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築84年、橋上化で消える三角屋根の木造駅舎 川越線 南古谷駅(埼玉県川越市)

清水要鉄道・旅行ライター
南古谷駅

 川越市が南古谷(みなみふるや)駅の橋上化・南北自由通路整備の方針を決めたことが、5日埼玉新聞によって報じられた。

 南古谷駅は川越市東部にある駅で、改札口は南側にのみある。近年、駅周辺の宅地化が進んでおり、駅北側の利便性向上のために橋上化と周辺再開発が以前から計画されていた。駅北側には橋上化に向けて北口用地が準備されており、北田児童遊園として暫定利用されている。橋上駅舎・自由通路は令和9(2027)年度末までの供用開始を目途に建設される予定だ。

駅舎
駅舎

 南古谷駅は昭和15(1940)年7月22日開業。三角屋根が二つ連なる形状の木造駅舎は開業時のものだ。かつては日進駅・指扇駅にも同型の駅舎があったが、いずれも平成20年代の橋上化で姿を消している。

 駅名の「南古谷」は開業時の所在地・入間郡南古谷村に由来する。南古谷の村名はかつて当地に存在した荘園・古尾谷荘(古谷荘ともいう)の南部に当たることからついたもので、北には古谷村が隣接していた。表記が二通りあるのは「ふるおや(古尾谷)」が「ふるのや(古谷)」に転じ、時代を経ていく中で「の」が抜け落ちて「ふるや」と読むようになったからではなかろうか。

 鎌倉時代には古尾谷荘を拠点とする御家人・古尾谷氏が活躍したとの記録があり、駅周辺には古尾谷氏ゆかりの史跡がいくつか残っている。珍しい苗字だが、俳優の故・古尾谷雅人氏はその子孫なのだろうか。

ホーム
ホーム

 南古谷駅のホームは2面3線。駅舎側の1番線が川越・高麗川方面、2番線が大宮・池袋方面だ。3番線は当駅始発の列車および回送列車が使用する。ホーム間は跨線橋で結ばれており、ふた昔前の郊外駅といった雰囲気だ。首都圏ではここ20年ほどで駅の橋上化が一気に進み、このような駅舎が地平にある駅も珍しくなった。

3番線に停車する回送列車
3番線に停車する回送列車

 駅の大宮寄り、指扇駅との間には埼京線・川越線・八高線の車両基地である川越車両センターがあり、その関係で当駅始発の列車が設定されている。また、隣の川越駅から先の区間で運用される列車も車両センターへの出入場時に回送列車として当駅を経由していく。上写真の車両は川越線・八高線で運用されていた209系で、令和2(2020)年に引退している。

 橋上化が決定し、今後その姿を大きく変えるであろう南古谷駅。三角屋根の木造駅舎を見るなら今のうちだ。

鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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