新茶シーズン到来!「新茶ができるまで」を神奈川県秦野市の茶園からレポート
![](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/title-1715093127664.jpeg?exp=10800)
5月1日は八十八夜(2024年)。
立春から八十八日目にあたるこの日に摘んだお茶を飲むと長生きするとか縁起が良いなどと昔から言われています。
そんな五月晴れのある日、新茶シーズン真っ只中の茶畑と工場を日本茶インストラクター協会神奈川県支部の茶摘み&製茶研修で訪れました。
茶畑での茶摘みからスタートして、普段なかなか目にすることのない工場で新茶ができるまでの様子をレポートします!
新茶はどのくらい新鮮なの?
この時期、お茶の専門店からスーパーに至るまで店頭に並ぶ新茶。
新茶とはこの年に初めて摘まれた茶葉を限りなくフレッシュな状態で加工したものです。
![今回研修で訪問した神奈川県秦野市の「柏木茶園」さんの新茶](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715219629187.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
お茶の葉を摘んですぐ蒸し酸化発酵を止め、揉みながら乾燥させて煎茶に仕上げます。
その日のうちにできあがり、その後袋詰めして販売へ!となんともスピーディー。
新茶はスピード命!なのです。
そのためこの時期だけの摘みたてフレッシュな香りも楽しめるのが新茶の特徴です。
同じ時期に摘んだものも、荒茶という半製品の状態で保管しておき、都度加工することで一年を通してお茶は流通するのですが、新茶独特の新鮮な香りは保管の間に薄れていき、その代わりに熟成され落ち着いたものになるとも言われています。
茶摘みからスタート!
この日の研修の参加者は日本茶インストラクターと日本茶アドバイザーのみ。
つまり全員がお茶マニアです(笑)。
今回は特別にまだ植えて数年の「かなえまる」という品種の茶畑で茶摘みを行いました。
![新品種「かなえまる」の茶畑。「かなえまる」を生産しているのは全国でもまだ少ない希少な茶畑です。2020年に苗を植え2023年に移植したそう。まだ幼木なので樹勢も低く見た目もかわいい(と思う)。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715299863107.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「かなえまる」は2022年に登録されたばかりの新品種で、病害虫に強く味も良いとされています(新品種が茶摘みできると聞いて心浮き立つお茶マニア達)。
茶摘みと製茶を学ぶ研修なので、まずは手摘みで茶摘みを。
![一芯二葉で摘んだ新芽。新芽の芯には産毛のような「毛茸(もうじ)」が生えているのが見え、これが良いお茶の証拠でもあります。上質な煎茶を淹れるとお茶に浮かぶ細かい毛の正体です。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715219710050.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
「一芯二葉(いっしんによう)」といい、真ん中の芯を挟んで2枚の葉の下で摘みます。
このとき、爪を立てて摘んではいけません。葉が傷んでしまうからです。
新芽の茎は柔らかいのでポキッと折るようにするか、軽く引っ張ると簡単に摘むことができます。
![がんばって摘んでもまだまだ少ない・・・](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715299801398.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
手摘みではなかなか収量が増えないので、ここで「可搬式摘採機(かはんしきてきさいき)」という2人で畝を挟んで歩きながら摘む機械を投入!
![可搬式摘採機は2人で両端を持ち、歩きながら新芽を摘んでいきます。高さを一定にしないと古い葉も摘んでしまうので注意が必要。茶農家ではこれを雨の日以外毎日、数週間行います。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715219887603.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
エンジンをかけて大きなバリカンのような機械で摘んでいきます。圧倒的速さ!
この他にも乗用型摘採機という大きなトラクターのような人が乗って操作する機械もあり、もっと速く摘むことができます。
ただし、乗用型摘採機は平たんな広い茶畑にしか使えません。
摘みたてのお茶の葉を工場で製茶
手摘みした生の葉を手揉みで煎茶にするのは一日がかりで、製造工程の途中でやめることができません。
今では手摘みで手揉みした茶葉は品評会に出品するものがほとんどで、なかなか一般には流通していません(探せばありますがとても高価で貴重です)。
一般的には大半は機械で摘み、機械化された工場で製茶しています。
それでも新芽は毎日どんどん伸びるため、茶農家さんは休む暇なし。
重労働で体力勝負です。
この日は稼働中の工場の中も特別に見学させていただきました。
1.蒸熱(生葉を蒸す)
まずは摘んだ生葉を蒸す工程です。
ベルトコンベアにより生葉が運ばれ機械の中を通りながら蒸されています。
![あらかじめ古い葉など余計なものが入っていないか確認してから生葉を蒸していきます。蒸気が上がっているところが葉を蒸す部分です。蒸す時間もその都度確認しつつ微調整しています。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093156141.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
蒸した葉はこんな感じ。青々しくほのかに甘い香りが工場に漂っています。
![青々しくほのかに甘い香り、見た目も香りも野菜のよう(お茶の木も農作物なので当たり前といえば当たり前なのですが)。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093209051.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
2.葉打ち
熱風を送り込みながら葉についた水分を飛ばす工程です。
![「葉打ち機」です。蒸した葉は天井近くのトンネル状のベルトコンベアで葉打ち機に運ばれます。こちらの工場の機械はどれも小型トラックぐらいの大きさですが、もっと大きいものもあります。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093182948.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
3.粗揉(そじゅう)
熱風を送り込みながら葉を揉みます。
![「粗揉(そじゅう)機」です。こちらも葉打ち機と同様、中ではドラム式洗濯乾燥機のように葉が回転しながら揉まれています。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093238790.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
4.揉捻(じゅうねん)
お茶を製造する中で唯一熱を加えずに揉む工程です。
![「揉捻(じゅうねん)機」です。少し見えにくいですが、機械の上部が円を描くように水平に回転し、その下に挟まれている茶葉を圧力をかけながら揉んでいきます。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093262515.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
5.中揉(ちゅうじゅう)
揉捻機でやや絡まっている茶葉に熱風を送り込み、ほぐしながら揉んで乾燥させていきます。
![「中揉(ちゅうじゅう)機」です。こちらもドラム式で中で茶葉が回転しています。どの機械にも制御盤が付いており、温度や時間、回転速度などを調節できます。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093283820.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
6.精揉(せいじゅう)
茶葉の形状を整える工程です。
人の手ですり合わせて葉に「より」を作る工程を機械化しています。
![「精揉(せいじゅう)機」です。そろそろよく見かける茶葉の形状に近づいてきたのがわかります。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093398023.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
7.乾燥
最後にしっかり乾燥させて保管できる状態にします。
![「乾燥機」です。しっかり乾燥させて保管できる状態にします。[ご一緒した方からいただいた写真]](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715093082642.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
ここまでで半製品である「荒茶(あらちゃ)」に仕上がります。
生葉を100kgとすると荒茶になるころには約23kgほどになると言われています。
たくさん摘んでも8割は水分なのですね。
こちらの工場では生葉から荒茶になるまで4時間ほどかかるのだそうです。
茶畑で摘んだ生葉がどんどん運び込まれるので、繁忙期は夜まで稼働しているとのこと。
この後、荒茶は選別や火入れという工程を経て袋詰めされて新茶として販売されます。
![柏木茶園さんの新茶を淹れてみました。被覆していない昔ながらの純煎茶。透明感のあるお茶の色です。新茶特有のフレッシュな香りは新茶の時期の醍醐味!](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715221000137.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
繁忙期の茶農家さんの一日
こちらではご家族総出で茶摘みから製茶まで従事されていますが、工場はほぼお一人で対応とのこと。
機械にトラブルが起きた場合はその調整や修理まで対応するのだそう。
運ばれてきた生葉が工場のラインに乗ればここからノンストップ。
朝6時には起き、午前中のうちに茶摘みを終え、その日の製茶と掃除片付けまで全て終わるのが夜11時ごろだそう。
この生活が約2、3週間は続くのだとか。
茶摘みは雨の日はできないため休みとなりますが、雨が続くと新芽がどんどん伸びてしまうので良いお茶になりません。
かといって、晴れが続くと休みなしで毎日稼働するため体力勝負。
二番茶の茶摘みを行う6月にも同じような生活サイクルになるそう。
今回、茶摘みの大変さと製茶について身をもって学んだ方々からは「これからは心してお茶を飲まねば」「普段何気なく飲んでいるお茶も大切にしたい」という声が聞こえてきました。
![「むさしかおり」という品種の茶畑。こちらも珍しい品種です。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715300017931.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
茶摘みにチャレンジしたい方は
観光農園やイベントでない限りは一般の方の茶摘みの受け入れはありません。
特に4月中旬から5月いっぱいは一番の繁忙期。
生産者の方々は丹精込めて育てた茶の木を相手に、睡眠時間を削って多忙な日々を過ごしています。
機械での作業もしていたりと大変危険ですので、勝手に茶畑に入るなどは決してしないでください。
近年は茶摘みを担う「摘み子」さんが少なくなり一般募集も見かけますが、これはあくまで「仕事」としての募集です。
楽しい茶摘み、ではなく、ガチな労働ですので覚悟が必要です(体力に自信のある方と覚悟がある方はぜひチャレンジを!)。
その代わり、観光農園や茶摘みイベントなどでは一般の方も楽しめるプログラムがありますので、ぜひこちらにご参加ください。
ほんの一部ですが5月以降も受け入れている施設もありますので、ご紹介します。
・静岡県のお茶摘み体験スポット6選(外部サイト:ハローナビ静岡Blog)
・京都宇治の茶摘み体験(外部サイト:「茶づな」ホームページ。茶摘み体験は4月13日から5月中旬までとのこと)
・埼玉狭山のお茶摘み体験(外部サイト:「宮野園」ホームページ)
「茶摘み体験」で検索すると他にも出てきますので、ぜひ探してみてくださいね。
![「やぶきた」という品種の茶畑。全国の煎茶の7~8割が「やぶきた」で作られていると言われ、日本で最もメジャーなお茶の品種。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715300102369.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
![「やぶきた」の新芽。光に透けるような黄緑色が美しい。](https://newsatcl-pctr.c.yimg.jp/dk/expert-image/nihonchanavitomoko/article/01759092/image-1715299436577.jpeg?fill=1&fc=fff&exp=10800)
5月18日に横浜で新茶も楽しめるイベント開催
新茶の季節においしい新茶を飲みたい!そんな方に朗報です。
日本茶インストラクター協会神奈川県支部では5月18日に横浜市都筑区で一般の方向けの気軽なカフェスタイルの日本茶イベントを企画しているそうです。
新茶の他にも抹茶や玉露までお得に楽しめるイベントとのこと。
日本茶の魅力と楽しさをたくさんの人にシェアしたいという想いで開催されます。
各ブースは日本茶インストラクターや日本茶アドバイザーの有資格者が担当するそうですので、おいしいいれ方のコツなど日頃のお茶についての疑問などにも答えてもらえますよ。
【支部カフェ2024「新茶の季節を楽しもう!」】
・日時:2024 年 5 月 18 日(土)
・場所:First Move(外部サイト)
横浜市都筑区中川中央 1-21-7
横浜市営地下鉄ブルーライン・グリーンライン「センター北」駅より徒歩 3 分
・開催時間:10:30〜16:30(入場は16:00まで)
※混雑時は入場をお待ちいただく場合があります。
・茶席の種類
1.抹茶 2.玉露 3.新茶さえみどり 4.釜炒り茶 5.お楽しみ(煎茶、紅茶など) 6.ウェルカムティー(ハワイ産の緑茶)・水出し茶各種
・料金:500円 3.〜6.のお茶が自由に楽しめます(お菓子付)
※同伴の子ども(小学生まで)は大人1人つき子ども1人まで無料。2人目以降は1人100円。子ども用ミニ紙コップでの提供となります。
1.抹茶席、2.玉露席に参加希望の方は別途、各席500円をお支払いいただきます。
【抹茶席の時間】10:45〜、11:15〜、11:45〜、13:30〜、14:00〜、14:30〜、15:00〜、15:30〜
【玉露席の時間】11:00〜、11:30〜、12:00〜、12:30〜、14:15〜、14:45〜、15:15〜、15:45〜
※各回の定員は抹茶席4名、玉露席4名です。
※事前予約は受け付けません。当日、会場に直接お越しください。
満席になりましたら受付を終了しますので、早めに受付をお済ませいただくことをお勧めいたします。
詳しくは日本茶インストラクター協会神奈川県支部ホームページ(外部サイト)をご覧ください
5月末ごろには全国各地の新茶が出そろいます。
この時期ならではの新茶のフレッシュな香りをぜひ楽しんでください。
取材協力:日本茶インストラクター協会神奈川県支部、柏木茶園様
※「日本茶インストラクター」って何?と気になった方はこちらをご覧ください
NPO法人日本茶インストラクター協会ホームページ(外部サイト)
[新茶に関連した過去記事]
・新茶の季節に知りたい「お茶のいれ方」!日本茶のプロがおいしくいれるコツをご紹介(2023.5)
・栄養豊富な「茶殻」を食べる!「和えるだけ」で一品完成!食べても美味しい新茶の茶殻(2021.6)
・新茶飲むなら「今でしょ!」新茶って何が特別なの?の疑問にお答えします(2021.5)
・緑茶も紅茶も同じ葉っぱからできている!茶摘み後の楽しみは自家製「緑茶」「紅茶」作り(2021.5)
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