民進党代表の都知事表敬訪問を見て考えたくもないことを考える
フーテン老人世直し録(251)
長月某日
民進党の蓮舫代表が小池東京都知事を表敬訪問した様子をニュースで見ていささかの感慨を覚えた。舛添前東京都知事の辞任が取りざたされたとき、真っ先に候補として名前が挙がったのは民進党の蓮舫氏だったからだ。もし蓮舫氏が都知事選立候補を決断していれば、日本政治は現在とは全く異なる構図になっていた可能性がある。
もちろん「たら、れば」を言っても仕方がないことは十分に承知している。しかしフーテンは安倍政権があの時は蓮舫出馬を最も恐れていたと思っている。2020年東京オリンピックの主役の座を野党に奪われれば、これまで描いてきた政権運営のシナリオがことごとく崩れてしまうからだ。都知事選挙は安倍政権にとり死活的に重要であった。
これまでの選挙結果を見れば東京で蓮舫氏に勝てる候補を探し出すのは簡単でない。しかし都知事の座を野党に奪われれば政権運営は打撃を受ける。安倍政権も与党もまずは蓮舫氏の動向を注視したと思う。安倍総理によって「氷の牢獄」に閉じ込められていた小池百合子氏も、あの時点で都知事選出馬を考えていたならば、蓮舫氏の不出馬を祈っていたことだろう。
蓮舫氏が出馬するかもしれない状況では誰も手を挙げることはできなかった。蓮舫氏が不出馬を表明したことで、小池百合子氏は自民党東京都連や森喜朗氏に対抗する形での立候補に踏み切る。蓮舫氏以外に勝てる候補のいない野党陣営では2度の立候補経験がある宇都宮健児氏も手を挙げることになった。
その後は野党陣営の候補擁立が順調に進まず、ぎりぎりになって鳥越俊太郎氏が出馬するが、そこには「どうしても都知事の座を野党が奪う」とする執念も、「都知事の座を握ればその後の政局を揺さぶることができる」という計算も感じることができなかった。
一方の与党は公明党とその意をくむ菅官房長官が増田寛也氏を擁立し、徹底した組織選挙を貫いたが、石原慎太郎都知事時代からの都政の闇を暴くと訴えた小池氏が、護憲とか反原発とか国政マターで安倍政権を批判する鳥越氏より都政における「政権交代」を感じさせ、共産党支持者まで巻き込む幅広い支持を得て圧勝した。
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