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ラーメンのスープを飲み干してはいけない? ラーメンは身体に悪い食べ物なのか?

山路力也フードジャーナリスト
美味しいラーメンはスープまで飲み干したい。

ラーメンの食べ過ぎは身体に良くない?

「ラーメンの食べ過ぎは身体に良くない」と言われたことはないか。
「ラーメンの食べ過ぎは身体に良くない」と言われたことはないか。

 よく「ラーメンの食べ過ぎは身体に良くない」と言われることがある。飲んだ締めにラーメンを食べる時、「いけないと分かっているんだけれど」などと言いながら食べている。どうやら一般的にラーメンという食べ物は「身体に悪い食べ物」だと思われているらしい。

 油分が多くカロリーも高く、野菜が少なく栄養バランスが悪いなど、人はラーメンをそんなイメージで悪者扱いするわけだが、冷静に考えてみればラーメンよりも遥かに油分が多くカロリーも高く野菜も少ない食べ物など、世の中にはいくらでもある。

 例えば「とんかつ定食」などカロリーはラーメンの倍はあるし、野菜など水でさらして栄養分の抜けた千切りキャベツ程度。「カレーライス」や「牛丼」など、気軽に食べられるご飯ものも総じてカロリーは高く、野菜なども少なく栄養バランスが良いとは言い難い。そんな中でラーメンばかりが目の敵にされるのは、ラーメンが不憫で仕方が無い。

ラーメンという食べ物の「問題点」とは

飲み干したい気持ちは痛いほどによく分かるが。
飲み干したい気持ちは痛いほどによく分かるが。

 確かにラーメンよりもカロリーが高かったり、栄養バランスの悪い食べ物は他にもある。しかし、残念ながらそのことによって「ラーメンが身体に悪い食べ物ではない」ということにはならない。

 言うまでもなく、ラーメンに限らずどんなものであっても食べ過ぎは良くないという前提はあるとして、他の食べ物と比較した際にラーメンについてはどうしても看過出来ない部分がある。それはラーメンにおける「塩分量」である。

 「塩分摂取過多」は高血圧をはじめ、さまざまな生活習慣病を誘発する要因になるため、塩分摂取量はしっかりとコントロールしなければならない。ラーメンに含まれる塩分が他の食べ物よりも高いことは間違いなく、ラーメンを食べる上では塩分に細心の注意を払う必要がある。

ラーメン一杯の塩分含有量は?

一般的にラーメンの塩分はおよそ7g程度と言われている。
一般的にラーメンの塩分はおよそ7g程度と言われている。

 厚生労働省における「日本人の食事摂取基準」(2020年版)によれば、食塩摂取量の「一日あたり」の目標量は成人男性が7.5g未満、女性が6.5g未満。高血圧で治療している人や人工透析患者の目安は一日6g未満、腎臓病患者の目安は一日3~6g未満となっている。ちなみに『WHO(世界保健機関)』の定めた食事摂取基準だと5g未満だ。

 それではラーメン一杯の塩分含有量はどのくらいなのだろうか。当然ラーメンによってその塩分含有量は異なるが、一般的にラーメンの塩分はおよそ7g程度と言われている。つまり、ラーメン一杯で一日で摂って良い塩分の大半をクリアしてしまうのだ。ラーメンはスープなどを飲み干すケースも多いので、これはかなり高い数字だと考えて良いだろう。

 同じ様な麺料理にうどん、蕎麦があるが、かけうどんの場合で塩分含有量はおよそ5gとラーメンにかなり近い。しかし実際にかけうどんや温かい蕎麦の汁を残らず飲み干す方はラーメンと比べると少ないのではないだろうか。また、ラーメン同様に塩分濃度の高い汁物だと味噌汁があるが、そもそも味噌汁はお椀に一杯程度しか飲まないわけで、摂取する塩分は1g程度のものだ。先ほど例に挙げた「とんかつ定食」ですら塩分含有量4gほど。ラーメン一杯をスープまで飲み干した時の塩分摂取量がいかに高いかお分かりかと思う。

日々ラーメンを食べ歩く人は要注意

毎日ラーメンを食べ歩く人は気をつけよう。
毎日ラーメンを食べ歩く人は気をつけよう。

 もちろん世の中の大半の方のように、たまにラーメンを食べる程度であればスープを飲み干しても問題はないと思う。しかし、毎日ラーメンを食べるようなラーメン好きの方の場合は、塩分摂取量に関してはかなり深刻な問題になる。人によっては一日に何杯も食べる方もいるだろう。一日三杯ラーメンを食べたとして21g、それを毎日続けていたとしたらどうなるか。大げさではなくラーメンが身体を壊す原因になるのは言うまでもない。

 日々ラーメンを食べ歩いている方は、自分の身体のためにもラーメンのスープを残そう。ラーメンの塩分のほとんどはスープに含まれている。スープを残すだけで半分近くの塩分摂取を抑えることが出来るのだ。ラーメン好きからすれば、店主さんが一生懸命作ったスープを残してしまうのは辛いことだし、美味しいスープを飲み干せないのも寂しいことだ。しかし、それで自分の身体を壊してしまい、ラーメンが食べられなくなってしまうのであれば身も蓋もない。

ラーメン店は塩分含有量を表示すべき

ラーメン店は塩分含有量を表示すべきだ。
ラーメン店は塩分含有量を表示すべきだ。

 またラーメン店の方には、ぜひメニューに塩分含有量の表示をお願いしたい。化学調味料不使用の旨やアレルギー表示、あるいはカロリー表示など、最近の健康志向も手伝ってラーメン店のメニューにも様々な情報が掲載されているが、塩分量について記載されていることは少ない。

 しかし高血圧の方や腎臓疾患をお持ちの方など、日々の食事における塩分量を数字で把握したい方も多い。ファミレスやファストフードをはじめ他の外食では塩分含有量の表示がされていることがほとんどだが、ラーメン店で塩分含有量を表示しているのは『日高屋』など一部の企業を除くと皆無に等しい。これはラーメン業界全体における健康意識への低さの表れと言っても良いだろう。ぜひ塩分コントロールされている方たちのためにも正確な情報の提供をお願いしたいところだ。

 大好きなものだからこそ、ずっと食べていきたいものだからこそ、ラーメンに含まれる塩分の多さを自覚して、日々の食生活をうまくセルフコントロールすることで、ラーメンと末長くおつきあい頂きたいと思う。自戒の意味も込めて。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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