阪神タイガースの今季初勝利を導いた梅野隆太郎、リハビリ中に見せた姿と残した言葉
■今季初スタメンマスクの梅野隆太郎
2024年シーズンの初白星を刻んだ阪神タイガース。その扇の要の位置にいたのは梅野隆太郎捕手だ。
今季初のスタメンマスクで先発・才木浩人投手をしっかりリードし、ワンバウンドするボールを懸命にブロックした。圧巻は三回裏、2死満塁で岡本和真選手を迎えた場面だった。要求したフォークを体を張ってことごとく止め、決して後ろには逸らさなかった。結果、5球目のフォークで空を切らセ、ピンチを脱した。
梅野選手の真骨頂ともいえるこのブロッキングとキャッチングがあるから、ランナーを三塁に背負っても投手は安心して腕が振れる。続く桐敷拓馬投手、ハビー・ゲラ投手、岩崎優投手も引っ張り、みごと完封リレーを完成させた。
また、打撃でも魅せた。チームが打ちあぐねていた読売ジャイアンツ・高橋礼投手からのチーム唯一の安打は、自身にとっても今季初安打だった。さらに犠打もきっちりと決めた。
攻守にわたって頼りになる男が、帰ってきた。
■若虎へのアドバイス
右肩の肉離れを発症したのは春季キャンプ中の2月22日だった。キャンプ後も鳴尾浜球場に帰ってリハビリを続けた。3月の鳴尾浜はまだ風も冷たく、日々気温や気候とも相談しながら、慎重に慎重に進めてきた。
昨季は8月に死球によって左手首を骨折し、戦線から離脱した。並々ならぬ意気込みで今年に臨んでいただけに、さまざまな思いがあったであろう。しかし、梅野選手は常に前向きだった。その口からネガティブな言葉はいっさい聞くことがなかった。
昨年もそうだったが、鳴尾浜ではいつも若虎たちに気を配っている。外野のウォーニングゾーンをウォーキングしたりランニングしたりするときは、同じくリハビリ中である若虎と連れだって、話を聞きながら行う。練習中も気づくと、傍にいる若虎に話しかけている。
また、こちらが若虎と話している場面に出くわすと横から乱入してきて、その選手のよさを熱く語り始める。そのアピール力は、さながら敏腕セールスマンのようだ。
「こいつ、すごくよくなってるけん、もっと取り上げてやって。記事で取り上げて注目されることって、大事やからね。どんどん書いてあげて」。
スポットが当たっていない選手を少しでも輝かせてやりたい―。そんな思いからの先輩の猛プッシュに、後輩は恐縮しつつ感激している。
■周りの人への感謝
周りの人たちへの気遣いや感謝の思いも深い。1軍に合流直前、ウエスタンの試合に初出場したあとも、自らこう切り出した。
「ほんとにリハビリ期間ね、トレーナーさん含め、いろんな携わってくれている人とかが一生懸命に対応してくれて、今があると思う。ケガするとね、ひとりではできないことを周りがカバーしてくれてるんで。その思いを背負って、しっかり上(1軍)でもやれたらなっていうのが、一番の正直な気持ち」。
治療や練習のサポートなど、多くの人が復帰に向けて関わってくれた。1軍での活躍は、そういう人たちへの恩返しにもなる。
■ファンへの思い
また、いつもと変わらずファンへの思いも口にしていた。
「1軍の舞台で、お客さんがたくさん入ってっていう環境、雰囲気に変わる。モチベーションが上がって、どんどん、どんどんいけるんじゃないかなっていう部分もある。ファンと共にって感じでまた戦えることの喜びが、待ち遠しいって感じですね」。
ファンがいるから、より頑張れる。応援に応えたいという気持ちが、自らを衝き動かしてくれる。あらためて今、それを噛みしめている。ファンがいかにたいせつな存在かを、梅野選手は決して忘れることはない。
開幕カードの東京ドームでは、「梅野隆太郎」の名前入りタオルが数多く掲げられていた。昨年はシーズン途中から欠いた梅野選手が、こうして当たり前にいる。この安心感は、虎党に連覇を確信させてくれていた。
(撮影は筆者)
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