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「北朝鮮の核実験は梅雨期間中はありそうもない」韓国軍制服組トップが退任間際に指摘

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
核弾頭の開発現場を視察する北朝鮮の金正恩氏。朝鮮中央通信が2017年に配信した

韓国軍制服組トップの元仁哲(ウォン・インチョル)合同参謀本部議長は7月5日、北朝鮮が梅雨の期間に7回目の核実験を実施する可能性は低いと述べた。北朝鮮関連ニュースの有料会員制サイト「NK Pro」などが報じた。

元議長は同日の離任式直前、記者団に対し、「北朝鮮も梅雨で大雨が降っているので直ちに核実験をすることは容易ではないのだろう」と指摘し、「梅雨が終われば、さまざまな状況を見なければならない」と述べた。

さらに、「核実験は単に1つの状況のみを有するのではなく、さまざまな戦略的目標が伴う」と述べ、「(北朝鮮は核実験をする)準備はある程度備えており、状況と戦略的条件が揃えば核実験をする可能性は依然としてある」と警鐘を鳴らした。

●米韓高官「北朝鮮は核実験の準備完了」

米韓両政府の高官は5月上旬以来、北朝鮮が7回目の核実験を行う準備を完了したと警告してきた。

アメリカのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)は、過去のデータに基づき、北朝鮮がアメリカの主要な祝日を狙って、軍事的な挑発行動を実施する1つのパターンがあると指摘してきた。このため、4日のアメリカ独立記念日に北朝鮮が核実験を強行する可能性が高いとみられていた。しかし、北朝鮮は同日、核実験を実施しなかった。

北朝鮮メディアによると、梅雨前線の影響によって、北朝鮮各地では連日、大雨が続いている。各地の道路や農地が浸水し、1100棟以上の住宅が被害を受けたほか、数千人が避難したと伝えられている。

梅雨期間中の地下核実験は、大雨や高湿度が実験装置に与える悪影響や、実験設備を運搬する道路状況の悪さ、さらには放射能汚染が起こす環境問題などの面で技術的に多くの困難が伴うとみられている。

朝鮮半島では例年6月下旬から7月下旬までが梅雨の時期になっている。

●これまで梅雨と夏の期間に核実験なし

北朝鮮の過去6回の核実験を季節別に見ると、秋が3回(2006年10月、2016年9月、2017年9月)、冬が2回(2013年2月、2016年1月)、春が1回(2009年5月)に行われた。梅雨と夏の時期にはこれまで核実験は実施されていない。なお、核実験実施の時間帯はすべて午前9時から午後12時半までとなっている。

空軍参謀総長を務めていた元議長は2020年9月に合同参謀本部議長に就任した。しかし、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が4日、韓米連合軍司令部副司令官を務めていた金承謙(キム・スンギョム)氏を新たな合同参謀本部議長に起用し、元議長は5日午後に退任した。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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