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成功する人の「聞き方」、奪われる人の「聞き方」 ~傑作『LISTEN』を読み解く

横山信弘経営コラムニスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

■岸田流リーダーシップ「聞く力」について

第100代総理大臣に就任した岸田文雄氏は、みずからの長所を「聞く力」と明言した。偶然なのか。ケイト・マーフィ著『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』がベストセラーとなっている時期と重なった。だからこそ、多くの人がこの「聞く」という技術に注目しているのではないか、そう感じている。

理由は単純だ。

多くの人が不安を覚えているからだ。私は企業の現場に入って目標を絶対達成させるコンサルタントだ。現場に入るからわかる。人生100年時代、そしてVUCAの時代に突入し、さらに追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染症の影響が広がった。「平時」から「有事」に劇的転換し、外部環境が驚くほどのスピードで変化している。そんな未来が見えづらい時代になって、誰もが不安を覚えている。

だから誰かに話を聞いてもらいたい。言葉にならない内なる叫びを誰かに知ってもらい、言葉に変換してもらいたい。そう思っているのだ。

毎年年末に「今年読んだ本で、最もお勧めしたい書籍」を私のメルマガで紹介している。現時点では、ダントツにこの『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』が、多くの人にお勧めしたいビジネス書と言えよう。誰もが必要な汎用的なスキルを、わかりやすい文章で書かれている。

ただ、読むには覚悟が必要だ。ゆうに500ページを超える分厚い書籍だからだ。

そして私はこの本を読んで、ただ「聞く」といってもいろいろな種類があるし、相手を選ばないと、単なる時間の浪費。利己的な人の話を聞いても、害があるだけと結論づけた。人生の生産性を落としてしまうし、不幸になることも多い。

多くの国民もそう感じているだろう。

「岸田首相、聞く力は大事ですが、聞く相手を間違えないでくださいね」

と。

「聞く」とは相手を受け入れることではないし、もちろん相手に従うことでもない。相手の言い分を理解することでもないのである。

「私が言っていることをしっかり聞いてくれた」

「きっとあの人は私の考えを理解してくれたに違いない」

「だから私が期待したとおりに動いてくれることだろう」

と、こんな風に身勝手な解釈をする、先入観の塊のような人間の話は聞いてはならない。

では、どうすればいいのか? 今回はアダム・グラント著『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』をも引用しながら、

・成功する人の「聞き方」

・奪われる人の「聞き方」

について解説する。8,000文字に迫る大作である。ぜひ最後まで読んでもらいたい。

■そもそも「聞く」とはどういうことか?

何気なく使っている「聞く」という表現。そもそも「聞く」というのはどういう定義で捉えたらいいのだろう。まずは、この定義から明らかにしていきたい。

『LISTEN――知性豊かで創造力がある人になれる』には、

1988年当時の学者による定義が、

「聴覚刺激を受け取り、注意を払い、意味を付与するプロセス」

であったと、そして2011年には、

「対人という文脈における、情報の取得、処理、保持」

という定義に変わったと記されている。しかし私は、

「聴く」とは、相手の頭と心の中で何が起きているのかをわかろうとすること、そして「あなたを気にかけているよ」と行動で示すこと

という文章に惹かれた。なるほど。

たしかに相手の話を聞くことで、その人の歴史がわかる。注意深く聞けば聞くほど相手の素性が明らかになる。なぜなら、その人の思考パターン、思考プログラムに触れることになるからだ。

思考プログラムは、「過去の体験のインパクト×回数」でできている。

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経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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