新型コロナ後の投資チャンスとは
30年半ぶりの株高でも、意外に盛り上がってない理由
日経平均株価が30年半ぶりに30000円を超えたことで、メディアでも株価について取り上げる機会が増えてきています。しかし、株高ばかりがクローズアップされていて、その背景にある歪んだ株価の構造には触れられることがありません。
今の株価の特異点は、一部の個別銘柄に物色が集中しているということです。そのことによって、個別銘柄間で株価の二極化が進み、個人投資家が儲かって儲かって仕方がないという環境にはなっていないのです。
たとえば、日経平均株価に採用されている225銘柄のうち、株価の上昇寄与度が高いトップ5の銘柄(ファーストリテイリング、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、ダイキン工業、エムスリー)と、その他の220の銘柄に分解してみると、前者の平均上昇率が際立っている一方で、後者は大して変わっていない状況にあります。
実は、大半の銘柄が大して上がっていない
2020年を通じたパフォーマンスをみると、上昇寄与度の高いトップ5が平均85%も上昇していたのに対して、その他の220銘柄はマイナス3.4%と下落していました(グラフA参照)。日経平均株価が2020年に16%上昇していたのを考えると、全体の株価動向から見える景色はずいぶん変わっていたことがわかります。
さらに、2020年~2021年2月19日(先週末)時点では、トップ5の上昇率が97.4%だったのに対して、その他の220が5.8%にすぎませんでした(グラフB参照)。日経平均株価の同期間の上昇率は26.9%だったのと比較すると、ほとんどの銘柄がそのパフォーマンスを大きく下回っていることが明らかになるというわけです。
日経平均株価は30年半ぶりの高値を付けているものの、個別銘柄を手掛ける個人投資家が意外に儲かっていない理由は、この歪んだ株価形成の構造にあります。これは、TOPIX(東証株価指数)や米国の主要株価指数であるS&P500でも、同じような傾向が見て取れます。
その結果として、日経平均採用の225銘柄のなかでは、ファーストリテイリングなどの値がさ株だけを保有していれば、もっとも成功していたといえます。しかし、値がさ株は購入しようとしても値が張るため(たとえば、ファーストリテイリング株を最小単位の100株購入しようとしたら、現時点で1000万円超の資金が必要になります)、一般的な個人投資家にとってハードルが非常に高いのです。
再び大きなチャンスが訪れるとすれば
それとは逆説的ですが、個人投資家のなかにも例年より大きな利益を得た人々が少なからずいます。それは、新型コロナ・ショックの初期(2020年3~4月)に株価が割安だと考えて積極的に買った投資家です。この時期に買っていれば、余ほど悪い銘柄選択をしないかぎり、平時より高いパフォーマンスがあげられたことでしょう(2020年3月16日の記事『新型コロナ・ショックの投資妙味』参照)。
そのうえで、テレワーク、Eコマース、巣ごもり消費、宅配などの関連銘柄に集中投資して、昨年中に利益を確定した投資家は、きっとパフォーマンスが並外れて高かったことでしょう。(もちろん、こういった投資家は一部にかぎられます。)
いずれにしても、「〇〇ショック」「〇〇危機」「〇〇バブル崩壊」と呼ばれるほどの事態では、株価は必要以上に下落することになるので、すべての投資家層にとって大きなチャンスとなりえます。2009年のリーマン・ショック期がそうでしたし、2012年の欧州債務危機時もそうでした。
個人投資家に再び大きなチャンスが訪れるとすれば、それは世界的に株価の大幅な調整が起こった時になるのではないでしょうか。その時が3か月後になるのか、半年後になるのか、1年後になるのか、それはわかりませんが、米国の株価動向や金融政策を睨みながら、次のチャンスに備えたいところです。