日ロの領土交渉はアベノミクスに代わる「ニンジン」の第二弾
フーテン老人世直し録(246)
長月某日
安倍総理は2日午後、ロシアのウラジオストクでプーチン大統領と会談し、11月と12月にペルーと日本で再会談を行うことを合意した。会談後に安倍総理は平和条約締結交渉の進め方について「道筋が見えてきた。手ごたえを強く感じとることができた」と記者団に語った。
その言い方や表情から高揚した感じを受け取ったが、そのことにフーテンはまたまた危うさを感じる。交渉当事者が交渉の途中で高揚したものの言い方をすることなどあってはならない。それは交渉術のイロハである。
山本七平がどこかに書いていたが、交渉事は怒ったら負け、惚れたら負けである。怒ったり惚れたりすれば理性が働かなくなる。だから交渉事に長けた相手は必ずこちらを怒らせるか、あるいは惚れさせようと仕掛けてくる。それを日本人は分かっていないという話である。
安倍・プーチン会談を見ていると、ファーストネームで呼びかけ積極的に語り掛けているのは安倍総理の方で、プーチン大統領はその言動を「注意深く」受け止め、「慎重に」判断している印象である。安倍総理の目的がどこにあるかを見極めている。
交渉の表向きの目的は北方領土問題を解決して平和条約を締結することである。しかし領土問題でロシア側の姿勢は1956年の日ソ共同宣言以来何も変わっていない。つまり平和条約を締結すれば歯舞、色丹を引き渡すというものだ。
これに対し日本では1855年の日露和親条約を根拠に択捉、国後を加えた「四島一括返還」を一貫して主張してきた。しかしロシアは「第二次大戦の結果、自国領になった」としてこれを全く認めない。歯舞、色丹の引き渡しでも主権は日本ではなくロシアが持つと考えている節がある。
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