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ジャにのちゃんねると24時間テレビのコラボは、テレビとYouTubeの融合のシンボルになるか

徳力基彦noteプロデューサー/ブロガー
(出典:「ジャにのちゃんねる」YouTube)

嵐の二宮和也さんが中心に運営しているYouTubeチャンネルの「ジャにのちゃんねる」が、ついにジャニーズで一番登録者数が多いチャンネルになり、話題を集めているのをご存じでしょうか。

参考:ジャにのちゃんねる、ジャニーズのYouTubeチャンネル登録者数ランキング1位に

もともと、ジャニーズ事務所でチャンネル登録者数が多いのは、嵐の公式チャンネルで、活動休止後の現在も325万人というダントツトップの状態を維持していました。

それを今回、「ジャにのちゃんねる」が現時点で327万のちゃんねる登録者数となり、ジャニーズ事務所で1位のYouTubeチャンネルとなったわけです。

この「ジャにのちゃんねる」は、今後日本におけるテレビとYouTubeの関係を考える上で、非常に重要な役割を担う可能性がありますので、ご紹介したいと思います。

二宮和也さんが中心にメンバーで運営

「ジャにのちゃんねる」が正式に公開されたのは1年前の4月25日。

それから1年ちょっとで、現在の登録者数に辿り着いたわけですが、実はチャンネル開設当初は、大々的な発表イベントを行うわけでもなく、開設前に何本かティザー動画をアップしながら開設に至ったようです。

もともとは、二宮和也さんの個人YouTubeの企画だったようですが、最終的にKAT-TUNの中丸雄一さん、Hey! Say! JUMPの山田涼介さん、Sexy Zoneの菊池風磨さんの3人を誘う形になり、あっという間に開設から21日でチャンネル登録者が200万人を達成。

日本でも有数の登録者数を誇るYouTubeチャンネルの1つとなったわけです。

ただ、このチャンネルの印象的なのは、公開されている動画の監修や文字入れは二宮さんが担当し、編集作業のほとんどは中丸さんが担当するという自分達が中心にやるという点を徹底されている点。

二宮さんが中丸さんを誘う段階でも、チャンネル登録者数を100万人目標で、まずは20万人突破したら編集スタッフをつけると恥ずかしそうに話しており、ジャニーズ事務所の力で宣伝もしないと言い切っているのが非常に印象的です。

ジャニーズ事務所のグループのチャンネルは、ミュージックビデオやライブの映像を配信しているのが通常で、ここまでアーティストの素顔をさらけ出すチャンネルはありませんでした。

そうした、「ジャにのちゃんねる」の自然な姿がYouTubeという媒体特性ともマッチした結果、1年ちょっとで嵐の公式チャンネルの登録者数を抜くという快挙を成し遂げたと言えるでしょう。

批判に対する謝罪動画も

もちろん、全てが順風満帆で進んでいるわけではなく、ちょっとした炎上騒動は何度か起きているようです。

直近でも、山田涼介さんの誕生日を祝うというライブ配信を実施した際に、山田涼介さんが来るとファンに思わせた企画を実施したために、視聴者稼ぎではないかと批判されてしまっていたようです。

参考:二宮和也 山田涼介誕生会をYouTube生配信で炎上、本人“来る来る”煽り手口に「視聴者稼ぎ」の声

ただ、こうしたトラブルが起きるのも、「ジャにのちゃんねる」が二宮さんを中心に自分達で企画をしているからとも言えます。

前述の批判をされた企画にしても、二宮さんとしてはコントとして企画していたつもりのようで、直後に背景を謝罪する動画をアップしているあたりが、ある意味YouTuberらしいと言えるかもしれません。

こうした炎上のリスクを負ってでも、自分達の等身大の姿をYouTubeを通じてさらけ出しているからこそ、ジャニーズで一番の登録者数を集めることができたという面は間違いなくあるでしょう。

実は、嵐が本格的にSNSを活用するようになったのは、わずか2年半前のことになります。

参考:嵐のSNS本格解禁は、日本のネットの地位を根本的に変えるかもしれない

それまでは二宮さんはSNSは使っていなかったはずですし、「ジャにのちゃんねる」の中の発言を聞く限り、SNS解禁後の投稿も事務所側が実施していたため、自分でネットに直接動画を投稿するのは、「ジャにのちゃんねる」のYouTubeが初めてだったそうです。

ある意味、二宮さんはこの1年で、ネットでの情報発信のリテラシーを学んでいる過程ということが言えるのかもしれません。

24時間テレビとのコラボが実現

さらに「ジャにのちゃんねる」の興味深いのは、4人のYouTubeでの活動が、あきらかにテレビやCM出演など、本業での活動にもメリットをもたらしている点です。

参考:二宮和也の「ジャにのちゃんねる」にオファー殺到 関係者が明かす”4人の評価”

その中でも最も大きいニュースは、ここに来て日本テレビの24時間テレビに4人がメインパーソナリティーになることが決まった点でしょう。

これは、従来日本のテレビ局にとってYouTubeは敵対視される存在だと言われてきたことを考えると、革命的な話と言えます。

もちろん、ここ数年一気にテレビ局によるYouTube活用も進み、番組の一部をYouTubeにアップするケースや、YouTuberをテレビ番組に起用するケースも増えてきています。

ただ、今回の「ジャにのちゃんねる」のケースは、単純にYouTubeチャンネルを運営している4人が24時間テレビのパーソナリティーに起用されただけではありません。

なんと、夏の24時間テレビの本番まで、毎週1回のペースでYouTubeの「ジャにのちゃんねる」側で24時間テレビの関連コンテンツを配信することになっているのです。

実際、「ジャにのちゃんねる」には早速、24時間テレビとのコラボ企画が数本アップされており、チャリティTシャツの企画などが着々と進んでいるようですが、これは見方によっては、日本テレビからすると自分達の1年に1度の看板番組の、大事な部分をYouTube側に切り出してしまったことになります。

おそらく10年前であれば、反対意見が噴出してすぐにボツになってしまったのではないかと思われます。

テレビとYouTubeの融合を進める日本テレビ

日本テレビが今回24時間テレビで、テレビとYouTubeの融合に挑戦することができるのは、既に日本テレビが様々なテレビとYouTubeの融合企画に成功していることが背景にあると思われます。

日本テレビが、Nizi ProjectやTHE FIRSTと、YouTubeに本編が全編無料で公開されているようなオーディション番組を、「スッキリ」などの地上波の番組で放送するなどして連携していたことが、1つのシンボルと言えるでしょう。

その関係値があるからこそ、現在ではBE:FIRST TVという冠番組が日本テレビで放映される形にもなっており、YouTube番組との連携がデメリットよりメリットの方が大きいと判断する材料の1つになっているはずです。

さらに昨年には、ドラマ「ハコヅメ」において「with YouTube戦略」とメディアから名付けられるような企画に挑戦。

なんと「ドラマ本編から5分前後を切り出してYouTubeで配信する」というアプローチを実施して、見事に成功を収めているのです。

参考:「ハコヅメ」高視聴率を支えた日テレの「with YouTube戦略」って何?

ある意味、日本テレビは、テレビとYouTubeの融合の形が見えてきたからこそ、今回あえてYouTubeチャンネルである「ジャにのちゃんねる」と24時間テレビを融合して展開するという選択をしたのかもしれません。

24時間テレビがYouTubeとの連携に挑戦する意味

今年の24時間テレビでは、長い間インターネット上に顔写真すら出していなかったジャニーズ事務所のメンバーである「ジャにのちゃんねる」の4人と、日本テレビという日本を代表するテレビ局が、テレビとYouTubeを融合させた企画に挑戦することになります。

これが意味することは、間違いなく小さくないでしょう。

実際の企画がどのようになっていくかは、まだ分かりませんが、「ジャにのちゃんねる」のコメント欄にも早速様々なアイデアや意見が寄せられており、こうしたアイデアを番組側がどのように反映していくかが注目されます。

「ジャにのちゃんねる」の生配信の中でも、中丸さんがYouTubeをはじめたことによって、「(事務所の)先輩や後輩との交流がメチャメチャ増えましたよね」と話し、それに対して二宮さんが「(先輩と)後輩の絡み方がちょっとなんかとか言うのも、もう時代的にも違う、新しい時代になってきたのかな」と話しているのが非常に印象的でした。

従来の縦割り型になりがちだったインターネット以前の時代に対して、インターネットやSNSの時代は文字通り縦横世代関係なく、様々なネットワークが人と人をつなげるものとして機能する時代だと言えます。

「ジャにのちゃんねる」は、ジャニーズのアーティストとファンの間の壁も溶かし、ジャニーズ事務所の中の先輩後輩の壁も溶かし、テレビとネットの壁も溶かしている象徴的な存在と言えるわけです。

24時間テレビにおいて、「ジャにのちゃんねる」の4人と日本テレビが、テレビとYouTubeの境界線や、出演者と視聴者の境界線を溶かし、新しい「テレビ」の可能性を見せてくれることを楽しみにしたいと思います。

noteプロデューサー/ブロガー

新卒で入社したNTTを若気の至りで飛び出して、仕事が上手くいかずに路頭に迷いかけたところ、ブログを書きはじめたおかげで人生が救われる。現在は書籍「普通の人のためのSNSの教科書」を出版するなど、noteプロデューサーとして、ビジネスパーソンや企業におけるnoteやSNSの活用についてのサポートを行っている。

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