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北朝鮮が新型ICBM「火星18」発射、固体燃料式と液体燃料式のミサイルはどのように見分けられるのか

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
北朝鮮が発射した新型ICBM火星18。白い噴煙が固体燃料使用の特徴(労働新聞)

北朝鮮国営メディアは4月14日、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の立ち会いのもと、従来の液体燃料式よりも迅速に発射できる固体燃料式の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星18」の初の発射実験を前日13日に行い、成功したと発表した。

北朝鮮が液体燃料式ICBMの発射に初めて成功したのは2017年。以後、金正恩体制はわずか6年のうちにミサイルの固体燃料化を急速に進めてきた。北朝鮮の核ミサイル開発はアンストッパブル(誰にも止められない)で、日本にとっての軍事的脅威は増すばかりだ。

(関連記事:北朝鮮、新型固体燃料式のICBM「火星18」の発射初成功と発表 液体燃料ICBMからわずか6年の速さ

一般読者も北朝鮮の核ミサイル戦力についてのある程度の知識が一層求められる中、映像や画像を通じて、固体燃料式と液体燃料式のミサイルをどのように見分けたらいいのか。

●固体燃料式ミサイルの特徴

今回の「火星18」のように固体燃料型ミサイルは発射時に白い噴煙と強烈な光を放つのが特徴だ。炎は裾の広いスカート型をしている。次の映像は北朝鮮国営テレビが4月14日に放映した「火星18」の映像だ。

名著『兵器の科学 弾道弾』の著者である高エネルギー加速器研究機構の多田将・准教授は、「固体推進剤の種類にもよるが、固体推進式弾道弾の主流であるコンポジット(合成)燃料は、燃料がアルミニウムなので白く明るい噴煙になる」と指摘、「火星18もコンポジット推進剤を使っているのだろう。最も『普通』の選択だ」と述べた。

さらに「アルミニウムを使う場合、その性能は、アルミニウムをどれだけ細かく粉砕出来るかなどといった地味な技術に大きく左右される。この火星18の性能が高い場合、そういう技術開発も進めて来たことになる」と説明した。

●液体燃料式ミサイルの特徴

一方、北朝鮮がこれまで発射実験を繰り返してきたICBMの「火星15」や「火星17」など液体燃料型ミサイルの特徴は、発射時にオレンジ色の炎を多く出し、ミサイル下部のエンジン噴出口の煙があまり無いことだ。炎も縦長のろうそく型をしている。以下の映像は、北朝鮮が3月17日に公開した「火星17」の発射シーンだ。

固体燃料式ICBM「火星18」と液体燃料式ICBM「火星15」の写真を並べてみると、その違いがよく分かる。以下の左側写真は今回発射された固体燃料式ICBM「火星18」、右側写真は3月16日に発射された液体燃料式ICBM「火星17」。前述のように「火星18」は発射時に白い噴煙を放ち、炎がスカート型だ。「火星15」は発射時のオレンジ色の炎の多さとミサイル下部のエンジン噴出口の煙の無さに気づかれるだろう。炎もろうそく型をしている。

写真右は固体燃料式ICBM「火星18」(労働新聞)、写真左は液体燃料式ICBM「火星17」(朝鮮中央通信)
写真右は固体燃料式ICBM「火星18」(労働新聞)、写真左は液体燃料式ICBM「火星17」(朝鮮中央通信)

このほか、ミサイルの専門家で、未来工学研究所の西山淳一研究参与は14日、NHKの取材に対し、固体燃料式の場合は上昇しながら地上まで煙の尾が引いているが、液体燃料式の場合は噴煙が早く消えてしまうと指摘していた。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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