上司からの「ダメ出し」を嫌がる部下に伝えたい話 なぜ上司は「ダメ出し」ばかりするのか?
「あとでダメ出しするぐらいなら、最初から答えを教えてほしい」
そのような意見を持つ若者が増えている。
現在、多くの職場で上司からのフィードバックが「ダメ出し」ばかり、という問題が起こっている。なぜ、こんなことが起こるのか? 本来は、上司からのフィードバックは建設的であり、部下の成長を促すものであるべきなのに。
そこで今回は、なぜ上司からダメ出しばかりされるのか? そして、この問題を解消するには、どのようなポイントに気を付けたらいいのか解説していこう。
最後には、フィードバックに関するワンポイントアドバイスも紹介する。部下育成に悩んでいる多くの経営者、マネジャーはぜひ最後まで読んでもらいたい。
■ なぜ上司はダメ出しばかりするのか?
上司から「ダメ出し」ばかりされることに苛立ちを覚える部下は少なくない。冒頭書いた通り、
「あとでダメ出しするぐらいなら、最初から答えを教えてほしい」
と言いたくなるのも無理はない。私も昔はそうだった。
しかしコンサルタントになった今なら分かる。上司は「ダメ出し」をしているのではなく、批判的思考を使ってフィードバックしているだけなのだ。
だから「ダメ出し」っぽく聞こえてしまうのである。もしこのような批判的フィードバックを受けたくないのであれば、自分自身が論理的思考を使って、もっと効果的な仮説を立てたらよかったのだ。
つまり論理的思考(ロジカルシンキング)と批判的思考(クリティカルシンキング)の違いを理解していないことが原因だった。
■ 論理的思考と批判的思考の違いとは?
具体的な例を使って解説する。
ビルを建てるとき、設計士はビルの目的に沿ってデザインする。このとき設計士が使う思考が「論理的思考」である。いわゆるロジカルシンキングだ。論理的思考は、物事を体系的に捉え、筋道を立てて考える力である。
いっぽう、設計されたビルの構造をチェックし、本当にこれで大丈夫かと疑うことも必要である。このとき構造エンジニアが使う思考が「批判的思考」である。いわゆるクリティカルシンキングだ。批判的思考は、既存の仮説や前提に対して疑問を持ち、それを検証するスキルである。
仮説を立てるときに使うのが論理的思考であり、仮説を検証するときに使うのが批判的思考と覚えよう。自分の立てた仮説が良くない場合、批判的思考でフィードバックされるのは当然だ。だから「ダメ出し」されるのである。
<参考記事>
■【大作】コンサルタント最大の武器「3種類のロジックツリー」を使い倒そう!
■ 日常業務に役立つ論理的思考と批判的思考の活用法
仮説を立てるのは自分自身である。だからこそ、日ごろから論理的思考を鍛えておくことを忘れないようにしよう。そうでないと、
「あとでダメ出しするぐらいなら、最初から答えを教えてほしい」
というように、自分で考えず、上司に答えを求めるようになってしまう。これだといつまで経っても「考える力」が身につかない。
日常業務においても、この論理的思考と批判的思考のバランスを取ることが求められる。たとえば、プロジェクトを進める際に、まず論理的思考を用いてプラニングし、その計画に対して批判的思考を用いて見直しを行う。このプロセスを繰り返すことで、計画の精度が上がり、結果として「ダメ出し」されることも少なくなるだろう。
また、上司としても部下に対して批判的思考だけを求めるのではなく、論理的思考を促すフィードバックを心掛けることも重要だ。
具体的には、問題点を指摘するだけでなく、どのように考えればよかったのかを一緒に考える時間を設けることだ。これにより、部下はみずから考える力を養い、徐々にダメ出しされることが減っていく。
最後に、フィードバックに関するワンポイントアドバイスだ。フィードバックを受ける際には、自分がどのような思考で取り組んでいたのかを振り返ることが大切。論理的思考を使う場合は、
・Whatツリー
・Whyツリー
・Howツリー
これら3つの「ロジックツリー」を正しく使えているか、自分自身で検証していこう。そうでないと、「ダメ出し」をされたあと、どこで論理性が崩れていたのか、自分で辿ることができなくなる。
上司からのフィードバックを前向きに受け止め、自らの成長につなげてほしい。フィードバックは成長のチャンスであり、それをどう生かすかは自分次第だからだ。
<参考記事>