少子化対策のたたき台は、本当のところどこが注目点か? 児童手当ばかりが焦点ではない
政府は、3月末までに少子化対策のたたき台を取りまとめる予定にしている。
それというのも、岸田文雄首相が、2023年の年頭1月6日に次のように指示していたからである。
この岸田首相の指示を発端として、3月末を目途に「具体的なたたき台」を取りまとめる作業が進められていた。
もちろん、たたき台の内容を踏まえ、4月以降、岸田首相直下でさらに検討を進めて、6月頃にも閣議決定される予定の「骨太方針」において「将来的なこども予算倍増」にむけた大枠を提示する、というスケジュールも示された。
上掲した岸田首相の指示にもあるように、こども政策強化のメニューとして基本的方向性のいの1番に出てきたのが児童手当だった。それもあって、児童手当をめぐる議論が、これまで何かと注目され、最も盛り上がっている。
所得制限の撤廃や多子世帯への加算、支給年齢の18歳までの延長といった児童手当にまつわる改革項目は、3月末のたたき台には盛り込まれる方向だ。
ただ、たたき台はあくまでも「たたき台」である。たたき台に盛り込まれたからと言って、最終的に「骨太方針」に採用されるかどうかは、財源の確保がどれだけできるか次第にかかっている。財源の目途が立たなければ、実施はできない。
所得制限の撤廃、多子世帯への加算、支給年齢の18歳までの延長の3つの中では、金額の規模からすれば、所得制限の撤廃が最も少ない。ただ、所得制限を撤廃したからといって、低所得世帯の児童手当が増えるわけではない点には注意が必要だ。
金額の規模からみて最も大きいのは、多子世帯への加算である。兆円単位の財源が必要となる。これは、消費税の増税をすれば容易に賄える(税率を1%上げただけで2.5兆円程度の税収が入る)規模だが、岸田首相は、消費税については「当面触れることは考えておりません」と国会答弁をしているから、消費税を用いないで財源を確保することが基本となるだろう。そうなると、消費税以外で兆円単位の財源を捻出できるかが問われるが、それは容易なことではない。
何かと児童手当ばかりが焦点になるのだが、こども予算の注目点はもっと他にある。それは、
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