日本を自立させずに利用する方法が解釈改憲である
フーテン老人世直し録(84)
水無月某日
年の初めに「今年は嫌でも戦争を意識せざるを得ない」というブログを書いた。今年の干支は甲午(きのえねうま)だが、120年前の甲午の年に日清戦争は起きた。その勝利が確定的になった時、日本政府は尖閣諸島の領土編入を閣議決定した。
100年前の7月には第一次世界大戦が勃発し、人類初めての世界規模の戦争で2千万人が戦死した。この戦争で連合国の一員だった日本は、中国にあるドイツ権益を要求したが、それが中国国民の反日運動を引き起こし、その中から中国共産党が誕生した。
日中関係がこれまでになく不正常な現在、この二つの戦争を学び直す意義は大きいという意味で先のブログを書いた。しかし今月の6日に欧米各国が「ノルマンディ上陸作戦70周年」を大々的に祝ったのを見て、来年の「第二次大戦終結70周年」に向け、もう一つの戦争も学び直す必要がある事をフーテンは痛感した。
また年の初めには「核の恐怖を体現するゴジラは甲午の年に誕生した」というブログも書いた。60年前の甲午の年、アメリカの水爆実験で太古の怪獣ゴジラが甦った。ゴジラは今年還暦を迎える。ところが調べてみるとゴジラと戦った自衛隊もその年に誕生している。自衛隊もまたゴジラと共に今年還暦を迎えるのである。
軍隊と呼ばない武力組織の存在は長年論議の的であった。しかし自衛権は当然の権利と認められ、自衛隊の存在が問題視される事はなくなったが、ここにきてこれまで禁じられてきた集団的自衛権の行使容認を閣議決定しようとする動きが出て、我々は嫌でも戦争と軍事の問題を真正面から見据える必要に迫られている。
集団的自衛権を巡る最大の問題は、政府の説明が現実的具体性に乏しく、観念的情緒性に満ち満ちている事である。先月15日に行われた安倍総理の記者会見はそれを端的に示していた。総理は「国民の生命を守る」と身振り手振りで繰り返し、ひたすら国民の感情に訴えていたが、その姿は衆愚を作り出して民主主義を破壊したヒトラーのやり方を思い出させる。
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