安倍一強が終わりを告げて今年もまた「3月大乱」
フーテン老人世直し録(358)
弥生某日
7日夜に安倍総理と自民党の二階幹事長が赤坂の料理屋で会談したニュースを見て「安倍一強は完全に終わったな」と思った。官邸主導ですべてを決めてきた安倍総理がついに二階幹事長のコントロール下に入ったことを見せつけられたからである。
会談は安倍総理が持ち掛けたと言われる。平昌オリンピックの開会式に出席することを渋っていた安倍総理を出席する方向に舵を切らせたのは二階幹事長と公明党の井上幹事長と言われる。その際に安倍総理と二階幹事長の間に「隙間風」が吹いた。
安倍総理は9月の自民党総裁選で三選されなければ、「憲法改正」を実現できないばかりか、「森友・加計疑惑」という「脛に傷」を持つ身であることから、権力を手放したとたんに評価を一気に落とす可能性がある。三選をものにして自らに逆らわない後継者を育成することでしか生きられない運命なのだ。
そのためには二階幹事長との「隙間風」を解消し、二階幹事長の口から改めて「続投支持」を表明してもらわなければならない。それが会談を持ちかけた理由だと思う。そしておそらく7日夜に二階幹事長の口から「支持」を表明してもらえた。
しかしである。これからも「支持」を表明し続けてもらうには二階幹事長の機嫌を損ねる訳にいかない。安倍総理はそうした立場に自らを追い込んだのである。フーテンにはそれが7日夜の会合に見て取れた。
もとより自民党の党則を変えて三選を可能とする構図を作ったのは二階幹事長である。「安倍の次は安倍」と公言し安倍総理の権力強化に貢献してきたのも二階幹事長である。しかしそれは同時に二階幹事長の権力をも強める方法である。
そして「安倍一強」はここにきて「与党主導」に比重のあることが明確になった。平昌オリンピックの出席問題だけではない。安倍総理が今国会の最重要法案と位置付けた「働き方改革」関連法案から裁量労働制拡大の方針を切り離す決断をさせたのも二階幹事長である。
また朝日新聞が報じた「森友関連文書の書き換え疑惑」で野党の追及をぬらりくらりとかわす財務省に資料提出を迫ったのも二階幹事長だ。そうしなければ国会の紛糾が長引き安倍政権の支持率にも影響するという理由からである。
二階幹事長は8日に提出するよう期限を切った。それはその前夜に安倍・二階会談が設定されていたからだ。会談ではその問題も話し合われたと誰しもが思い、翌8日午前の参議院予算委員会では安倍総理も与党議員も「原本」の公開に後ろ向きな「財務省の責任」に言及した。
するとそれが前夜の安倍・二階会談で話し合われたような印象になる。悪いのは財務省ということにして事を収める方向である。そこから「トカゲの尻尾切り」の尻尾がどこまでかに関心が集まり、8日の夕刊紙は「安倍麻生切り決断」とか「麻生降ろし加速」と報じた。
安倍総理は自身への追及を逃れるため、盟友である麻生財務大臣に責任を押し付けるというのだ。それを麻生氏も了承していれば麻生氏は安倍総理に大きな貸しを作ることになる。しかし本当に切るというのなら安倍・麻生戦争が勃発し傷つくのはむしろ安倍総理の方だ。
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