自公連立政権合意文書に「1.5度目標」が明記!なぜ「1.5度目標」が重要なのか?
自民党、公明党ともに代表が交代し、9月30日、新たな自公連立政権合意文書が結ばれた。
その中には、筆者が代表理事を務める日本若者協議会が要望していた「1.5度目標」が明記されることとなった。
なぜ「カーボンニュートラル」だけでなく「1.5度目標」が重要なのか
2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルを目指すことを宣言し、それに向けた取り組みを社会全体で加速的に進めている。
前回2021年の自公連立政権合意文書にも「2050年カーボンニュートラル、2030年度温室効果ガス削減目標の確実な達成」が明記されており、政府の様々な文書においても、「2050年カーボンニュートラル」(以下、CN)の達成が目標として書かれている。
カーボンニュートラル=二酸化炭素など温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、その排出量を「実質ゼロ」に抑える
環境省や経済産業省の各審議会では、2030年NDC目標(2013年度比で、温室効果ガス46%削減)や2050年CNの達成に向けて順調に進んでいる(オントラック)という説明がされている。
しかし、2050年カーボンニュートラルは一つの手段であって、必ずしも最終ゴールではない。
本来目指すべき最大のゴールは、2015年にパリ協定で掲げられた、「産業革命前からの世界平均気温上昇を2度より十分低く、できれば1.5度に抑えるという目標」である。
すでに連日続く猛暑日や激甚化・頻発化する災害の影響を受け始めているが、2度以上になっていくと、ティッピング・ポイントを超えてしまい、不可逆的な大規模な変化が生じてしまうとされている。
ティッピング・ポイント=後戻りできない転換点で、氷河の崩壊や融解、森林火災や永久凍土の融解などによる二酸化炭素の放出、海洋の酸性化による海洋生態系の崩壊など、様々な相互作用により気候変動が急加速するとされている。
こうした事態を回避し、1.5度以内に抑えるためには、CO2をはじめ、温室効果ガスの排出を早急に減らしていかなければならない。
この時、重要な指標になるのが「カーボンバジェット」である。
「カーボンバジェット」とは、目標までに排出して良いCO2の総量のことをいい、過去の排出量+これからの排出量で計算される。
つまり、1.5度に抑えるためには早急に排出量を減らす必要があり、早く減らせば減らすほど、効果が高い。
そのため、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「1.5度特別報告書」やCOP(国連気候変動枠組条約締約国会議)では、2030年までの10年間が決定的に重要だと指摘している。
一方、2050年カーボンニュートラルの達成はもちろん重要であるものの、政府の資料が示すように、直線的に達成するだけでは十分ではない。
あくまで目標は1.5度に抑えることであり、そのためには、早急に排出量を減らし、トータルの排出量を減らしていくのが肝要になる。
1.5度目標に見合った目標設定を
日本若者協議会では、ドイツのシンクタンク「Climate Action Tracker」のデータを参考に、1.5度目標を達成するための削減目標(NDC)として、2035年に81%減(2013年度比)を掲げるべきだと提言している。
それに比べると、日本政府の目標は低いと言わざるを得ず、カーボンニュートラルへの直線的なオントラックでは不十分である。
こうした違いを意識し、施策のスピード・規模感をアップさせるために、今回、自公連立政権合意文書に「1.5度目標」が掲げられた意味は大きい。
現在、2035年NDCや、2040年時点での電源構成を示す「第7次エネルギー基本計画」に向けた議論が行われており、そこできちんと1.5度目標に見合ったNDCや、電源構成が示されるかが注目される。
日本若者協議会として具体的な電源構成も提言しているが、その内容は9月26日に開催された経済産業省・資源エネルギー庁の総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会(第63回会合)にヒアリングで出席した際に発表しており、別の記事で詳しく説明したい。