「これって5月病?」セルフチェックと7つの回避法を心療内科医が解説
4月に環境が変わって、何となく調子が悪かったりしていませんか?
「この症状って5月病なのかな?」と思っても、5月病にみられる症状がわからない人も多いと思います。
そこで、気になる症状が5月病にみられる症状かどうかをチェックしてみましょう!
また、自分が5月病になりやすいかどうかも確かめることができます。
記事の最後には「5月病にならないための7つのポイント」を紹介していますので、参考にしてみてください。
5月病にみられる症状のチェックリスト
4月に入学や入社や異動などで環境が変化した人たちは、5月の連休後がちょうどストレスによる心身の不調をきたしやすい時期になります。
そのため5月病では、さまざまな症状が出てきます。
以下に、ストレスによって出現する症状のチェックリストを示します(健康調査票Kyudai Medical Index; KMIより一部抜粋)。
あてはまる項目が多ければ、5月病の可能性が高くなり、あてはまる項目が少なくても5月病の予備軍になります。
ストレスによって出現する症状のチェックリスト
【精神症状】
- 集中力が落ちた
- 何をしても楽しくない
- 気持ちが落ち着かない
- ちょっとしたことでイライラする
- 怖い夢をよくみる
- 自分に自信がもてない
- 自分が悪いことをしたように感じる
【身体症状】
- 眠れない
- 食欲がない
- 疲れやすい
- 何をするにもおっくうである
- 頭が重い感じがある
- 首や肩がこる
- めまいがある
- はき気がする
- 手足が冷える
- 耳鳴りがある
- 物音に敏感である
- しびれがある
- のどがつまった感じがある
- 動悸がある
- 胸の圧迫感がある
- 急に体が熱くなる
- 急に汗が出る
- 目が乾く
- 微熱がある
5月病とは?
4月に大きな環境の変化があった人だけでなく、新年度に学校のクラス替えがあった人や一人暮らしを始めた人なども、5月になると先ほど示したさまざまな症状が出てくることがあります。
このように4月に環境の変化があり、5月に心身の不調が出てくる状態を一般に“5月病”と呼びます。
5月病は、医学的な病名ではありませんが、誰にでもよく起こる症状がみられるため、一般的によく使われる言葉です。
5月病になる原因は?
だれでも新しい環境に対しては、期待と不安・緊張を持つものです。
その新しい環境はストレスになるため、緊張状態が続いたり、無理して頑張ったりしていると、いつの間にか疲れがたまっていたり、何もやる気が起こらなくなったりします。
入学すること、転校すること、仕事が変わること、昇進して職場での責任が変わること、労働条件が変わること、転居することなどは、すべてストレスになることが示されています(J Psychosomatic Res. 1967; 11:213-218)。
そのほかにも、新しい職場や学校で、嫌な出来事があったり、人間関係のトラブルがあったり、忙しくなったりすることなどもストレスになります。
最初の頃(4月頃)はストレスに対する抵抗力があって、ストレスにうまく対処できますが、ストレスが持続すると、ストレスに対する抵抗力が弱まり、ある時点(5月の連休明け頃)から体調が悪くなって、さまざまな精神症状や身体症状が出てきます。
5月病になる人の共通点
5月病になりやすい人には、いくつか共通点があります(ストレス関連疾患の危険因子と筆者の経験的知識より)。
以下に7つの共通点(代表項目)を挙げています。
7つの代表項目だけでなく、それぞれの代表項目の下に記載している小項目のどれか一つでも当てはまる人は要注意です(例えば、「睡眠時間が短い」の1つだけでも)!!
①生活習慣の乱れがある
- 睡眠時間が短い
- 寝ても疲れが取れない
- あまり食事がとれていない
- 生活が不規則である
②過活動傾向である
- 活動的である
- 自分が何もしていないと落ち着かない
③まじめで、頑張り屋さんである
- まじめである
- 頑張っている
- いつも気を張っている
- 責任感が強い
- 完璧主義である
④過剰適応傾向である(過剰適応についての詳細は、過去の記事を参照してください)
- 自分の気持ちを抑えて言いたいことが言えない
- 自分より相手を優先してしまう
- 自分を責めてしまう
⑤神経質傾向である
- 人から言われたことや自分が言ったことをいつまでも気にしてしまう
- 繊細で敏感である
⑥ネガティブな気持ちになることが多い
- 過去の言動を思い出して後悔したりイライラしたりする
- 未来のことを考えて不安になる
- 悪い方に考える
⑦人間関係が苦手である
- コミュニケーションがうまく取れない
- 人間関係がうまくいかない
- 周りの人にわかってもらえない
5月病にならないための7つのポイント
一般的なストレス対処法として、お酒を飲んだり、おしゃべりしたり、旅行に行ったりといったものが挙げられますが、これらの対処法は疲れがたまっている場合には、あまりお勧めできません。
「疲れが残っているのは体力が落ちたからではないか?」と考えて、運動する人がいますが、ますます体調が悪くなる場合には、逆にしっかりと睡眠と休養をとって、活動量を制限する必要があります。
さきほどの7つの“5月病になりやすい人のそれぞれの共通点”に対して、以下の5月病にならないための7つのポイントを実践することが重要です(ストレス関連疾患の科学的根拠のある治療法と筆者の経験的知識より)。
①生活習慣を改善させる
- しっかりと睡眠と栄養をとる
- 次の日に疲れが残らないようにする
- 可能な範囲で生活のリズムを整える
②活動量を制限する
- 翌日以降に疲れが残らない程度に活動量を制限する(勉強や仕事の量だけでなく、スマホやゲームやテレビの時間も)
- “何もしないこと”に慣れる
③頑張り過ぎないようにする
- 手を抜いてもいいところは手を抜く
- あまり頑張りすぎないように心がける
- リラックスできる時間を作る
- 自律訓練法などのリラクセーション法を用いる ⇒ 自律訓練法について詳しく知りたい人はこちら(外部リンク)
- 一人で抱え込まないようにしてなるべく人に頼る
- 完璧を求めない
④過剰適応にならないようにする
- 相手を不快にさせないように自分の言いたいことを言う(アサーション)⇒ アサーションについての詳細は、過去の記事を参照してください。
- 相手だけでなく自分も大切にする。
- 自分を必要以上に責めない(私はOKである、あなたもOKである)⇒ “私はOKである、あなたもOKである”についての詳細は、過去の記事を参照してください。
⑤神経質傾向を改善させる
- 人から言われたことや自分が言ったことを気にしない
- マインドフルネスをやってみる。マインドフルネスについて詳しく知りたい人はこちら(外部リンク)
⑥ものごとを客観的に(第三者的な立場で)とらえることができるようにする
- 認知療法を用いて状況を客観的にみることができるようにする ⇒ 認知療法について詳しく知りたい人はこちら(外部リンク)
⑦対人関係のスキルを上げる
- あいさつをする
- 相手の意見を否定しない
- 自分の考えを押し付けない
- 相手の話をしっかりと聞く
- 気をつかい過ぎない程度に、相手の気持ちを推察しながらコミュニケーションを取る(メンタライゼーション) ⇒ メンタライゼーションについて、詳しく知りたい人はこちら(外部リンク)
まとめ
5月病によくみられる症状、5月病の原因、5月病になりやすい人の共通点、および5月病にならないための7つのポイントについて解説しました。
自分で対処できない場合には、周りの人たちや医師などの専門家に相談するようにしましょう!
また、ストレス以外でも体調不良を起こす場合がありますので、気になる方は医療機関を受診するようにしてください。
そのほかにも、心身の不調で日常生活に支障が出ている場合には医療機関を必ず受診するようにしてください。
5月病にならないための7つのポイントは、ほとんど自分で実践できること(セルフケア)になります。
今回紹介したセルフケア以外について、もっと知りたい方は、自律訓練法(外部リンク)やマインドフルネス(外部リンク)や認知療法(外部リンク)やメンタライゼーション(外部リンク)の関連記事を読んでみてください!
自分に合ったセルフケアで、5月病にならないように気をつけて、充実した人生になることを願っています。