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たったの30秒でできるストレス対処法とは?【心療内科医がマインドフルネスをわかりやすく解説】

過去の出来事を何回も考えてイライラしたり、将来のことを何回も考えて不安になったりすることは、ありませんか?
だれでも、つい過去や未来のことについて考えていることがあり、そのことを繰り返して考えてしまって、思い悩むことがよくあります。
そんな時には、その思い悩んでいることをあるがままに受け止めて、自分自身の思いや感情にとらわれないようにできればいいのですが、それが難しいから思い悩んでしまうことになります。
でも、マインドフルネスと呼ばれるストレス対処法の練習を継続することで、そこをうまくコントロールすることができるようになってきます。
今回は、そのマインドフルネスについて、わかりやすく解説します。

「マインドフルネス」って何?

日本マインドフルネス学会では、マインドフルネスとは、

今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、 評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること
(https://mindfulness.jp.net/より)

と定義しています。

「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向ける」という部分はわかると思いますが、「評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」の部分はわかりにくいと思います。
評価をしない」とは、「ものごとをあるがままに受け止め、自分自身の考えや価値観で判断しない」ことです。
また、「ただ観る」とは、意図的に目を向けて、ありのままに客観的に観察する」ことです。

普段、私たちは、体の状態や周囲で起こる出来事に対して無意識のうちに自分なりに解釈(自分の考えや価値観で判断)するため、さまざまな思いやそれに伴う感情が出てきます。
その感情がイライラや不安などの不快な感情の場合には、その思いや不快な感情が頭の中でぐるぐると繰り返し出てきやすくなり、その思いや感情にとらわれてしまいます。
その無意識のうちに出てくる思いや感情のために、現実をあるがままに受け取ることが難しくなったり、 誤解してしまったり、苦しみが続く原因になったりします。
そのため、評価をしないことで、これらの思いや感情が繰り返し出てこない状態(とらわれない状態)になれます。

マインドフルネスを一人で行わない方がいい人とは?

まれにマインドフルネスを行うことで調子が悪くなる場合があります。
例えば、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の患者さんでは、マインドフルネスを行うことで嫌な気持ちが出てくる場合があります。
マインドフルネスの治療に精通した治療者と一緒に行う場合には、問題ありませんが、一人で行う場合には危険を伴います。
そのため、医療機関に通院中の方は、主治医と相談の上、マインドフルネスを行うようにしてください。
万が一、マインドフルネスを行うことで、嫌な気持ちが出てくる場合には、ずぐに中止して、必ず医療機関で相談してください。
そのほかに、マインドフルネスの治療に精通した治療者と一緒でない場合には、目を完全に閉じた状態でマインドフルネスを行わないようにしてください。

マインドフルネスのやり方

マインドフルネスには、いろいろ種類があります。
その中で、いつでもどこでもできるマインドフルネスに、マインドフルネス呼吸法があります。
そのほかにも、歩く時に行うマインドフルウォーキングや食べる時に行うマインドフルイーティングなど、日常生活の中でマインドフルネスを実践することができます。
それぞれのマインドフルネスのやり方について簡単に説明します。

マインドフルネス呼吸法

マインドフルネス呼吸法では、呼吸に意識を向けます。
すわった状態でも寝た状態でもかまいませんので、息をはいていることや吸っていることに意識を向けましょう。
すわる場合には、背筋を伸ばした状態でイスにすわるか、正座またはあぐらをかいてすわります。
目は完全に閉じないように薄目にして、呼吸や呼吸に伴って変化する体の状態に意識を向けます。
あるがままの状態を感じ、何の判断もしないで、ただすわっているようにします。
胸やおなかが呼吸に伴ってふくらんだり、しぼんだりする感覚を感じましょう。

しばらくすると、呼吸から意識がそれて、何かほかのことを考えてしまうと思います。
何かほかのことを考えていたら、再び呼吸に意識を戻します。

ほかのことを考えてしまって、それに伴って不快な感情が出てきて、そのことにとらわれてしまうようであれば、川の上流から葉っぱが流れているところをイメージして、その考えや感情をその葉っぱの上にそっと置いて下流に流してみましょう!

ほかのことを考えていたら、今現在、この場所における、自分の感情や体の感覚に気づくことができません。
自分の感情や体の感覚に気づかなければ、自分の心や体からのサインを受け取ることができなくなってしまいます。
例えば、無意識に不安がある人の多くは、自分の体の筋肉に緊張があることに気づくことができていません。
呼吸に意識を向ける練習を続けていくうちに、体の緊張だけでなく、自分の中にある不安に気づくことができるようになり、その体の緊張や不安を、あるがままに受け入れることができるようになってきます。

マインドフルネス呼吸法以外のマインドフルネス

呼吸以外に、日常生活の中で、体の感覚や心の状態に意識を向けるマインドフルネスがあります。代表的なものにマインドフルウォーキングとマインドフルイーティングがあります。
マインドフルウォーキングは、歩いている時に地面に触れている足の裏の感覚に意識を向ける練習になります。
マインドフルイーティングは、食べる時に、ゆっくり食べながら、見た感じや香りや舌で感じる味や触感や温感に意識を向ける練習になります。

そのほかに、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)だけではなく、悲しい時には悲しい、さみしい時にはさみしいという感情に意識を向けてみましょう。
ストレスフルな出来事があった時には、その時の体の感覚や頭に浮かんだ考えや感情に意識を向けてみましょう。
その時には、それらの出来事や思いや感情が良いとか悪いとかの判断をしないで、あるがままを受け入れるようにしましょう!

30秒からできるマインドフルネス

毎日10分でもいいので、マインドフルネス呼吸法などのマインドフルネスを試してみましょう!
10分も時間がない人は、3~5分から始めてみてください。
3分もできない人は、30秒や1分など短い時間からでも効果が出てきます。

まとめ

マインドフルネスの定義、危険性、やり方をわかりやすく説明しました。
日常の中で、体の感覚や心の状態に意識を向ける練習をしてみましょう!
マインドフルネス呼吸法、マインドフルウォーキング、マインドフルイーティングなど自分に合ったマインドフルネスを短い時間からでもいいので、始めてみてください。
きっと、マインドフルネスを継続することで、ストレスを減らすことができるようになります。
マインドフルネスについて詳しく知りたい方は、マインドフルネスに関する書籍を読んで実践してみることをお勧めします。

<参考文献>

マインドフルネスストレス低減法, ジョン・カバットジン, 北大路書房, 2007

心療内科専門医・総合内科専門医のよっしーです。心療内科医として20年以上、大学病院で15年以上患者さんを診察してきました。大学では教授として研究や学生の教育も行っています。より多くの人たちのお役に立てるような心と身体の情報を発信しています。健康な人にとっても病気の予防にも役に立つ効果的な治療法(セラピー)の情報やその実践法についてもわかりやすく解説しています。

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