元妻が買ったのは覚醒剤ではなく氷砂糖だった?「ドン・ファン事件」無罪の訳 #専門家のまとめ
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた男性を急性覚醒剤中毒死させたとして殺人罪などに問われた元妻に無罪が言い渡されました。市民感覚とかけ離れているなどと判決を批判する識者がいる一方で、市民の代表として審理に加わった裁判員の一人は「ニュースや報道でみる事件と、裁判員としてみる事件では全然違うので、先入観は怖いなと思った」と語っています。判決の理由やその影響を含め、理解の参考となる記事をまとめました。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
裁判所は事故死だった可能性を払拭できないと述べています。他殺だったかすら疑わしいというわけです。そうなると、元妻以外に犯人の可能性などないという検察側の主張は意味をなさなくなります。
覚醒剤入手の件も、SNSで「アイス」などの隠語を使って客を募り、元妻から注文を受けて販売したとされる密売人が「実は氷砂糖を砕いた偽物だった」と証言しています。元妻も男性の依頼で入手して渡したあと、男性から「あれは使い物にならん。偽物や」と言われたと供述しているところです。
検察側は嘘だと主張していたわけですが、2020年に全く同じやり方で氷砂糖を本物と偽って販売した大学生が麻薬特例法で摘発された例もあります。そのまま飲むと苦い覚醒剤をいかにして大量に飲ませたのかも未解明であり、検察側の主張に穴があったのは確かでしょう。
「疑わしきは罰せず」という刑事司法の原則が貫かれた形となった無罪判決でしたが、検察側の控訴が予想されます。故意に被相続人を殺害して刑に処せられたら相続人の資格を失います。この刑事裁判は13億円超ともいわれる男性の遺産の行方にも大きな影響を与えることになるわけです。(了)