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シンガポールで性的暴行の日本人男性に「むち打ち刑」確定 今後どうなる? #専門家のまとめ

前田恒彦元特捜部主任検事
(写真:イメージマート)

シンガポールで女子大生に性的暴行を加えたとして逮捕・起訴され、17年6カ月の禁錮刑と20回のむち打ち刑を言い渡された38歳の日本人男性の有罪が確定しました。ことし7月の一審判決に対し、男性が上訴しなかったためです。シンガポールで日本人にむち打ち刑が科されるのは初めてとなります。今後どうなるのか、参考となる記事をまとめました。

ココがポイント

「いつ来るんだとおびえながら過ごして、突然『むち打ちを執行します』と声が掛けられて、刑務所内で執行される」
出典:テレ朝news 2024/7/4(木)

「執行前には(中略)医師の診察も行われる。かなり傷ができるので、1カ月2カ月はうつぶせでしか寝られないような状況が続く」
出典:テレ朝news 2024/9/9(月)

「受刑者の状態が悪化して刑が継続できないと判断されれば、12カ月以下の禁錮刑に切り替えられる」
出典:産経新聞 2024/7/5(金)

「18歳のシンガポール在住のアメリカ人(中略)が器物損壊の罪で鞭打ち刑」「米大統領(中略)が介入し(中略)6回から4回に減少」
出典:弁護士ドットコムニュース 2024/7/20(土)

エキスパートの補足・見解

この事件を受け、ネット上では日本でも性犯罪者にむち打ち刑を科すべきだと考える人が多いようです。確かにわが国も過去には窃盗犯などに対するむち打ち刑を採用していた歴史があります。しかし、いまの憲法は「残虐な刑罰」を禁止しています。最高裁の判例によると「不必要な精神的、肉体的苦痛を内容とする人道上残酷と認められる刑罰」を意味するので、現在ではNGということになるでしょう。

むしろ注目されるのは、今回の男性が17年6カ月の禁錮刑にも処されているという点です。日本で同じ犯罪に及んだ場合、不同意性交罪や不同意性交致傷罪に問われるとしても、そこまで長期の刑罰に処されることはありません。

例えば米国では、有罪になった犯罪ごとに刑を決め、単純に合算するシステムである上、「ワンストライクアウト法」や児童への性虐待を対象とした「ジェシカ法」といった特別な法律を制定している州もあり、これらと組み合わせることで、少女4人に対する性的暴行に問われた男に対し、275年半の拘禁刑が言い渡された例もあります。性犯罪を厳罰化するためには、端的に法定刑を重くする法改正が不可欠でしょう。(了)

元特捜部主任検事

1996年の検事任官後、約15年間の現職中、大阪・東京地検特捜部に合計約9年間在籍。ハンナン事件や福島県知事事件、朝鮮総聯ビル詐欺事件、防衛汚職事件、陸山会事件などで主要な被疑者の取調べを担当したほか、西村眞悟弁護士法違反事件、NOVA積立金横領事件、小室哲哉詐欺事件、厚労省虚偽証明書事件などで主任検事を務める。刑事司法に関する解説や主張を独自の視点で発信中。

元特捜部主任検事の被疑者ノート

税込1,100円/月初月無料投稿頻度:月3回程度(不定期)

15年間の現職中、特捜部に所属すること9年。重要供述を引き出す「割り屋」として数々の著名事件で関係者の取調べを担当し、捜査を取りまとめる主任検事を務めた。のみならず、逆に自ら取調べを受け、訴追され、服役し、証人として証言するといった特異な経験もした。証拠改ざん事件による電撃逮捕から5年。当時連日記載していた日誌に基づき、捜査や刑事裁判、拘置所や刑務所の裏の裏を独自の視点でリアルに示す。

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