それでもアベノミクスのエンジンを吹かせるのかを徹底吟味すべき
フーテン老人世直し録(232)
水無月某日
英国のEU離脱が決まったことで為替市場は円高が継続する見通しとなった。円安・株高を演出してデフレから脱却しようとしたアベノミクスは転換を迫られる事態である。
それはとりもなおさずこの参院選での自公のスローガン「アベノミクスのエンジンをさらに吹かせる」を変更しなければならないと考えるのが常識である。何をどう変更するのかと思っていたら自公は「政治の安定」を言い出した。危機が訪れたから「政治の安定」が必要というわけだ。
この「政治の安定」は公明党が選挙のたびに使ってきた言葉である。自民党との連立、とりわけ思想的に水と油の安倍自民党との協力関係を支持者に納得させるには「政治の安定」を前面に押し出す必要があった。
第二次安倍政権になってからはなおさら、「民主党政権のように政治が不安定になるのはもうこりごりでしょう」と言って民主党のマイナスイメージを思い出させれば、自民党と協力する方がまだましと支持者に思わせることができる。
それを公明党が言い出すのは定石通りだが、安倍総理も選挙演説で「政治の安定」を言い出したのを見ると、フーテンにはまたまた公明党におんぶにだっこの参院選という印象が強くなる。
ところで参議院選挙は自公の候補者が全員落選しても政権交代にはならない選挙である。もちろんそうなれば安倍総理は責任を問われ、他の誰かに総理の座を譲らざるを得なくなるが、しかし自民党の誰かがアベノミクスを修正してこの危機を乗り切れば、「政治の安定」が損なわれることはない。
したがって自公への投票が減れば「政治の安定」が損なわれると思わせるのは、無知な国民に無用の恐怖感を植え付ける心理作戦以外の何物でもない。あの英国の国民投票や米国のトランプ現象と共通する「理性ではなく感情」に訴えて恐怖をあおるポピュリズムの手法である。
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