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少子化対策のたたき台は、本当のところどこが注目点か? 児童手当ばかりが焦点ではない

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
政府が3月末までに取りまとめる少子化対策のたたき台はどうなるか(写真:イメージマート)

政府は、3月末までに少子化対策のたたき台を取りまとめる予定にしている。

それというのも、岸田文雄首相が、2023年の年頭1月6日に次のように指示していたからである。

○こども政策の強化について、検討を加速するため、本年4月のこども家庭庁の発足を待たず、小倉大臣の下で、一昨日の伊勢の会見で示した3つの基本的方向性に沿って検討を進め、3月末を目途に、具体的なたたき台をとりまとめていただきたい。

 (参考)対策の基本的な方向性

 1)児童手当を中心に経済的支援を強化すること。

 2)学童保育や病児保育を含め、幼児教育や保育サービスの量・質両面からの強化を進めるとともに、伴走型支援、産後ケア、一時預かりなど、全ての子育て家庭を対象としたサービスの拡充を進めること。

 3)働き方改革の推進とそれを支える制度の充実を図ること。女性の就労は確実に増加した。しかし、女性の正規雇用におけるL字カーブは是正されておらず、その修正が不可欠である。その際、育児休業制度の強化も検討すること。

○検討に当たっては、小倉大臣の下に関係省庁と連携した体制を組むとともに、学識経験者、子育て当事者、若者をはじめとする有識者から、広く意見を聞き、大胆に検討を進めてもらいたい。節目節目で、自分も直接、話を聞く。よく相談していきたい。

○小倉大臣によるたたき台の内容を踏まえ、4月以降、自分(総理)の下で更に検討を深めるとともに、こども家庭庁においてこども政策を体系的にとりまとめつつ、6月の骨太方針までに将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を提示する。

(出典)こども家庭庁設立準備室「こども政策の強化」全世代型社会保障構築会議第13回会合配付資料(2023年2月24日)

この岸田首相の指示を発端として、3月末を目途に「具体的なたたき台」を取りまとめる作業が進められていた。

もちろん、たたき台の内容を踏まえ、4月以降、岸田首相直下でさらに検討を進めて、6月頃にも閣議決定される予定の「骨太方針」において「将来的なこども予算倍増」にむけた大枠を提示する、というスケジュールも示された。

上掲した岸田首相の指示にもあるように、こども政策強化のメニューとして基本的方向性のいの1番に出てきたのが児童手当だった。それもあって、児童手当をめぐる議論が、これまで何かと注目され、最も盛り上がっている。

所得制限の撤廃や多子世帯への加算、支給年齢の18歳までの延長といった児童手当にまつわる改革項目は、3月末のたたき台には盛り込まれる方向だ。

ただ、たたき台はあくまでも「たたき台」である。たたき台に盛り込まれたからと言って、最終的に「骨太方針」に採用されるかどうかは、財源の確保がどれだけできるか次第にかかっている。財源の目途が立たなければ、実施はできない。

所得制限の撤廃、多子世帯への加算、支給年齢の18歳までの延長の3つの中では、金額の規模からすれば、所得制限の撤廃が最も少ない。ただ、所得制限を撤廃したからといって、低所得世帯の児童手当が増えるわけではない点には注意が必要だ。

金額の規模からみて最も大きいのは、多子世帯への加算である。兆円単位の財源が必要となる。これは、消費税の増税をすれば容易に賄える(税率を1%上げただけで2.5兆円程度の税収が入る)規模だが、岸田首相は、消費税については「当面触れることは考えておりません」と国会答弁をしているから、消費税を用いないで財源を確保することが基本となるだろう。そうなると、消費税以外で兆円単位の財源を捻出できるかが問われるが、それは容易なことではない。

何かと児童手当ばかりが焦点になるのだが、こども予算の注目点はもっと他にある。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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