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中国の卓球女子・陳夢にSNSで誹謗中傷した女性を逮捕 北京市公安局「社会に悪影響を及ぼす」と警鐘

中島恵ジャーナリスト
卓球女子シングルスで金メダルを獲得した陳夢選手(右)と孫穎莎選手(写真:ロイター/アフロ)

パリ五輪で問題視されている選手たちへの誹謗中傷。日本人も柔道女子の阿部詩選手やバレーボール男子・日本代表選手たちなどが、試合に負けた際にSNS上で言葉の暴力を受けている。

日本オリンピック委員会(JOC)は、こうした誹謗中傷について「心ない誹謗中傷、批判等に心を痛めるとともに、不安や恐怖を感じることもあります。(中略)侮辱、脅迫などの行き過ぎた内容に対しては、警察への通報や法的措置も検討いたします」と警告した。だが、なかなか取り締まりができないのが実情だ。

女性の逮捕にネット民の反応は……

世界各国・地域からパリ五輪にやってきている海外の選手たちも同様に被害を受けているが、8月6日、中国で、SNS上の誹謗中傷の罪で逮捕者が出たことが明らかになった。

中国メディアの『捜狐』は、「北京市公安局(警察)が『パリ五輪卓球女子シングルスの決勝後に、一部のネット民がウェイボーに選手やコーチに対する中傷的なメッセージを投稿している』と通報を受けた。当局は捜査を開始し、容疑者(29歳、女性)を逮捕した」と報じた。

また、「陳夢に対する一部のネット民の投稿は明らかに度を越しており看過できない」とも報じている。

具体的にどのような内容の投稿が「度を越していた」かは明確ではないが、逮捕に至ったのは「社会に悪影響を及ぼす」としている。中国のSNS上では、この報道を受けて、多くの人々が、ここ数日の投稿のスクリーンショットを使いながら「陳夢、地獄へ行け」「一生、呪ってやる」「陳夢は全国民の夢(孫穎莎の初の金メダル獲得)を壊した」などの実例がそれに当たるのではないか、と示している。

また、SNSでは「これはよいこと。もっとしっかり調査して、誹謗中傷した人を一網打尽に逮捕してほしい」、「孫穎莎のファンがまた、やらかした。3年前の東京五輪のときもひどかった。これ(逮捕)が抑止力につながることを願う」「陳夢を支持する」「もっと健全なネット空間を」などのコメントもあった。

情報統制が厳しい中国

陳選手には、SNSでの誹謗中傷以外に、女子シングルス決勝の際、観客席の前方に座っていた女性が、陳選手に向かって中指を立てており、このときの動画がSNSで出回り、物議を醸していた。

中国人選手としては、ほかに体操男子団体の決勝戦に出場した蘇煒徳選手が鉄棒で2回落下した際、ウェイボーで「蘇選手を死ぬほど憎む」「なぜ、失敗ばかりする蘇選手なんかが出場したんだ」などと誹謗中傷を受けていた。

中国のウェイボーやウィーチャット(微信)などのSNSは2010年代から急速に発達し始め、中国国内の利用者だけでも10億人を超える。誰もが自由に発言できる機会を得て、SNSの利用頻度は日本よりもはるかに多いが、同時に政府の厳しい情報統制も行われている。

政府・政権に対する直接的な批判などはもちろんできない上、コロナ禍で上海市などがロックダウンされた際など、生活上の不満を書き込むと、即座に削除されたり、投稿できなくなったりしたこともあった。

今回の逮捕事件を受け、元卓球選手で、2016年のリオデジャネイロ五輪・男子団体の金メダリスト、許昕氏はSNSで「中国のファンはまだ成熟していない。ファンの不当な行為は選手に悪い影響を与える。健全なSNS環境を作るべきだ」と語っている。

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ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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