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新茶飲むなら「今でしょ!」新茶って何が特別なの?の疑問にお答えします

日本茶ナビゲーター Tomoko日本茶インストラクター

毎年5月中旬はワクワクする季節!

なぜなら南から北まで各地の新茶が店頭に出揃う季節だからです。

今年の新茶の味はどんな味かな?香りは?と選ぶ楽しみ、飲む楽しみがあります。

爽やかでフレッシュな香りと味はこの時期ならではの特別なもの。

新茶を飲むなら「今!」です!!!

☆この回から「新茶シリーズ」として数回にわたり新茶をより楽しむための情報をお届けします。

「新茶」を飲むなら今!茶畑直送の香りを味わう

この時期よく相談されるのが、新茶を先に飲むのが良いのか、「ひね」と呼ばれる前年度のお茶を飲み切ってから新茶を飲んだ方がよいのか、という悩みです。

「新茶は高級そうだしもったいないから取っておく」という方もいるかもしれません。

いえいえ、それだとせっかくの新茶の味わいが半減してしまうかもしれません!(さらに大事にしまいすぎて忘れたころに奥の方から新茶が発掘される悲しい結末をたどる可能性も・・・年末大掃除あるある)

新茶を飲むなら「今!」です。

茶畑直送のこの新茶独特の香り、実は1~2か月で消えてしまう揮発性の儚い香りでもあるのです。

新茶シーズンの茶畑(2021年5月上旬。神奈川県山北町で撮影)
新茶シーズンの茶畑(2021年5月上旬。神奈川県山北町で撮影)

新茶というのは以前の記事でもご紹介しましたが、「その年の一番最初に採れたお茶」のことです。

冬の間に養分をしっかり蓄えたお茶の木が、春になって新芽を出し、その芽を摘みます。

上級のお茶は新茶シーズン初めの時期に摘んだものをすぐに加工し「荒茶(あらちゃ)」という半製品の状態にして適切な温度で保管します。そして1年間保存しつつ、発注がかかったら仕上げ加工をし袋詰めして販売するという流れです。こうして一年中お茶が店頭にならぶのです。

「新茶」として出るのは4月~5月のこの時期に摘みたての茶葉を「荒茶」からそのまま「仕上げ茶」にして袋詰めしてお店に並べたもの。つまり「茶畑から直送」状態。最高に贅沢です!

新茶そのもののフレッシュな香りを活かすため、「火入れ」という乾燥と香りや味に影響を与える工程を、新茶は通常より弱くした仕上げ加工にしているところが多いです。火入れが弱く、保管状態によっては賞味期限内でもだんだん香りや味が変化していくため、できるだけ早く飲んでほしいとのことから、賞味期限自体を通常より短めに設定しているところもあります(私が勤めていた日本茶専門店ではそのようにしていました)。

そして、初夏のこの時期を過ぎると少しずつ味や香りも段々と「新茶らしさ」が失われていきます。つまり「新茶」は期間限定のスペシャルバージョンのお茶なのです。

ですので、もし、お手元に今年買った「新茶」と昨年度の「ひね」のお茶があるなら、まず賞味期限を見て、ひねの賞味期限がしばらく先だったら、新茶を先に開封して飲んでいただきたいと思います。

新茶の楽しみ方

新茶、特に上級煎茶の新茶は、苦味も少なくまろやかなものが多いです。それは春の日差しがそれほど強くないということも関係しています。日光を浴びるとお茶の葉の中にカテキンという苦渋味の成分が増えるためです。

お茶のパッケージに淹れ方が書いてあるものが多いですが、煎茶の淹れ方は「80度で1分待つ(深蒸し煎茶は30秒)」が基本のめやすです。茶葉の量は1人分2g程度(ティースプーン軽く1杯)を人数分、お湯の量は上級煎茶なら1人分60ml程度です。

こちらを基準にして、うま味や甘味を味わいたい場合は、温度を70くらいに下げて浸出時間を長めにとります。逆に、フレッシュな香りを立たせたいときは、85度以上で浸出時間を短くします。

味覚は人それぞれですし、その日の気分で淹れ方を変えて楽しめるのも、中級~上級ランクの新茶の楽しみ方の一つです。

せっかくの新茶シーズンですので、普段よりちょっと良いものを飲んでみるのも良いですね。

また、新茶独特のフレッシュな香りが味わえるうちに飲み切れるよう、できるだけ少量のパッケージで購入するのもおすすめです。

※並級煎茶と言われる100g1000円以下の普段使いのお茶は、元となる茶葉にうま味や甘味があまり含まれていないため、どんなに温度を下げてじっくり浸出させてもうま味や甘味の多いお茶にはなりません。こちらは高めの温度でさっと淹れて、香りとさっぱりした味を楽しむのに適しています。

新茶は一煎パックから50g~100gといろいろなサイズで販売されていることが多い。お気に入りのお茶を見つけるのも楽しい。
新茶は一煎パックから50g~100gといろいろなサイズで販売されていることが多い。お気に入りのお茶を見つけるのも楽しい。

新茶の選び方

日本には沢山の茶産地があります。

数量限定で販売されるものは既に品切れ、来年まで入荷なしのものもありますが、今はどこに行っても新茶が手に入るベストシーズン!

産地ごと、生産者や茶商ごとの違い、品種による違い、値段による違いも面白いです。

「初めてだからどれを買ったらよいかわからない!」という方も多いかもしれません。

私が以前ある茶商さんに伺いずっと実践している購入のし方をご紹介します。

試飲ができない場合やオンラインショップで購入する場合、まず、100g当たり1000円(50gなら500円)くらいの価格帯の物を購入します。最近はスマートレターなどで少量を安い送料で送ってくれるお店も増え気軽に注文できるようになってきています。

そのお茶を淹れてみて、味が気に入ったら、次はそれよりランクの高い高価なものや、逆に普段使い用に低価格の物を買って飲んでみます。

これが自分好みのお気に入りのお店や生産者を見つける方法の一つです。

新茶の時期はいつまで?

「新茶」のパッケージがお店に並ぶのは、6月下旬ごろまでが多いようです。

では新茶の時期を過ぎたら製造元で「荒茶」として1年間保管している茶葉は美味しくなくなるのか?というと、そうではありません。適切な温度・適切な状態で保管された茶葉は、熟成が進んで角が取れたまろやかで芳醇な味わいに変化すると言われています。

一般的に、季節によって人の味覚は変わるため、夏頃まではフレッシュで爽やかな香りが求められる傾向があります。しかし秋になると、食べ物でもお茶でも、深い味わいやコクを求めるようになります。そういう時には新茶よりもっとまろやかで芳醇な味わいが受け入れられるようになります。ここで、熟成されたお茶の出番がやってきます。

お店によっては「秋の熟成新茶」とか、茶道の慣わしをネーミングに取り入れた「口切り新茶」などという名前で、火入れを少し強くしコクを増したりと秋冬の味覚に合うようなブレンドや仕上げ加工をして販売したり、名前を変えずとも新茶と通常のお茶とは仕上げ加工を変えていたりします。

新茶と同じ時期に採れた茶葉ですが、保管することで丸みを帯びた深い味わいになり、新茶より火入れが強くなるため賞味期限は製造より約1年程と長くなります(製造元により多少の違いはあります)。

たくさんのお茶に出会い、いろいろなお茶を飲む楽しみ。

月毎に違う産地の違うお茶が届く。そんな楽しみが味わえるお茶のサブスクも最近は増えてきています。

この時期の新茶をぜひ楽しんで下さいね!

新茶を飲むなら今!ですよ~

日本茶インストラクター

【お茶の世界の扉を開く日本茶ナビゲーター】 日本茶専門店で7年勤務、茶道歴25年の経験を活かし、大手百貨店や外国の大学等でのワークショップで国内外2,000名以上の方に日本茶の魅力を伝える。 美味しい日本茶とそれにまつわる伝統工芸品を後世にも繋いでいきたい、日本茶への愛と想いで日本茶情報を発信中。 日本茶の商品開発、カフェ・飲食店での日本茶コーディネートや淹れ方指導も行う。 NPO法人日本茶インストラクター協会認定日本茶インストラクター(2004年取得)。 日本語教師(外国人対象)。

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