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群衆の力と効果と危険性:ソウル群衆雪崩事故から

碓井真史社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC
写真はイメージ:大勢が集まれば良いことも悪いことも(写真:アフロ)

■大勢の人が集まる:集団と群衆

「群衆」というと、それだけで何かネガティブな感じがしますが、人が集まることは、基本的には良いことです。大人数が集まることも、良い効果があります。

人は原始の時代から、集団で生きてきました。家族で暮らし、いくつかの家族が集まって生きてきました。サルや象と一緒です。さらにサルや象以上に、私たちは助け合って生きてきました。それが人類の強みです。

人間の赤ん坊は、他の哺乳類よりもずっと弱い姿で生まれます。それなの、年子も生まれます。次々産むこともできます。それを可能にするのは、子育ても助け合うからです。チンパンジーは、こうは行きません。授乳中は妊娠しないようにできています。

現代社会では、母子家庭でも生きていきます。社会として助け合うシステムを作ったからです。それでも、人はみんなで集まりたがります。混雑は嫌ですが、ガラガラも気持ち悪いでしょう。

大勢が集まると、私たちは嬉しくなったり、力強さを感じます。プロスポーツの試合や、コンサート会場、仲間の集まり、大勢の人が集まるとワクワクします。

人が集まり、「集団」を作ります。集団には、目的があり、秩序があります。リーダーがいたり、ルールがあったりします。

「群衆」は、偶然集まった大勢の人々です。組織化されておらず、正式なリーダーはいません。ルールも曖昧です。最初は統制された集団だったのに、何かのきっかけで混乱が起き、集団が群衆になってしまうこともあります。

群衆を、「行動的群集」「偶発的群集」「慣習的群集」「表出的群集」の4類型に分けることもできます。群衆が、攻撃的暴力的になると、暴衆とか乱衆とよばれます。こうなると、暴徒化したり、パニックが起きたりするわけです。

人が集まることは必要。人が集まることは必然。人が集まれば、素晴らしいことも起きますが、危険なことも起きてしまうのです。

■群衆が多人数であるゆえの危険性

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社会心理学者/博士(心理学)/新潟青陵大学大学院 教授/SC

1959年東京墨田区下町生まれ。幼稚園中退。日本大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。精神科救急受付等を経て、新潟青陵大学大学院臨床心理学研究科教授。新潟市スクールカウンセラー。好物はもんじゃ。専門は社会心理学。テレビ出演:「視点論点」「あさイチ」「めざまし8」「サンデーモーニング」「ミヤネ屋」「NEWS ZERO」「ホンマでっか!?TV」「チコちゃんに叱られる!」など。著書:『あなたが死んだら私は悲しい:心理学者からのいのちのメッセージ』『誰でもいいから殺したかった:追い詰められた青少年の心理』『ふつうの家庭から生まれる犯罪者』等。監修:『よくわかる人間関係の心理学』等。

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