解散を打てなかった安倍総理には「負け犬」の烙印が押される
フーテン老人世直し録(226)
水無月朔日
昨年末からしきりに衆参ダブルの風を吹かせていた安倍総理が迷走を重ねたあげくついに解散を断念した。フーテンはブログに解散をやりたくとも出来なかった非力の総理を何人も見てきたと書いたが、これで安倍総理もその一人として名が残ることになる。
この迷走劇で深刻なのは第一次安倍政権以来強固な盟友関係にあった麻生副総理との間に亀裂が生じたことである。かつてフーテンは安倍・麻生関係を「AA連合」と呼んだが、菅官房長官や二階総務会長の影響力が上向き彼らが睨みを効かせる中、「AA連合」は終焉を迎えたかもしれない。解散見送りは権力中枢の力関係の変化を物語っている。
安倍総理は昨年、安保法案を強引に押し切り、国内に分断と対立を生じさせたが、その後に狙ったのは在任期間の延長である。日本の総理の通算在職日数歴代一位は安倍総理の郷里の先輩である桂太郎の2886日。桂は日英同盟を締結して日露戦争に勝利し、また韓国併合や大逆事件による社会主義者の弾圧を行った総理として知られる。
第二位は安倍総理の大叔父に当たる佐藤栄作の2798日、第三位はやはり長州出身伊藤博文の2620日、第四位が戦後日本の針路を決めた吉田茂2616日、第五位が小泉純一郎1980日、第六位が中曽根康弘1806日である。
安倍総理は自民党総裁任期が切れる2018年9月まで総理を務めれば2400日を超えて吉田茂に肉薄する。そしてそれまでに自民党の党則を3期9年の総裁任期に変えれば、桂太郎の歴代一位の記録を抜くことが可能となり、また2020年の東京オリンピックを総理として迎えることができる。
自民党総裁任期はかつて1期2年だったが何期でも務められた。そのため佐藤栄作は4期7年8か月の長期政権を実現したが、長期政権は人心の離反を招き、3選禁止の党則ができた。そのため総理は最長でも4年という時代が続く。これを変えようとしたのが中曽根康弘である。
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