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いつも一緒だった双子姉妹の前に気になる男の子が…。表の顔と裏の顔になってくれた二人の若き女優への感謝

水上賢治映画ライター
「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」より

 タイから届いた映画「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」は、ふたごの姉妹監督によるふたご姉妹の物語だ。

 主人公は、一卵性双生児の姉妹、ユーとミー。

 生まれてからこれまで姉妹は、一緒に行動して隠し事ひとつなく同じ時間を共有してきた。

 しかし、世の中がY2K問題で世界の終わりとざわついていた1999年、中学生でちょっと多感、異性への興味が増したこのとき、二人の前にハーフでちょっとイケてる同級生のマークが現れる。

 映画は、ひとりの男子の出現で、関係が揺らぎ始めた姉妹の戸惑いと葛藤、嫉妬と対立、それでも途切れることのない絆が、ポップに切なく描き出される。

 手掛けたワンウェーウ&ウェーウワン・ホンウィワット姉妹も本作の主人公姉妹と同様に一卵性双生児の姉妹。自伝ではないが、作品には随所に二人の実体験も含まれているという。

 映画長編デビューを果たし、注目を集めるタイのふたご姉妹監督に訊く。全四回/第四回

共同監督を務めたワンウェーウ(右)&ウェーウワン・ホンウィワット姉妹  (C)大西弘司 (JK Creation) / ReallyLikeFilms
共同監督を務めたワンウェーウ(右)&ウェーウワン・ホンウィワット姉妹  (C)大西弘司 (JK Creation) / ReallyLikeFilms

主演のティティヤー・ジラポーンシンについて

 前回(第三回はこちら)まで作品についていろいろと訊いてきたが、今回はキャストについて。

 まず、すばらしかったのはユーとミーを一人二役で演じた主演のティティヤー・ジラポーンシン。

 2005年1月4日生まれバンコク出身の彼女は、本作が演技初挑戦でスクリーンデビューとなった。

 彼女を抜擢した理由をこう明かす。

ウェーウワン「実は当初は一人二役にすることはまったく考えていなくて、本物のふたごの俳優を探していたんです。

 ただ、まあ想像できると思いますけど、ふたごの俳優、しかも10代のとなると相当限られるわけですから、キャスティングはかなり難航したんです。

 で、あるときに、プロデューサーのバンジョン・ピサンタナクーンが、友人の写真家のフェイスブックでティティヤー・ジラポーンシンを見つけて、この映画のオーディションに誘ったんです。

 それで結果としては、わたしもワンウェーウも、制作サイドのスタッフ全員が『彼女がいいんじゃないか』ということで意見が一致したんです。

 もう即決で、一人二役でやってもらうことも決めました。

 ただ、彼女はこれまで俳優としてのキャリアはない。演技初挑戦ですから、かなり時間をかけて演技のワークショップに参加してもらったり、直接演技指導したりとがんばってもらいました。

 わたしたちが求めたのは、やはりユーとミーとしてきちんと存在してもらうこと。ユーとミーにそれぞれ個人として存在してもらいながら、二人の親密さやわかりあっているところをきちんと出してもらいたいと思っていました。

 ティティヤーはそのわたしたちの期待に見事に応えてくれたと思っています。

 いろいろと指導しましたけど、どこかのタイミングからは必要なくなっていました。

 というのも、ティティヤーがものすごくユーとミーという役に入り込んでくれて、もうなりきって、ユーとミーとして存在してくれるように途中からなっていたんです。

 すばらしい才能の持ち主だと思います」

「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」より
「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」より

ワンウェーウ「ティティヤーは初めての演技ということで、いわば俳優としてはまっさらな状態で。

 わたしたちの演技指導や言葉をものすごく注意深くかつ素直に受け入れてくれました。

 たぶんちょっとキャリアがあると、変に色をつけたり、ひねってみたりしてしまうものなんですけど、彼女はものすごく素直で、言われたことをそのまま受け入れて、それをシンプルにストレートに出すことができる。これが実はできそうでできない。

 ほんとうにクレバーで努力も惜しまない子で、これから楽しみな演技者だと思います」

影の立役者、スタンドインのナットワサー・シーヌデート

 そして忘れてならない存在、影の立役者が本作には存在する。

 ユーとミーのどちらかになって、ティティヤーの演技の相手となったスタンドインの存在だ。

 この役は映画初出演になるナットワサー・シーヌデートが務めている。

ワンウェーウ「ナットワサーはほんとうにこの映画の影の立役者です。

 ひじょうに大きな役割を果たしてくれました。

 彼女はオーディションでユーとミーのスタンドに決まったのですが、ティティヤーとともに演技のワークショップに参加してもらい撮影に臨んでもらいました。

 彼女にはスタンドインではあるのだけれども、ユーとミーとしてきちんと感情をもって、ティティヤーと向き合って演技をしてほしいとお願いしました。

 それからティティヤーが演技初挑戦ということもありましたから、サポートしてほしいというか。

 ティティヤーがリラックスして自然体で演技に臨めるような場を作ったり、リアクションがしやすいような演技をしたりといったことをしてほしいとナットワサーに伝えました。

 その重責を彼女は見事に果たしてくれました。

 ティティヤーの一人二役もすばらしいかったですけど、ナットワサーの一人二役もすばらしかったです」

(※本編インタビュー終了。次回、プロフィール的なことをまとめた番外編を続けます)

【「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」姉妹監督インタビュー第一回】

【「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」姉妹監督インタビュー第二回】

【「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」姉妹監督インタビュー第三回】

「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」ポスタービジュアル
「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」ポスタービジュアル

「ふたごのユーとミー 忘れられない夏」

監督・脚本:ワンウェーウ&ウェーウワン・ホンウィワット

プロデューサー:バンジョン・ピサンタナクーン

出演:ティティヤー・ジラポーンシン、アンソニー・ブイサレートほか

公式サイト https://www.reallylikefilms.com/futago

全国順次公開中

作品に関する写真はすべて(C)2023 GDH 559 Co., Ltd. All Rights Reserved / ReallyLikeFilms

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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