【国立】開店前に当日分が完売?!今食べるべき「感動の一杯」を作るかき氷職人の店
カフェライターなかくき くみこが実際に足を運んだ1,500軒のカフェのなかから、大人の皆さんが心から満足できるような素敵なカフェを紹介する連載「大人のための東京カフェ案内」。第6回目は、食べた人を虜にしてしまう感動のかき氷が味わえるお店をご紹介します。
古道具や植物を配した、心安らぐ静謐な空間
「プルルルル、プルルルル……」「はい、甘味ゆいです」。店内で鳴り続ける電話の音、それが「甘味ゆい」の朝の日常です。朝10時から当日分の席の予約を電話で受け付けており、夏の繁忙期には開店時間の12時までに当日分の席が完売することも少なくありません。
「甘味ゆい」があるのは、JR国立駅から富士見通りを18分ほど歩いた場所。店内は温かみのある手塗りの壁に年代物の家具や古道具が配された、落ち着きある空間です。
店主の由井尚貴さんはもともと国立市内で移動屋台を引きながら、たい焼きやかき氷を販売していました。食材や作り方にこだわり、一丁焼きでカリッと焼いたたい焼きは評判で、多い日には1日200個も売れていたそう。
8年間の移動販売を経て、2016年実店舗をオープン。現在は通年でかき氷を提供しており、夏の時期以外はあんみつなどの甘味も提供しています。
点てたての抹茶で作る、色鮮やかで香り豊かなかき氷
「甘味ゆい」が作る抹茶のかき氷の特徴は、他ではなかなか見られない「色鮮やかさ」。
その理由はシロップの1つとして使用する抹茶を、注文を受けてから一杯ずつ茶筅(ちゃせん)で点てているから。点てたてなので色鮮やかで、香りも味わいも抜群なのです。
かき氷に使う純氷は、冷凍庫から一度常温に置きやわらかくしてから削っているため、軽くてふわふわ!
抹茶と自家製ミルクを4回に分けてたっぷりとかけた「抹茶あずきミルク」(1,280円)は、最後の一滴まで食べ尽くしたくなる味わい。
同店を訪れたらぜひ味わいたいのは、たい焼き屋時代から評判のあずき。北海道産大納言を使用し、炊き上げる際は短時間で2度渋切りをするのが由井流です。
粒がつやつやで食感はほくほくとしており、甘さ控えめで豆本来の旨味が堪能できます。「渋を落としすぎず、“あずきの味を楽しめるあずき”を目指しています」と、由井さん。
季節のフルーツで作る、パーフェクトなかき氷
「甘味ゆい」では、旬のフルーツを使ったかき氷も人気。日替わりで5種類ほど用意しており、多くの常連さんたちは一度に2杯3杯と注文します。
この日提供されていたのは、「なつみ」(1,100円)。愛媛産の柑橘「なつみ」を一度シロップ漬けにし、それをトロッとするまで煮つめているそう。なつみ本来の爽やかな酸味はそのままに、ジューシーで濃厚な食べ応えのある一品です。
これまた衝撃的な味わいなのが、「メロンミルクとミント」(1,300円)。ミントと聞くとスーっとした味を想像しますが、そうではありません。
アンデスメロンの甘みや旨みをじっくりと堪能した後、フレッシュなスペアミントが口の中をスッキリさせ、最後の一口まで飽きがこない。食後は満足感でいっぱいに。
私自身これまで何度か同店を訪れており、毎度その美味しさに驚いています。完成度の高い一杯はどのように生み出されているのでしょうか。
「果物は個体によって味が違うので、同じようにシロップを作っても微妙に味が変わります。ですので日替わりの5種類は、毎日開店前に2時間以上かけて味の調整をしています」。日替わり商品に使うシロップはその日の朝までに完成させていますが、毎朝1商品につき30分以上味の調整をし、納得のいかない時はメニューから取り下げることもあるのだとか。
「お客さまにせっかく食べて頂けるので、「まあまあだったな」とか「イマイチだったな」と思ってほしくないんです。願わくば感動してもらえるくらいのものを作りたい」と、由井さんは話します。
少年時代の「幸せな食卓」の思い出が、感動の一杯へのこだわりへ
そんな由井さんが食に興味を持つきっかけは、子ども時代にありました。
府中市の団地で育った由井さんは、母と妹2人の4人暮らし。母子家庭だったため、働き手だったお母さんの帰りは遅く、一人で過ごす時間も多かったそう。しかし夕食の時間になると家族全員が食卓に集まり、それが子ども心にすごく嬉しかったのだそうです。
家族との食事の時間が幸せだったという経験から、食に対して前向きな印象を持つようになりました。
高校を卒業後、世界を見てみたいという思いから単身インドへ。インドでは野菜の美味しさに驚いたり、路上でモノを売るなどして力強く生きる人々に惹かれたりと、見るもの・食べるもの・聞く話すべてが新鮮で刺激的。当初4ヶ月間の旅を予定していましたが、帰国せずそのままインドで暮らしていました。
しかしインドでの生活が3年を過ぎたころ、父親の訃報をきっかけに日本へ帰国。インドで知った野菜の美味しさへの興味から、研修制度を利用して高知県で有機農業を学んだり、レストランで料理人として勤めたりしているうち、「一人でやってみたい」という気持ちが芽生え、27歳の時にたい焼き屋として独立しました。
転職ではなく、独立。しかも移動屋台。それについて不安はなかったのでしょうか。「まったくなかったです。でももしインドに行ってなかったら、私も屋台を引けていなかったかもしれません」。インドでたくましく生きる人々を間近でたくさん見てきたことが、自分のやりたいことに挑戦する力になっていたのです。
しかし、どうして選んだのが「たい焼き」の道だったのでしょう。それこそ本場の味を知るインドカレーの道もあったのでは…。
「子ども時代の食卓がとても幸せだったので、お年寄りから子どもまでみんなが食べてもらえるものがやりたかった」。子どもの頃、おばあちゃんが時々持ってきてくれた和菓子を食べるのも、楽しみの一つだったそう。
少年時代の温かい食卓やインドなどでの経験を経て、「お店に来てくれたお客さんに感動してもらいたい」という信念を抱いた由井さん。
「甘味ゆい」では一年を通じてかき氷を楽しむことができますが、夏本番はさらに予約が取りづらくなる傾向も。今度のお休みは職人が作る渾身の一杯を味わいに、国立へ足を運んでみませんか。
【店舗情報】
店名/甘味ゆい
住所/東京都国立市西2丁目19-12
電話/042-505-6210
公式サイト/https://twitter.com/yuikanmi(外部リンク)
アクセス/JR中央線 国立駅より徒歩18分
定休日/10月〜5月は月・火・日曜、6月〜9月は月・日曜
営業時間/12時〜17時30分(L.O.17時) ※朝10時から当日分の電話予約が可能
※新型コロナウイルス感染症対策により店舗の休業や営業時間の変更など、掲載内容と異なる場合があります。訪問される前に最新情報をご確認されることをおすすめします。
本連載では、今後もカフェライターなかくき くみこが大人の皆さんに向けて心からおすすめする魅力的なカフェを紹介していきます。ご興味のある方はぜひプロフィールからフォローをして頂けるとうれしいです。日々のカフェ巡りはインスタグラム(外部サイト)やツイッター(外部サイト)に投稿しています。
■一緒に読みたい記事
【新宿】行列必至のフレンチトーストが並ばず味わえる!隠れ家的コーヒーショップ