「偶然にも最悪な少年」や「ハードロマンチッカー」などで知られるグ スーヨン監督による本作「幽霊はわがままな夢を見る」は、その成立の仕方が幸せではないかと思える映画だ。

　本企画の発起人といっていいのは俳優の加藤雅也。下関出身のグ スーヨン監督と長い付き合いがありながら、彼は一緒に組むタイミングがなかった。

　常々「なにか一緒にやりたい」と思っていたところ、下関出身の女優・深町友里恵と短編映画「恋文」で共演。

　そこで三人で会ったことをきっかけに話が一気に進み、下関発のオリジナルムービー「幽霊はわがままな夢を見る」は誕生した。

　作品は、女優になる夢破れ、自らの才能にも絶望して故郷・下関に戻ってきたヒロイン・ユリが、父の経営するラジオ局を手伝いながら自身を見つめ直す、ひとつの成長物語。

　ただ、そこはグ スーヨン監督らしく、単にポジティブでは終わらない、人生のほろ苦さとちょっとしたゴーストストーリーも交わったユニークな一作になっている。

　そして、そこで強烈なインパクトを残すのが、ユリを演じた深町友里恵だ。

　夢が断たれ、もはややぶれかぶれで悪態はつくわ態度は悪いわという、ある種のダーク・ヒロインをただならぬやさぐれ感を出して演じ切っている。

　地元・下関での撮影の舞台裏から、加藤雅也とグ スーヨン監督との出会い、この作品に対する思いまで、彼女に訊く。

　地元・下関での撮影の舞台裏から、加藤雅也とグ スーヨン監督との出会い、この作品に対する思いまで、彼女に訊く。

　ここからは彼女自身のキャリアについてメインで訊く番外編に入る。番外編全三回／第一回

地元での舞台挨拶が一番緊張して恥ずかしかったです

　前回（第六回はこちら）まで作品について、演じたユリについて聞いてきたが、撮影は地元・下関。

　俳優によっては地元で知った顔がいると、ひじょうに演技がしずらい、気恥ずかしいという人もいる。

　力が入ったり、緊張したりすることはなかっただろうか？

「自分が主演を務めることの緊張は確かにありましたけど、地元で撮影することに対する緊張みたいなものはなかったです。

　撮影中、知っている人がいることもありましたけど、恥ずかしいことはなかったですね。

　むしろありがたかったといいますか。ほんとうに地元の方がバックアップしてくれて、映画作りを応援してくれたんですね。

　映画を完成させるために下関の人たちがいろいろと動いてくれた。改めて下関は人も町もあったかいなぁと思いました。

　撮影期間は１週間ぐらいだったんですけど、おかげさまで充実した濃厚な時間を過ごすことができました。

　地元だから緊張したことと言えば、撮影後ですね。

　映画が完成した後のことでした。

　下関での先行上映で舞台挨拶をしたんですけど、そのときはめちゃくちゃ緊張しました。

　もう知り合いがこぞって来てくれていたんですよ。それはうれしいし大変ありがたいことなんですけど……。

　わたし、もともと人前で話すのが苦手なタイプで、これだけ知った顔があると、どういう風に話せばいいのかわからない（笑）。

　変にちゃんとすると『なにを気取ってる』とかどこかから声が飛んできそうだし、くだけた感じになってしまうとそれはそれで失礼かもしれないし……。

　それから、上映後でしたから、知り合いにとってはいつものわたしではなくて、スクリーンでのわたしを見られた直後でもある。

　そういうことを考え始めると、もう緊張して何をどう話せばいいかわからなくなっちゃって。それこそこのとき、地元の知り合いの前に立つことにちょっと気恥ずかしさを感じました。

　あの舞台挨拶が一番緊張して恥ずかしかったです」

　地元でも「まったく別人に見える」と言われたのではないだろうか？

「いや見た目としてはそうかもしれないですけど、前にお話ししたように高校時代の恩師のように本質的なところではわたしそのままだとという人が多いです。

　ただ、そういえばちょっと面白いことがありました。さきほどお話をした先行上映のときのことだったんですけど、わたしには双子の妹がいて、映画を見に来てくれたんです。

　で、妹は髪を金髪にしていたりして、どことなく映画のユリに雰囲気も似ていたんですね。

　それで上映後、パンフレットのサイン会を開いたんです。

　そうしたら、お客さんが妹のことをユリ役の人だと思ったみたいで、妹にサインをもらいにいっていました（苦笑）。

　妹も調子にのって『いいですよ』とか言って応じようしてたんですけど、『おいおい、あんたじゃないでしょう』と止めました（笑）。

　わたしは気づかれないで、妹がユリに見間違えられたことがそういえばありました」（※番外編第二回に続く）

【「幽霊はわがままな夢を見る」深町友里恵インタビュー第一回】

【「幽霊はわがままな夢を見る」深町友里恵インタビュー第二回】

【「幽霊はわがままな夢を見る」深町友里恵インタビュー第三回】

【「幽霊はわがままな夢を見る」深町友里恵インタビュー第四回】

【「幽霊はわがままな夢を見る」深町友里恵インタビュー第五回】

【「幽霊はわがままな夢を見る」深町友里恵インタビュー第六回】

「幽霊はわがままな夢を見る」

監督：グ スーヨン

脚本：グ スーヨン、具 光然

出演：深町友里恵、加藤雅也、大後寿々花、西尾聖玄、山崎静代（南海キャンディーズ）、佐野史郎ほか

公式サイト　https://www.yureiwagamama.com/

全国順次公開中

筆者撮影以外の写真はすべて（C）株式会社トミーズ芸能社