大学中退・休学者は昨年より減。「学びの継続」のため緊急支援策を継続実施へ
2020年12月18日、文部科学省の調査によると、今年4~10月に全国の国公私立の大学や短大を中退した学生の数は2万5008人で、昨年同時期より6833人減っていることがわかった。
今年中退した学生のうち、新型コロナウイルスの影響と確認されたのは1033人。
休学した学生も6865人減って、6万3460人となった。
以前記事を書いた通り、前期に行われた政府の「緊急支援策」や、大学側の対応の成果が出たものと思われる。
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他方、今年度の前期授業料の納付を猶予された人は20万4685人で(全学生に占める割合は6.76%)、昨年度の13万9015人(4.52%)を大きく上回っている。
継続的な緊急支援策として、100億円程度の予算が必要ではないかと思っていたが(増加分の約6.5万人×20万円弱/人)、令和2年度第3次補正予算(案)では「家計が急変した学生等への無利子奨学金の充実」として90億円計上されており、基本的には十分な予算規模だと思われる。
高校生への支援に関しては、「就学金制度などの拡充がセーフティネットとして機能している結果」(12月3日、全国私立学校教職員組合連合の永島民男中央執行委員長)として、今年9月末までの私立中学・高校における学費の滞納は4年連続で1%を切り、滞納生徒数も過去最低となっていたが、こちらも令和2年度第3次補正予算(案)に102億円を計上。
第3波の到来によって経済的な影響が続いており、今後も注視が必要だが、基本的には必要な経済支援策が整備されていると思われる。
ただ、制度が本当に必要な人に届いていないケースもあるため、大学や高校では生徒・学生・保護者に周知徹底することを期待したい。
また、今後奨学金利用者がさらに増えることを考えると、将来的な返済負担を軽減するため、下記のような施策も求められる。
・奨学金の所得連動型返還制度の拡充(既卒生への適用、第二種への適用、機関保証料の減額、マイナンバーに所得を紐付けて自動的に返還猶予、返済猶予の年限撤廃、ブラックリスト入りなくす等)
・奨学金の返済免除制度の拡充(イギリス:30年間返済した後は帳消し、教師や看護職だと給付型奨学金に転換、アメリカ:10年間公的職業に就いた場合ローンの残額返済免除、その他は20年で帳消し)
・奨学金返済分の所得控除
要望を受けて業績優秀者返還免除制度(大学院)の申請期間の柔軟化も実現
12月18日には、「学生の”学びの支援”緊急パッケージ」を更新。
先述の無利子奨学金の拡充に加え、就職が決まらない学生等/学びの複線化を希望する学生等への特別支援や、業績優秀者返還免除制度(大学院)の申請期間の柔軟化が追加された。
特に、「業績優秀者返還免除制度(大学院)の申請期間の柔軟化」は、筆者が代表理事を務める日本若者協議会が9月に博士課程の学生を中心とした若手研究者へのアンケートを実施した際に挙げられていた課題で、与党に改善の要望を出していたため、実現したことは高く評価したい。
◯20代・女性・大学院生(博士後期課程)
コロナで修了が1ヶ月でも遅れた場合、業績が素晴らしいものであっても日本学生支援機構の第1種奨学金返還免除の申請を行うことができないため、この遅れが将来的に負う借金の額を数百万円単位で変動させる可能性もあります。奨学金の返還免除枠の拡大や申請条件の緩和を望みます。
「業績優秀者返還免除制度」は、「大学院で第一種奨学金の貸与を受けた学生であって、貸与期間中に特に優れた業績を挙げた者として日本学生支援機構が認定した人を対象に、その奨学金の全額または半額を返還免除する制度」だが、対象者が「当該年度中に貸与終了する人」になっているため、研究が遅れ在籍期間を伸ばす学生への対応が必要となっていた。
文部科学省の調査によると、新型コロナウイルスの感染拡大によって、博士課程学生の73%が「博士号の取得が遅れる可能性がある」と答えるなど、研究活動に大きな支障が出ており、重点的な支援が必要となっている。