【青山】休日にゆっくり過ごしたい!ドリンクおかわりサービスのある老舗洋菓子店のガーデンカフェ
カフェライターなかくき くみこが実際に足を運んだ1,500軒のカフェのなかから、大人の皆さんが心から満足できるような素敵なカフェを紹介する連載「大人のための東京カフェ案内」。第三回目は、新緑の時期におすすめしたい美味しいスイーツが楽しめるガーデンカフェを紹介します。
広い空の下に建つ、緑に囲まれた白壁の洋館
乃木坂駅から3分ほど歩くと、3階建ての大きな洋館にたどり着きます。こちらは1947年(昭和22年)創業の老舗洋菓子店「銀座ウエスト」が営む「ウエスト 青山ガーデン」。
店舗の向かい側には青山霊園の木々が立ち並び、都内とは思えないほど大きな空が広がっています。敷地内には手入れの行き届いた庭があり、シンボルツリーのケヤキのほか、四季折々の木々や草花が気持ちよさそうに風に揺れています。
建物の1階にあるのは52席を有する広々としたカフェスペースと洋菓子販売のスペース、上階はお菓子工場。
現在、銀座ウエストには銀座と青山、横浜に3つの喫茶室がありますが、ほとんどのケーキはここの工場で作られているのだとか。青山ガーデンではいつもできたてを味わうことができるのです。
開店以来、1日約100枚売れ続けている名物ホットケーキ
青山ガーデンでは、毎日20種類以上用意しているケーキや、銀座ウエストの看板商品であるリーフパイなどのドライケーキ(焼き菓子)が楽しめますが、ここを訪れたらぜひ味わってほしいのが「ホットケーキ(一枚)」(飲み物付き、1,760円)。
青山ガーデンとベイカフェヨコハマの2店舗だけで提供される店舗限定メニューで、2008年に青山ガーデンが開店して以来、平日80枚、週末120枚ほどが注文され続けている大人気商品です。
ひとくち食べるとたまごの香りがふわ〜っと口の中に広がり、はちみつでほんのり甘さが加えられた生地はどこか昔懐かしい、ほっとする味わい。
北海道産の有塩バターと、銀製のピッチャーに香り豊かなカナダ産のメープルシロップがたっぷりと添えられています。直径18センチ、厚さ3センチとボリュームはありますが、ふわっふわの口当たりで思いのほかペロリと完食できます。
銀座ウエストが創業以来守り続けているのは、「最高の食材を使用すること」。品質の高い食材を使うことはもちろん、商品によっては小麦粉は挽いてからグルテンが安定するまで2週間、バターは製造から3ヶ月熟成したものを使用しています。
ホットケーキについても秒単位で焼き方を変え何度も試作し、レシピを完成。ガスコンロで焼くとムラができてしまうため、当時はまだあまり普及していなかったIHクッキングヒーターを導入したのだとか。同店に入社した新人シェフは、まずホットケーキを焼く修練を積むことから始めるのだそうです。
ドリンクはお代わり無料、銀座ウエストの真意
銀座ウエストでは、一部のドリンクに限り「おかわり無料」というサービスが行われています。一部といってもシンプルなコーヒー・紅茶だけではなく、カフェオレやカプチーノ、ロイヤルミルクティーなどのメニューも含まれます(最初に注文したものと同じ飲み物に限る)。
どうしてそんなに手厚いサービスをしているのでしょうか。創業者である依田友一(よだともいち)さんの孫で、取締役の野老山(ところやま)さんに伺うと、
「喫茶は銀座ウエストを知って頂く宣伝部門として考えているので、利益重視ではないんです。一人で来店されても、空いていれば四人席にご案内しています。昔は原稿を書いたりして一日いらっしゃる方もいました。なのでゆっくりして頂けたら」と、にこやかに答えてくれました。
ケーキを注文すると、スタッフが木製のコンポート(トレー)にほぼ全種類のケーキをのせ、客席まで運んできてくれます。これも創業当時から変わらぬスタイル。
新商品開発担当のパティシエが全国の生産農家を飛び回り、旬のフルーツを使ったケーキを開発しているため、定番以外に期間限定商品もたくさん登場します。こちらもぜひチェックしてみて。
創業から代々受け継がれる、銀座ウエストのフィロソフィー
銀座ウエストが最高の食材にこだわる理由。それは店の出自に関係しています。もともと銀座ウエストはコーヒー1杯10円の時代に、コース料理一人前1,000円という超高級レストランとしてスタートしました。
当時は外国行きの客船で腕をふるうシェフが業界の最高峰と言われており、銀座ウエストでも日本郵船出身のシェフを迎えオープン。ところがその半年後、都の条例により75円以上の高額な料理を提供することが禁止されたため、洋菓子を出す喫茶店に業態を変更したのです。
銀座の高級レストランとしてスタートした銀座ウエストは、「ちゃんといいものを作れば銀座のお客さまはわかってくれる」と考え、業態を変えても妥協をせず商品作りを続けました。
今や銀座だけではなく、東京を代表するような洋菓子店となりましたが、そのフィロソフィーは受け継がれています。従業員がいつも胸の中においているのは、「真面目でひたむきな」を意味する社是の「真摯」という言葉。
喫茶責任者の岡田さんは、その社是に魅力を感じ入社したという一人。「実際に働いてみてどうでしたか」と伺うと、「とっても忙しいお店ですが、お客さんに出す商品のクオリティを下げないことを徹底しているところに、真摯さを感じます」と教えてくれました。
信頼できる商品づくりや接客、空間。それらがこの店に通うリピーターが多い理由かもしれません。
実は、私にもそんなエピソードがひとつ。
数年前、うまくいかないことが続き心がモヤモヤしていた時、ふと「明日、青山ガーデンに行こう」と思い立ちました。当時の私は銀座ウエストのことを詳しく知らなかったのですが、なぜか以前訪問した際に“信頼できるお店”という印象を持っていたのです。予定を立てた段階から少しずつ楽しみになってきて、翌日お店でホットケーキを食べ終わった頃には、ずいぶん心が軽くなっていました。
それから私にとって青山ガーデンは、「あの場所に行けば元気になれる」というお守りのような場所に。
いつの日も穏やかに客を迎え入れ、丁寧に作り上げたデザートを提供する「ウエスト 青山ガーデン」。お休みの日の“行きたい場所リスト”に、ぜひ加えてみてはいかがでしょうか。
・参考文献:「銀座ウエストのひみつ」(木村衣有子)
【店舗情報】
店名/ウエスト 青山ガーデン
住所/東京都港区南青山1-22-10
公式サイト/https://www.ginza-west.co.jp(外部リンク)
アクセス/東京メトロ千代田線 乃木坂駅より徒歩3分
定休日/無休
営業時間/11時〜20時(スフレL.O.18時、ホットケーキL.O.19時15分、その他のフード・ドリンクL.O.19時30分)
※新型コロナウイルス感染症対策により店舗の休業や営業時間の変更など、掲載内容と異なる場合があります。訪問される前に最新情報をご確認されることをおすすめします。
※取材では銀座ウエスト様のご協力により商品を無償で提供頂きました。本記事制作にあたってはガイドラインに基づき公平中立に制作しています。
本連載「大人のための東京カフェ案内」では、今後もカフェライターなかくき くみこが東京にある魅力的なカフェを紹介していきます。ご興味のある方はぜひプロフィールからフォローをして頂けるとうれしいです。日々のカフェ巡りはインスタグラム(外部リンク)やツイッター(外部リンク)に投稿しています。
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