北朝鮮は米国に都合よくミサイルを打ち上げる
フーテン老人世直し録(282)
如月某日
昔から北朝鮮のミサイル発射は米国の利益になるように打ち上げられているとの印象がフーテンにはある。今回も日米首脳会談の最中に北朝鮮は新型ミサイルを打ち上げ、日本が米国から新たなミサイル防衛兵器を買うきっかけになる可能性がある。
今回のミサイルについて北朝鮮は、2015年に潜水艦から発射されたSLBMの改良型だと発表した。地上の移動式発射台から固形燃料を使って発射するため潜水艦と同様に事前に察知することが難しい。
また今回のミサイルは高度550キロに達し、大気圏に再突入する際の誘導や迎撃回避を検証した。性能は格段に上昇したという。このように大気圏に再突入するミサイルを打ち落とすために米軍が開発したのが高高度迎撃ミサイル(THAAD)である。米軍は韓国への配備を進めているが、それに中国とロシアが強い反発を見せ、また韓国内にも反対の声がある。
なぜかと言えば北朝鮮が隣の韓国を攻撃するのに高高度に達するミサイルの発射は必要なく、短距離のスカッドミサイルや、ミサイルではなく火砲でもソウルを火の海にすることができる。従ってTHAADは韓国の防衛というより、中国やロシアのミサイルが日本にある米軍基地を攻撃するのを防衛する目的ではないかとみられているのである。
もしそうであるならばTHAADは日本に配備されるのが妥当である。しかし現在のところは韓国に配備される話になっている。専門家によれば北朝鮮が中距離ミサイルのノドンやムスダンを高高度に打ち上げるのではなく、ディプレストと呼ばれる野球のライナーのような弾道で沖縄やグアムの米軍基地をめがけて発射すると、イージス艦やPAC-3では撃ち落とせない。
撃ち落とせるのはTHAADだという。そうなるとTHAADは中国やロシアのミサイルだけでなく、北朝鮮から低い弾道で沖縄やグアムをめがけて発射されるミサイルを撃ち落とす兵器ということになる。やはり韓国防衛のためではないようだ。
トランプ政権のマティス国防長官は就任後すぐに韓国と日本を訪れ、韓国ではTHAAD配備を再確認し、日本では「尖閣は安保条約の適用範囲内」とリップサービスを行った。その間に北朝鮮はミサイル発射を準備し、日米首脳会談に合わせるタイミングでミサイルを発射したことになる。
安倍総理の「米国に日本を守ると言わせれば、それが抑止力となって北朝鮮も中国もおとなしくなる」との主張を北朝鮮は覆した。米国が日本を守ると言ってもそんなことではびくつかないことを北朝鮮は現実に示し、安倍総理の顔に泥を塗った。
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