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新型コロナ・ショックの投資妙味

中原圭介経営アドバイザー、経済アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

日経平均株価のPBRは、1年を超えて1倍を割り込んだことがない

 今回のような歴史的な暴落相場では、PER(株価収益率)といったファンダメンタル指標や、騰落レシオといったテクニカル指標はあまり当てになりません。とくに騰落レシオは、これまで想像もしたことがない異常値が出現しました。

 私は「歴史的」と名の付く相場では、PBR(株価純資産倍率:PERと同じファンダメンタル指標)がもっとも適していると考えています。というのも、日経平均株価のPBRが1年を超えて1倍を割り込んだことはないからです。

新型コロナ・ショックの鍵を握る0.8倍という数字

 リーマン・ショックが起こる前の2008年以降から振り返ってみると、日経平均株価のPBRが1.0倍を下回った時期はいずれも短い期間(1年未満)でしかありません。そのなかでも0.9倍を下回った時期だけを拾ってみると、リーマン・ショック期(2009年)の0.81倍、欧州債務危機(2012年)の0.87倍、そして今回の新型コロナ・ショックの0.84倍(いずれも終値ベース:今回の新型コロナ・ショックは3月13日の終値で計算)の3回しかないのです。

 日経平均株価が3月13日の場中に付けた安値1万6690円(PBR0.8倍に相当)は、ほんの短い時間ではあるものの、リーマン・ショック期の終値ベース0.81倍を下回っていたうえに、場中の最安値ベース0.74倍に接近していました。まさに先週末は、100年に1度の大暴落といわれたリーマン・ショック期の最悪時の相場が、PBRのうえでは起こっていたというわけです。

 そういった意味では、PBRが0.8倍前後に当たる株価は買いで対応したいですし、0.8倍を下回る局面では0.7倍前後(日経平均株価で1万4600円前後)まで想定して買い下がるのが有効だと考えています。そのためには、目先の株価は無視して、1年後を見据えて買わなければなりません。これは、通常の投資家にとって恐怖心との戦いになります。

 それとは対照的に、リスクを取らずに安全策で行く場合、新型コロナの感染拡大が終息する見通しが立った時点で買えばいいでしょう。ただし、その時には株価が底値から相当上昇していることに留意する必要があります。

底値を形成するのはこれから

 今回の株価暴落の想定外には、原油価格の暴落がありました。サウジアラビアが自暴自棄になった(=同国は原油を減産すると言っていたのに、反対に増産することを決定した)結果ですが、これが日経平均株価をさらに2000円程度は押し下げたとみています。

 世界の株価を不安定にしている米国株式市場では、NYダウ平均株価が3月12日に過去最大の下げ幅を記録した後、翌日13日には過去最大の上げ幅を記録しました。しかし、NYダウ平均株価にしても日経平均株価にしても、これからの各国の財政・金融政策の効果、感染拡大の動向がはっきりしないと、底値を確認したとはいえません。

 おそらく、底値を確認するまでに、その過程では下へ向かう局面が何回かあるでしょう。日経平均株価が3月13日の安値を底に下値を切り上げていくのか、あるいは新しい下値を模索してくるのか、それは誰にもわからないことです。

 1年後には新型コロナ感染拡大が終息していると見越して、今から少しずつ行動を起こしてみてはいかがでしょうか。

経営アドバイザー、経済アナリスト

「アセットベストパートナーズ株式会社」の経営アドバイザー・経済アナリスト。「総合科学研究機構」の特任研究員。「ファイナンシャルアカデミー」の特別講師。大手企業・金融機関などへの助言・提案を行う傍ら、執筆・セミナーなどで経営教育・経済金融教育の普及に努めている。経営や経済だけでなく、歴史や哲学、自然科学など、幅広い視点から経済や消費の動向を分析し、予測の正確さには定評がある。ヤフーで『経済の視点から日本の将来を考える』、現代ビジネスで『経済ニュースの正しい読み方』などを好評連載中。著書多数。

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