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「負けヒロインが多すぎる!」にも登場 「市電」の名で親しまれる路面電車 豊橋鉄道東田本線

清水要鉄道ライター
「ヤマサちくわ号」ことモ3502 マケインのアニメではOPと本編に登場する

 愛知県東部・三河地方の中心都市である豊橋市は、今ではすっかり少なくなった路面電車が走る都市の一つだ。東海地方では唯一の路面電車である豊橋鉄道東田本線(あずまだほんせん)が市民の足として活躍している。市ではなく私鉄の豊橋鉄道による運営だが、市民からの愛称は「市電」だ。

豊橋駅前で行き違うモ782(左)とT1001
豊橋駅前で行き違うモ782(左)とT1001

 東田本線は大正14(1925)年7月14日に駅前~札木十字路間と神明~柳生橋間の支線(廃止)が開業。その後、延伸を重ね、戦争も乗り越えて発展し続ける豊橋を支え続けた。昭和4,50年代には車社会化のあおりを受けて路線の一部が廃止されているが、運動公園前支線の延伸や駅前への再乗り入れ、停留所の改良などの積極的な施策により、平成15(2003)年度以降は利用者数が増加傾向にある。近年も低床車両やIC乗車券「manaca」の導入や各種イベントの実施など、市民に愛される便利な路面電車を目指した施策が続けられており、年間約300万人に利用されている。

終点 赤岩口停留場
終点 赤岩口停留場

 東田本線は駅前~赤岩口間4.8キロの本線と、井原~運動公園前間0.6キロの支線、合わせて全長5.4キロというこじんまりとした路面電車だ。駅前から赤岩口行きと運動公園前行きが日中は7~8分間隔で交互に運転されており、どちらに乗っても終点までの所要時間は25分前後だ。緑化軌道にセンターポールの駅前大通りでビル街を抜け、レトロな豊橋公会堂を横目に東海道上を走り、多米街道へ。東田坂を登って競輪場前からは単線となり、支線が分岐する井原を過ぎて走ればあっという間に終点の赤岩口に着く。終点の赤岩口停留場は車庫もあるものの、ホームは狭くこじんまりとした雰囲気だ。

運動公園前停留場
運動公園前停留場

 終点・赤岩口の一つ手前の井原で急カーブを曲がって分岐する運動公園前までの支線は昭和57(1982)年7月31日開業。高度成長期以降、縮退が続く路面電車には珍しい延伸で、豊橋における路面電車の復権の象徴とでも言えようか。市民球場もある岩田運動公園へのアクセス路線だ。

モ3203 ビール電車
モ3203 ビール電車

 車両は廃止された名鉄岐阜市内線から転属してきたものが主力で、7両いるモ780形が一番出会う確率が高いだろう。モ800形も岐阜からやってきた車両だが、3両のうち2両は福井を経ての入線だ。都電荒川線からやってきたモ3500形、「ほっトラム」の愛称を持つ全面低床車両T1000形も活躍している。最古参のモ3200形も岐阜からの車両だが、現在はイベント用で、夏の「ビール電車」や冬の「おでん電車」などに用いられる。

 現在どの車両が運用されているのかは位置情報アプリ「のってみりん」で確認することが可能だ。

前畑停留場とモ802 マケインEDに登場した
前畑停留場とモ802 マケインEDに登場した

 現在放送中のアニメ『負けヒロインが多すぎる!』(通称:マケイン)は豊橋を舞台にした作品で、作中にも「市電」こと東田本線が度々登場する。主人公の温水(ぬくみず)和彦が通学や駅前への行き来に利用しており、駅前停留場や市役所前停留場、東八町停留場およびその周辺が描かれた。車両はOPと本編では「ヤマサちくわ号」ことモ3502が登場。第5話では台車から火花を散らして併用軌道を爆走する活躍?を見せた。第1話から第4話までのEDでは8ミリフィルムのレトロな実写映像で前畑停留場に到着するモ786(日の丸薬局広告車両)や東田坂上付近を走るモ3203が登場している。

 この夏、豊橋の「市電」・東田本線でマケインの聖地巡礼はいかがだろうか。

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鉄道ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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