安倍総理とトランプ大統領の賭けは危険度を高めている
フーテン老人世直し録(490)
睦月某日
前回のブログで、「安倍総理とトランプ大統領は賭けに出た。それは危険な賭けかもしれない」と書いたが、その後の展開を見ると両者とも「賭け」は裏目に出て危険度は高まっているように思う。
安倍総理の「賭け」は「桜を見る会」の疑惑に対し、官僚が作成した「決して非を認めない答弁」を棒読みすることで国会を乗り切ろうとしたことである。代表質問の段階では質問と答弁が一方通行なのでそれで押し通すことが出来た。
しかし今週から始まった予算委員会では「決して非を認めない官僚答弁」が「裏目」に出て、安倍総理の総理としての資質や能力に「疑問符」がつけられている。さらに「桜を見る会」の参加者膨張は「森友・加計疑惑」とつながっていることも分かり、安倍政権は後世「森友・加計・桜」政権と記録されるかもしれない。
一方、フーテンが「日米似た者同士」と見る米国のトランプ大統領も再選を勝ち取るために様々な「賭け」に出ているが、それらが再選を有利にするかと言えばフーテンは相当に危険が伴うと考える。
前回のブログでは、トランプが中絶反対派の集会に現職大統領として初めて参加し演説したことで、女性有権者を敵に回したことを指摘したが、それ以外にもイスラエル寄りの中東和平案を発表したことで国際社会から指弾される可能性がある。
そして何より注目されているのは、上院で行われている弾劾裁判で、ボルトン前大統領補佐官が証人として議会に招致されるかどうかだ。共和党は弾劾裁判を2月4日に予定される一般教書演説の前に終わらせ、無罪となったトランプに演説させたいが、民主党はトランプによって解任されたボルトン前補佐官を証人に呼び、裁判を遅らせ、大統領選挙に絡めようとしている。
共和党から4人の上院議員が賛成すれば、ボルトンは証人に呼ばれる。現在それを巡っての駆け引きが激しい。ボルトンは安全保障政策を巡ってことごとくトランプと反目し解任された。トランプに不利な証言を行う可能性がある。トランプは絶対にそれを阻止したい。
フーテンは新年早々のイラン革命防衛隊司令官暗殺をボルトン懐柔のためではないかとブログ「トランプ大統領再選戦略としてのイラン司令官暗殺」に書いた。それはこの暗殺をボルトンが絶賛したからだ。しかし一方でボルトンは暴露本を出版しようとし、トランプはそれを差し止めようとしている。後に引けないトランプは次々「賭け」に出ざるを得ない。
それに比べれば安倍総理の「賭け」は、「官僚答弁の棒読み」をするだけの単純なことだが、まともに答えなければ乗り切れると甘く考えたことが、次から次へと矛盾を生み、「賭け」が自分の首を絞めているのである。
安倍総理の官僚答弁のポイントは、総理主催の「桜を見る会」は「税金を使った公式行事であるが、基準があいまいだったため、人数が膨張して様々な問題が起きた」と、問題の原因を基準のあいまいさに求める。そして「これから基準を厳格にする」と言って非を認めない。これは官僚が責任逃れをする時の典型的手法である。
しかし人数が増えたのは第二次安倍政権以降という厳然たる事実がある。基準が曖昧でも歴代総理には節度があった。安倍総理に歴代総理の節度はなく、人数が膨張したのは自分の選挙区の後援会関係者を募集した選挙用のせこい考えがあったからである。
予算委員会で安倍総理の隣に座る麻生元総理は「自分の後援会を呼んだことはない」と明言した。小泉元総理も「自分は考えもしなかった」と発言しているそうだ。その事実を突きつけられても「賭け」に出た安倍総理は、壊れたレコードのように官僚答弁を棒読みするしかない。
次に地元の安倍事務所が後援会関係者に参加を募った事実は証拠が山ほどあるのに、名簿のとりまとめは内閣府が行ったとして安倍事務所の関与と責任を認めない。個人情報だからと言って調査もしない。そして内閣府は「名簿は廃棄した」と言って終わりにする。
「個人情報だから」と言って黒塗りにするのは官僚の常套手段だが、安倍総理は馬鹿にされようが何が何でもそれを言いつのるしかない。すると疑問は内閣府がいつからなぜ廃棄するようになったかに向かう。そこで「森友疑惑」に繋がるのである。
財務省の公文書改ざんがあり、その反省から公文書保存の基準を作り変える時に、「桜を見る会」の名簿を保存1年未満にし、終わればすぐ廃棄できるようにした。「森友疑惑」で冷や汗をかいた安倍総理は、自分が膨張させてきた「桜を見る会」の名簿が明るみに出ることを恐れたのだろう。
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