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地滑り対策で移設検討?築101年の木造駅舎が残る、鳳来町の玄関口 飯田線 本長篠駅(愛知県新城市)

清水要鉄道・旅行ライター
本長篠駅

織田・徳川連合軍が武田軍に大勝した長篠の戦いの舞台で、徳川氏ゆかりの古刹・鳳来寺がある愛知県新城市の旧:鳳来町。その中心部にあるのが飯田線の本長篠(ほんながしの)駅だ。豊橋方面からの列車の多くが折り返す運行拠点駅で、特急「伊那路」も停車する主要な駅だが、築101年のこじんまりとした駅舎が今なお現役で使用されている。この本長篠駅の駅舎・ホームの移設が検討されていることが、6月21日に豊橋市の東海日日新聞によって報じられた。

駅舎
駅舎

記事の内容は以下の通りだ。

本長篠駅では大雨の際にホームに亀裂が入る等の被害が頻発しており、地滑り発生が想定されることから、JR東海は駅舎・ホーム等を現在地から北にずらして建て替えることを計画している。本長篠駅では現在、市が受託する窓口が営業しているものの、建て替えに際してJRは窓口業務に必要なスペースやトイレを設置しない方針で、もし窓口の営業を継続するのであれば、市が費用の一部を負担する必要が生じる。市は費用の概算についてJRに確認中で、建て替えの詳細や具体的な時期についてはまだ明らかになっていない。

駅構内 列車の左の空間が田口線ホーム跡
駅構内 列車の左の空間が田口線ホーム跡

本長篠駅のホームは島式1面2線。宇連川(うれがわ)に面した崖っぷちの立地で、もし地滑りが発生すれば、大きな被害を蒙る可能性がある。駅舎とホームの間には昭和43(1968)年9月1日に廃止された豊橋鉄道田口線が使っていたホームの跡があり、こちらに線路を寄せて単線化することも計画されている。駅舎・ホームを丸ごと移設するのに比べれば費用を抑えられる案だが、その場合、列車の行き違いができなくなってしまう点が懸念材料だろう。ただし、この案が採用された場合でも折り返し列車に影響がないとJRは市に伝えており、市もJRに対して折り返し列車がなくならないよう働きかけていくという。

駅舎
駅舎

本長篠駅は大正12(1923)年2月1日、私鉄・鳳来寺鉄道の鳳来寺(ほうらいじ)駅として開業。昭和4(1929)年5月22日の田口鉄道(のちの豊橋鉄道田口線)開業を前に、3月15日に「鳳来寺口」への改称を届け出た。田口線に開業する二代目の鳳来寺駅に駅名を譲った形だ。昭和18(1943)年8月1日、鳳来寺鉄道が国有化されて飯田線となった際には「本長篠」に再改称された。その後は飯田線と私鉄のまま残った田口線の分岐駅として機能したが、田口線は水害の影響により昭和43(1968)年9月1日に廃止されている。

駅舎内
駅舎内

駅舎は開業時に建てられたもので、昨年2月に百周年を迎えた。鳳来寺鉄道が建てた駅舎として貴重な存在である。屋根の形状を見るに、待合室は増築されたもののようで、元はもっと小さな駅舎だったのだろう。駅舎内にはかつてみどりの窓口があったが、平成24(2012)年3月31日で営業を終了。翌日からは新城市による簡易委託の窓口となっている。

ちなみに、豊橋市とその周辺が舞台のライトノベル『負けヒロインが多すぎる!』の原作3巻とアニメ第7話には当駅が登場する。豊橋から少し足を延ばして聖地巡礼に訪れるのもよいだろう。

具体的な移設時期はまだ不明だが、地滑りという命に係わる要因が絡んでいるとあっては、本長篠駅が近い将来大きく姿を変えることはほぼ間違いないだろう。築101年の木造駅舎や田口線のホーム跡を見ておきたいなら早めに行っておくことをおすすめする。

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鉄道・旅行ライター

駅に降りることが好きな「降り鉄」で、全駅訪問目指して全国の駅を巡る日々。

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