コロナが音楽業界の創造性と経済面に与える影響
ノルウェーでは現在200人以上の集会やイベント行事は禁止されている。
ノルウェー政府のコロナ感染拡大防止対策が始まった3月12日以降、パンデミックが音楽業界にどのような影響を与えているか調査結果が発表された(BI Centre for Creative Industries レポート・ノルウェー語)。
新しい活動方法を試してはいるが
主な発見は
- フリーランサーや個人事業主の84%がパンデミックが理由で仕事がキャンセルされ、69%が仕事が延期となった
- フリーランサーや個人事業主の三分の一が、北欧以外の欧州で予定されていた案件がキャンセルとなった
- 88%の音楽関係企業が3月12日以降に予定されていた案件を失った
- コンサート・フェス主催者の20%が「スポンサーが撤退」、14%がスポンサーからの収入減を報告している
- 企業は前年度の収入の三分の一を上回る程度の損失を今年出している
- 62%のフリーランサーや個人事業主は、これまでとは違った方法で音楽活動をし始めた。22%のフリーランサーや個人事業主と13%の企業は結果として収入を得た
- 44%のフリーランサーや個人事業主はライブストリーミングに参加。そのうち四分の三が収入を得た
- 27%の企業がライブストリーミングを実施し、そのうち三分の二が収入を得た
- 75%のフリーランサーや個人事業主は「コロナ危機後も活動を続けていけるだろう」と考えているが、25%は「無理なのでは」と恐れている。最も心配をしているのは技術、マネジメント、ブッキングに携わる人々
- 22%の企業が倒産を恐れている
音楽のデジタル配信は短期的な解決策とはなるが、持続可能なビジネスモデルとしてはまだ程遠いことが分かる。
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音楽祭の大御所はどうした
北欧ノルウェーの音楽フェスの代表のひとつといえば「オイヤ」祭だろう。音楽を楽しむ会場にとどまらず、最先端の環境・気候対策でも注目を浴び続けている。
毎年8月になると首都オスロの中心部、ムンク美術館のすぐ側の敷地を貸しきり、街に賑やかな音と盛り上がりを届けていた。
オイヤ祭の広報ヨナス・プランゲルド氏に取材をして話を聞いた。
彼らは今、音楽祭の「これから」をどう見ているのだろう。
大勢が来場する従来のフェスの実行は不可能だと判断し、主催者側は小さなデジタルフェスを主催した。
プランゲルド氏「いつものフェスに来られなくなった代わりに、行う予定だったフェスのちょっとした空気を皆さんに届けたいと思いました。もともと多様なコンテンツが詰まったプログラムでもあったので、ひとりのアーティストをただ配信する以外のこともしたいと思ったんです」
デジタルフェスでは人気のEmilie Nicolas、これからの活躍が期待されるKamaraやMustiが登場。関係者の特別インタビューも盛り込まれた。
大御所のSondre LercheとAURORAの特別コラボ曲も披露された。AURORAはディズニー映画『アナと雪の女王2』でエルサを導く不思議な声役としても参加、日本語でもネット検索すると情報がヒットする注目歌手だ。
来年がどうなるかわからない
あぶみ「これからの音楽コンサートの未来をどう見ていますか?」
プランゲルド氏「2021年にコンサート業界がどうなっているかを予想するのは難しいですね。ノルウェーでは最高200人までという上限を守りながら一部の主催者はイベントを行っています。けれど、それ以上の規模のものが可能かとなると分からない。来年にオイヤ祭を実現したいとは思っていますが」
あぶみ「イベントのデジタル化で新しい観客にリーチすることは可能ですか?これからもデジタル配信をしていこうと思いますか?」
プランゲルド氏「今回の配信はすでにチケットを購入してしまった人々を主にターゲットにしていました。新しいデジタル解決法を探ることも可能ではありますが、正直なところ、私たちが実際にしたいのは観客と対面で行われる屋外コンサートです」
あぶみ「政治家から十分な経済的サポートは得ていますか?」
プランゲルド氏「ちょうど今も政府の対応を待っているところです。ある程度の金銭的援助があることは決まっていますが、その額はまだ明確にできる段階ではありません」
あぶみ「コロナ渦でイベント主催者はどのように生き残ろうとしているのですか?」
プランゲルド氏「その答えを出すまでには、まだまだ時間がかかるでしょう。来年にはもっと明確に答えられると思います。ウイルスの影響で2021年にはどのような対応が必要かにもよるでしょうね」
「ここ数か月の間、多くの主催者はスタッフを一時的に解雇しなければいけませんでした。収入が減っていますから。観客数の規制がこれからあと数か月は続くとしたら、倒産の不幸な知らせは残念ながら増えるでしょう」
ノルウェーでも先行が不安な音楽業界。現地では業界関係者が政府に支援を求め続けながら、それぞれが生き残る手段を模索している。
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Text: Asaki Abumi