、北海道新聞の報道により国土交通省が札幌開業の時期について2038年度を軸にその前後で調整していることが明らかにされた。北海道新幹線の札幌延伸開業は当初2030年度末を開業目標としていたが、トンネル工事が難航している影響で開業時期が見通せない状況となっていた。
トンネル工事は、巨大な岩塊の出現によりたびたび工事が停止している羊蹄トンネルが3~4年の遅れと言われているほか、渡島トンネルでも軟弱地盤のために工事が遅れており、このペースで工事が進めば貫通まであと8年は要するという。
北海道庁主導で廃止を決め迷走中の並行在来線問題は先送り
北海道新幹線の並行在来線問題では、北海道庁が主導する並行在来線対策協議会の場で、地域のバス会社を協議の場に呼ぶことなく、かつ住民の意見も聞くことなく事実上の独断で函館本線の山線と呼ばれる長万部―小樽間の廃止を決定したが、昨今深刻化するバスドライバー不足の問題からバス転換のめどが立たずに迷走中だ。
倶知安町は、新幹線を主体とした街づくりを進めたいことを理由に函館本線の2025年での廃止を主張しているが、冬の観光シーズンを迎え、倶知安町にはバスでは運びきれないほどの観光客が押し寄せ始めており、町の主張は完全に破綻している。今回の札幌延伸開業の大幅延期を受けてこの問題は先送りとなっており、山線は当面の間は存続することになりそうだ。
例年9月に秋の行楽臨時列車として札幌―函館間を倶知安経由で運行される特急ニセコ号は、今年も大盛況で、全国から特急ニセコ号への乗車を目的として観光客が押し寄せるなど、大盛況であったことなどを考えると、鉄道と比較して所要時間が延び乗り心地の劣るバスよりも並行在来線を新幹線の2次交通として活用した方が大きな経済効果を期待できる。
北海道新幹線の一連の動きについては、特に新幹線新駅ができる自治体の関係者は「北海道新幹線を作ること」と「交付金を目的とした街の再開発」以外に意識が向いておらず、新幹線の開業を契機としてどのように町の経済を活性化させていくのかという視点が欠落していることが非常に残念で、行政側はそうしたことを地域で議論するためのワークショップなどを開催しようという動きすら見られない。
地域経済活性化や防災面から山線廃止を白紙撤回し再検討すべき
さらに筆者の記事(北海道新幹線、泥沼化の並行在来線問題 防災計画にも明記「原子力災害時の避難路」としての住民指摘も黙殺)でも指摘しているが、函館本線の長万部―小樽間は、北海道地域防災計画(原子力防災計画編)に、泊原子力発電所が放射能漏れなどの原子力災害時の避難路としても明記されており、こうした災害時に自動車交通だけで後志管内8万人の住民を迅速に避難させることは困難ではないかという指摘もある。
北海道新幹線の札幌延伸開業の大幅な開業遅延が明確になった今、地域の経済活性化や防災計画、さらに有珠山噴火時に不通となることが想定される室蘭本線の貨物列車の迂回ルートとしての活用なども含めて、改めて並行在来線の廃止を白紙撤回し活用方策を再検討をするべきではないだろうか。
(了)