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自公連立政権合意文書に「1.5度目標」が明記!なぜ「1.5度目標」が重要なのか?

室橋祐貴日本若者協議会代表理事
(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

自民党、公明党ともに代表が交代し、9月30日、新たな自公連立政権合意文書が結ばれた。

その中には、筆者が代表理事を務める日本若者協議会が要望していた「1.5度目標」が明記されることとなった。

自民党・公明党 連立政権合意文書
自民党・公明党 連立政権合意文書

自民党・公明党 連立政権合意文書
自民党・公明党 連立政権合意文書

自民党・公明党 連立政権合意文書
自民党・公明党 連立政権合意文書

<脱炭素社会>

0 二0五0年力ーボンニュートラル、二0三0年温室効果ガス削減目標の逹成に向け、世界全体での一・五度目標も踏まえつつ、再生可能エネルギーの最大限の導入拡大や、安全性が確認され地元の理解が得られた原子力発電所の再稼働、循環経済(サーキュラーエコノミー)への移行を促進し、持続可能で弦靱な脱炭素社会の構築を進める。

引用元:自民党・公明党 連立政権合意文書(太字は筆者)

日本若者協議会
日本若者協議会

気候変動・エネルギー政策に対する提言

1. 自公連立の政権合意文書及び次期衆議院議員選挙の公約にて、1.5度目標を掲げることを求める。

2. 気候変動対策の目標として、2050年CNではなく、1.5度目標を掲げるように地球温暖化対策推進法を改正することを求める。

3. 各国の排出能力を踏まえた日本の残余カーボンバジェットから逆算し、日本の2035年度NDCを2013年度比78%とすることを求める。

4. 各省令において、「学識経験のある者」だけでなく、若者を含めた「当事者」が審議会に委員として参加すべきことを記述することを求める。

5. 日本政府による気候市民会議を開催することを求める。

引用元:公明党に「日本版気候若者会議2024提言」&「気候変動・エネルギー政策に対する提言」を手交しました(日本若者協議会)

なぜ「カーボンニュートラル」だけでなく「1.5度目標」が重要なのか

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言し、それに向けた取り組みを社会全体で加速的に進めている。

前回2021年の自公連立政権合意文書にも「2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス削減目標の確実な達成」が明記されており、政府の様々な文書においても、「2050年カーボンニュートラル」(以下、CN)の達成が目標として書かれている。

カーボンニュートラル=二酸化炭素など温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、その排出量を「実質ゼロ」に抑える

環境省や経済産業省の各審議会では、2030年NDC目標(2013年度比で、温室効果ガス46%削減)や2050年CNの達成に向けて順調に進んでいる(オントラック)という説明がされている。

出典:気候変動対策の現状と今後の課題について(環境省・経済産業省 2024年6月)
出典:気候変動対策の現状と今後の課題について(環境省・経済産業省 2024年6月)

しかし、2050年カーボンニュートラルは一つの手段であって、必ずしも最終ゴールではない。

本来目指すべき最大のゴールは、2015年にパリ協定で掲げられた、「産業革命前からの世界平均気温上昇を2度より十分低く、できれば1.5度に抑えるという目標」である。

すでに連日続く猛暑日や激甚化・頻発化する災害の影響を受け始めているが、2度以上になっていくと、ティッピング・ポイントを超えてしまい、不可逆的な大規模な変化が生じてしまうとされている。

ティッピング・ポイント=後戻りできない転換点で、氷河の崩壊や融解、森林火災や永久凍土の融解などによる二酸化炭素の放出、海洋の酸性化による海洋生態系の崩壊など、様々な相互作用により気候変動が急加速するとされている。

出典:Climate Integrate
出典:Climate Integrate

こうした事態を回避し、1.5度以内に抑えるためには、CO2をはじめ、温室効果ガスの排出を早急に減らしていかなければならない。

この時、重要な指標になるのが「カーボンバジェット」である。

「カーボンバジェット」とは、目標までに排出して良いCO2の総量のことをいい、過去の排出量+これからの排出量で計算される。

つまり、1.5度に抑えるためには早急に排出量を減らす必要があり、早く減らせば減らすほど、効果が高い。

そのため、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「1.5度特別報告書」やCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)では、2030年までの10年間が決定的に重要だと指摘している。

一方、2050年カーボンニュートラルの達成はもちろん重要であるものの、政府の資料が示すように、直線的に達成するだけでは十分ではない。

あくまで目標は1.5度に抑えることであり、そのためには、早急に排出量を減らし、トータルの排出量を減らしていくのが肝要になる。

1.5度目標に見合った目標設定を

日本若者協議会では、ドイツのシンクタンク「Climate Action Tracker」のデータを参考に、1.5度目標を達成するための削減目標(NDC)として、2035年に81%減(2013年度比)を掲げるべきだと提言している。

出典:日本若者協議会「気候変動・エネルギー政策に対する提言」
出典:日本若者協議会「気候変動・エネルギー政策に対する提言」

それに比べると、日本政府の目標は低いと言わざるを得ず、カーボンニュートラルへの直線的なオントラックでは不十分である。

こうした違いを意識し、施策のスピード・規模感をアップさせるために、今回、自公連立政権合意文書に「1.5度目標」が掲げられた意味は大きい。

現在、2035年NDCや、2040年時点での電源構成を示す「第7次エネルギー基本計画」に向けた議論が行われており、そこできちんと1.5度目標に見合ったNDCや、電源構成が示されるかが注目される。

日本若者協議会として具体的な電源構成も提言しているが、その内容は9月26日に開催された経済産業省・資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第63回会合)にヒアリングで出席した際に発表しており、別の記事で詳しく説明したい。

日本若者協議会代表理事

1988年、神奈川県生まれ。若者の声を政治に反映させる「日本若者協議会」代表理事。慶應義塾大学経済学部卒。同大政策・メディア研究科中退。大学在学中からITスタートアップ立ち上げ、BUSINESS INSIDER JAPANで記者、大学院で研究等に従事。専門・関心領域は政策決定過程、民主主義、デジタルガバメント、社会保障、労働政策、若者の政治参画など。文部科学省「高等教育の修学支援新制度在り方検討会議」委員。著書に『子ども若者抑圧社会・日本 社会を変える民主主義とは何か』(光文社新書)など。 yukimurohashi0@gmail.com

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