有珠山噴火から24年「次の噴火はいつ起きてもおかしくない」 心配される北海道の鉄道貨物事情
20年から30年周期で噴火を繰り返している北海道の有珠山。有珠山は伊達市や洞爺湖町などにまたがるエリアにあり、その近くにはJR室蘭本線も通っている。前回の2000年の噴火から24年が経過し「次の噴火はいつ起きてもおかしくない」時期に入っているという。これは、「有珠山の主治医」と呼ばれる北海道大学名誉教授の岡田弘氏が2024年8月27日に放送されたHBC北海道放送のニュースでインタビューに答えたものだ。前回の2000年3月31日噴火では岡田氏の的確な予測により迅速に住民の避難活動が行われたため1人の犠牲者を出すこともなかった。
この時の噴火では室蘭本線が不通となり、北海道と本州方面を結ぶ鉄道の大動脈ルートが寸断。札幌―函館間を結ぶ特急北斗号、札幌―上野間の寝台特急北斗星号とカシオペア号、札幌―大阪間の寝台特急トワイライトエクスプレス号などのほか、一部の貨物列車が函館本線の山線と呼ばれる小樽―倶知安―長万部経由で迂回運転された。
心配される貨物列車の代替ルートの確保
函館本線の山線は北海道新幹線の札幌延伸に伴いJR北海道から経営分離されることが確定しているが、北海道庁が主導する密室の並行在来線対策協議会において2022年3月、強引に廃止の方針が決定されてしまった。このとき、山線は2000年の有珠山噴火時に貨物列車の迂回ルートとしての活用実績があることから残すことができないかという声もあった。
しかし、JR北海道からは、当時と異なり貨物列車をけん引するディーゼル機関車がDD51形からDF200形に大型化しており「DF200形が走行できない箇所が複数ある」との見解を示され、トンネルなど鉄道施設の建築限界に触れることから機関車の入線自体が物理的に不可能であるかのような印象操作がなされたことから、そもそもDF200形ディーゼル機関車は山線に入線すること自体ができないという認識を持っている道民は多い。
DF200形ディーゼル機関車が登場したのは1992年のことで、有珠山が噴火した2000年にはすでに営業運転を行っていた。このとき、JR貨物からJR北海道に対して長万部―小樽間へのDF200形の入線可否についての調査依頼があり、「曲線部分に犬釘を打ちまして補強すれば入線可能」と回答していたことが、JR北海道が2001年に出版した『有珠山噴火 鉄道輸送の挑戦』という公式記録に残されていることは2023年7月28日付記事(機関車入線できず「貨物代替ルートとして使えない」は嘘だった!? 並行在来線の長万部―小樽間)で詳しく触れている。
ドライバーの残業規制が強化される2024年度を迎え、各業界での人手不足が叫ばれている中で有珠山が噴火した場合、JRと北海道庁はそのメンツを保つために山線の貨物列車の迂回運転を意地でもやらないのか、はたまた現場の知恵を結集させて貨物列車の迂回運転をやり通し北海道の物流危機の回避に奔走するのか、気がかりなところである。
(了)