ジャニーズショップのYouTube広告展開にみる、着実に進むジャニーズのデジタルシフト
5月下旬に、YouTube広告に突如流れたある広告が、ジャニーズファンの間で話題になったのをご存じでしょうか。
これはHey! Say! JUMPの新曲「春玄鳥」が5月25日にリリースされるのにあわせて、そのMVをロトスコープという手法でイラスト風に作成した動画。
ジャニーズショップのウェブサイトで視聴はできるものの、広告としてはYouTubeのみで流されたようで、ファンの間ではどうやって見れば良いのかとツイッター上でも大きな話題になっているほどでした。
通常であれば、邪魔者としてYouTube上ではスキップの対象とされがちなYouTube広告が、これほど歓迎されるのもジャニーズならではの現象と言えるかもしれません。
参考:議論を呼ぶYouTubeプレミアムのテレビCMから考える、動画広告の未来
ジャニーズショップアンバサダーの広告
実は、5月1日の段階で、Hey! Say! JUMPがジャニーズショップアンバサダーに就任することが発表されていました。
今回のYouTube広告は、そのHey! Say! JUMPのジャニーズショップアンバサダーとしての活動の第一弾として実施されたもののようです。
その結果、「春玄鳥」に関する話題をひろげることにも貢献していたようで、ツイート数のグラフを見ると、「春玄鳥」のリリース日である25日の直前に大きな山ができていることが確認できます。
特に興味深いのは、所属アーティストのネット露出を極端に絞ってきたことで有名だったジャニーズが、自らYouTube広告を展開するほどデジタル活用に積極的な姿勢を見せ始めている点でしょう。
積極化するジャニーズのSNS活用
なんといっても、ジャニーズがネットやSNS活用に本腰を入れはじめたのは、ついこの数年のことです。
口火を切ったのは2018年10月のTwitterアカウントでの「ジャニーズJr.チャンネル」開設。
その後、2019年にSixTONESや嵐などが続き、徐々にグループによってはSNS活用を積極的に行うようになってきました。
参考:ジャニーズはYouTubeで人気なのか? コロナ禍で活用が加速
最近では、二宮和也さんなど4人のメンバーが運営する「ジャにのちゃんねる」がジャニーズ事務所最大の登録者数のチャンネルとなり、24時間テレビとのコラボも開始するなど、グループ横断でのSNS活用も増えてきていました。
参考:ジャにのちゃんねると24時間テレビのコラボは、テレビとYouTubeの融合のシンボルになるか
そういう意味で、ジャニーズのネットやSNSの活用が、この数年で大きな進化を見せているのは間違いありません。
存在感を増すオンラインストア
その点で、今回のYouTube広告展開でさらに注目されるのが、「ジャニーズショップ」が明確にオンラインストアに注力しはじめている点です。
ジャニーズショップのオンラインストアがオープンしたのは、3年前の2019年5月のこと。
それまでは原宿・名古屋・大阪・福岡の店舗でしか購入できなかったジャニーズのグッズが地方でもオンラインで購入できるということで、ファンが歓喜して「ジャニショ」という略称がトレンドいりするほどの盛り上がりを見せたそうです。
参考:「ジャニーズショップ」オンラインストアOPEN決定 ファン歓喜で“ジャニショ”トレンド入り
ジャニーズショップのツイッターアカウントも、今でこそ76万を超えるフォロワーがいますが、開設されたのは2020年5月になってからです。
ジャニーズショップが試行錯誤しながら進化しているのがうかがえます。
ただ、そのオンラインストアオープンは、間違いなくジャニーズショップ全体に対して好影響を与えており、Googleトレンドでジャニーズショップの検索数を見ると見事にオンラインストアオープン後に検索数が右肩上がりに増加していることが確認できるのです。
当然、検索数の増加に比例して、売上も増加しているであろうことは容易に想像できます。
従来ジャニーズが、ネット上でのアーティストの画像利用に否定的だったのは、アーティストの権利を守るためだったというのは有名な話です。
ただ、現在ではオンラインショップの貢献により、ネットによる著作権侵害のリスクよりも、アーティストのメリットの方が大きいことが確認できはじめていることも間違いないと思われます。
今回、ジャニーズショップのアンバサダーにHey! Say! JUMPを起用し、YouTube広告が展開されたわけですが、今後さらにジャニーズショップを軸にジャニーズのオンライン展開が強化される可能性は高いでしょう。
海外展開の礎になるか
ここで今後期待したいのは、ジャニーズのオンライン強化やデジタルシフトにより、ジャニーズの所属アーティストの海外での露出がさらに高まることです。
BTSをはじめとしたK-POPのアーティストが積極的なSNS活用や、ファンによるSNS投稿の支援により世界中にファンを増やしたのは有名な話ですし、当然ジャニーズ側もそうしたK-POPの取り組みを参考にしているはず。
日本でも、BE:FIRSTなどが先陣を切って、K-POP流のSNS活用に取り組んでいますが、同様の取り組みをジャニーズ事務所が行えばインパクトは間違いなく大きいでしょう。
参考:BE:FIRSTは日本の音楽業界のSNS活用に革命を起こすかもしれない
これまで海外では、日本のテレビ番組なども見られないために、なかなかジャニーズファンの拡がりが生まれにくいと言われていましたが、そうした状況が変わっていく可能性が見えているわけです。
活動を休止した嵐が、最後にアメリカでの挑戦をされていたように、今後海外展開に挑戦するジャニーズのグループも増えてくるはず。
現在のジャニーズのデジタルシフトが、そうした海外へのジャニーズファンの拡がりのはじまりになったと将来振り返れることを、期待したいと思います。