「健康菜食」志向で快適な眠りを実現?6千人の10年観察データで明らかに【最新情報】
こんにちは、
今回も最新の医学論文をご紹介します。取り上げるテーマは「不眠症」。これを食事で予防できるかもしれないという論文です。
40〜60歳の5人に1人は不眠症?
それはさておき、「不眠症」とは何でしょう?厚生労働省の解説によれば、「夜間の不眠が続き」「日中に精神や身体の不調を自覚して生活の質が低下する」、この2つを満たす場合、「不眠症と診断され」るということです。
これ、当てはまる人は多そうですね。
事実、厚生労働省による「令和元年国民健康・栄養調査」では、40~60歳男女の約2割が「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」と回答し、4人に1人が「睡眠全体の質に満足できなかった」と答えています。さらに4割前後は「日中、眠気を感じた」ということでした。
この数字から見ると、40〜60歳の約2割、つまり5人に1人は不眠症の疑いがあることになります。
食事と不眠症の関係を6千人で調べてみた
この不眠症と食事に関係があるのではないかと考えたのが、国立台湾大学のズオ・ホア・ガン氏たちでした。
そこで同氏たちは、台湾在住で不眠症のない5千821名を対象に研究を始めます。全員の食生活を詳細に聞き取った上で長期間にわたり観察し、認知症を発症したかどうかを調べました。発症した人としない人では食生活が違うはずだと考えていたのです。
その結果、調査後10年間弱の間に8%の人たちが「認知症」と診断されました。
そして食事と不眠症の関係を調べてみると、ベジタリアンの男性ではそうでない男性に比べ認知症になるリスクが53%も減っていました(0.47倍)。女性も同様でベジタリアンでは29%のリスク減少を認めました(0.71倍)。
やはり食事によって認知症になるリスクは異なっていたのです。
「なんだベジタリアンの話か」とがっかりしたあなた、それだけではありません。
「健康菜食」指数という指標に着目
男性では「健康菜食指数」(下記参照)という指標のポイントが高いと、低い人たちに比べ、不眠症になるリスクが極めて低くなっていました。
すなわち「健康菜食指数」ポイントの低い群から高い群に、各群の人数が同じになるよう4群に分けると、ポイント最高群の人たちは最も低い群の人たちに比べ、不眠症になる確率が半分になっていたのです。
つまり「健康菜食」志向が強かった男性は、不眠症になりにくかったのです(ただし、残念なことに女性ではこのような関係を認めませんでした)。
=健康菜食=(健康度高)
全粒粉(含ポップコーン)、果実、野菜(含トマトジュース)、ナッツ(含ピーナッツバター)、豆類(含豆腐)、植物油、お茶・コーヒー(!?)
=菜食=
フルーツジュース、精製穀物、ジャガイモ、砂糖含有飲料、菓子類
=動物性食品=(健康度低)
脂肪、乳製品、卵、海産物、肉、その他(ピザ、ドレッシングなど)
[出典:Satija A et al. Plos Med 2016;13:e1002039]
この論文は「欧州臨床栄養学雑誌」という学術誌に12月11日付けで掲載されました [文末文献1]。発行元はあの「ネイチャー」と同じです。
健康菜食がメラトニンやセロトニンを増やしていた可能性も
もちろんこの結果だけでは、健康菜食志向そのものが不眠症のリスクを下げていると断言はできません。健康菜食志向の強い人たちに共通する何か別の因子が、不眠症を遠ざけている可能性もあるからです。
しかしガン氏たちは不眠症リスクを下げたのは菜食だと考えているようです。
というのも「健康菜食群」に含まれる食材はトリプトファンを豊富に含んでいるからだといいます。
トリプトファンはメラトニンやセロトニンの原料。そしてメラトニンは体内時計を調節し [厚生労働省e-ヘルスネット] 、セロトニンは精神を安定させてくれます [厚生労働省e-ヘルスネット] 。いわゆる「幸せホルモン」ですね。
トリプトファンが増えることにより、これらのホルモンも増加すると考えられるのです。
「健康菜食」志向が強いと体内時計がリセットされ、幸せホルモンが心を落ち着かせる、だからぐっすり眠れるのだ、という理屈です。
なんとなく、うなずきたくなりますね。
最後に
いかがでしたか?「健康菜食」志向の食事をとる男性では不眠症になるリスクが低かった、そして女性もベジタリアンは不眠症のリスクが減っていた、という論文でした。
今、うまく眠れない人にも当てはまるかは不明ですが、もし睡眠で困っていたら、少しだけ「健康菜食」を意識してみませんか?それで熟睡できたら儲けものです。
「健康菜食」志向でセロトニンやメラトニンが増えるのであれば、女性もトライして損はないはずです。
食事については以下のような論文紹介記事も書いています。こちらもぜひ、お読みください。それではまた!
今回ご紹介した論文
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【注意】本記事は最新の医学論文についての紹介あり、研究結果の内容の文責は「論文筆者」にあります。また論文の解釈は論者により異なる可能性もあります。さらにこの論文の内容を否定する論文が存在する可能性もゼロではありません。あくまでも見解形成の「参考」としてご覧ください。