機関車入線できず「貨物代替ルートとして使えない」は嘘だった!? 並行在来線の長万部―小樽間
2023年になり余市町、小樽市、蘭越町で民間団体が「北海道庁による密室協議の場で一方的に廃止の方針が結論付けられたのはおかしい」として声を上げ始めている並行在来線問題。
この7月に小樽市で開かれたセミナーには、小樽市長のほか、2名の国会議員が出席したことは、2023年7月12日付記事(小樽市で開催の並行在来線廃止「問題提起」セミナー 小樽市長や地元代議士らおよそ40名が参加)と7月27日付記事(小樽市で開催の並行在来線廃止「問題提起」セミナー Youtuber発信で道庁への批判殺到)でも触れた通りだ。
セミナーに出席した中村裕之衆議院議員からは、「昨年7月、国土交通省はローカル鉄道の在り方に関する提言を発表しているが、道庁はなぜこの発表を待たずに廃止の結論を急いだのか」。「協議会では、数値も精査されていなければ、B/Cによる評価も行われていなかった。さらにバス会社との協議も行われていなかったことから、道庁には『不信感でいっぱいだ』と伝えている」という言葉も飛び出した。
協議会で否定された貨物列車の代替ルートの可能性
函館本線の長万部―小樽間(通称:山線)については、2000年に有珠山が噴火し室蘭本線が不通となった際に貨物列車や特急北斗、さらに当時、上野―札幌間で運行されていた寝台特急北斗星や寝台特急カシオペア、大阪―札幌間で運行されていた寝台特急トワイライトエクスプレスの迂回運転が実施された。
こうしたことから、協議会では貨物列車の迂回ルートを確保する災害対策の側面から存続することができないかという声も上がっていた。しかし、JR北海道からは、当時と異なり貨物列車をけん引するディーゼル機関車がDD51形からDF200形に大型化しており「DF200形が走行できない箇所が複数ある」との見解を示され、トンネルなど鉄道施設の建築限界に触れることから機関車の入線自体が物理的に不可能であるかのような印象操作がなされた。
このため、そもそもDF200形ディーゼル機関車は山線に入線すること自体ができないという認識を持っている道民は多い。
JR北海道はかつて「犬釘を打ち増せば入線可能」と回答
しかし、DF200形ディーゼル機関車が登場したのは1992年のことで、有珠山が噴火した2000年にはすでに営業運転を行っていた。このとき、JR貨物からJR北海道に対して長万部―小樽間へのDF200形の入線可否についての調査依頼があり、「曲線部分に犬釘を打ちまして補強すれば入線可能」と回答していたことが、JR北海道が2001年に出版した『有珠山噴火 鉄道輸送の挑戦』という公式記録に残されている。
こうしたJR北海道の公式記録から、DF200形ディーゼル機関車の山線への物理的な入線が可能なことは明らかである。2024年にトラックドライバーの労働規制を控え、鉄道貨物の活用が再び見直されようとしている中、山線の貨物ルートとしての可能性を不可能であるかのように印象付け、密室での廃線ありきの議論を進めた北海道庁の姿勢は問題ではないだろうか。
(了)