日銀と安倍政権が組んだサプライズ劇は「最後の切り札」か
フーテン老人世直し録(112)
霜月朔日
黒田日銀総裁が安倍政権と組んで行った追加の金融緩和策の発表によって株価の高騰と円安が進行した。記者会見で黒田総裁は「今が正念場だ」という言葉に力を入れた。デフレ脱却に向けた日銀の意思に揺るぎがない事をここで示さなければ勝負に負けると言っているようだ。
それもそのはずで、安倍総理も黒田日銀総裁も強気の発言を繰り返してきたが、足元を見ればそれとは逆に景気は好循環どころか悪循環に陥りそうで、それが海外からも指摘され日本経済の見通しには暗雲がたちこめていた。
アベノミクスは異次元の金融緩和によって市場にマネーを溢れさせ、株価上昇と円安を実現させて輸出企業を潤し、企業のデフレマインドを払しょくする事で、利益を賃上げと設備投資に回させ、景気の好循環を狙う計画である。
しかし現実は輸出が伸びずに輸入品の価格だけが高騰し、賃上げも一部大企業にとどまり、消費支出は消費税が引き上げられた4月から連続マイナスが続いた。アベノミクスは日本のGDPを押し上げたが、実体は「第二の矢」である官主導の公共事業と消費増税前の駆け込み需要による一時的な経済効果に過ぎない事も分かってきた。
そのため海外から「アベノミクスは失敗」と見られ、アメリカ政府からは「消費増税を慎重に判断すべき」と言われるようになった。しかし消費税を10%に引き上げるのは既定の路線である。それを安倍総理が覆すとなれば相当の政治リスクがある。
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