眩暈(めまい)という漢字は使えない!表記の仕方は?【記者的言葉解説】
突然ですが、みなさんは目まいの経験はありますか。
筆者は、学生時代と社会人時代に「突発性難聴」を経験し、長女を出産した7年前からは頻繁に回転性の目まいに襲われるようになりました。「三半規管が弱いのかなぁ……」と思っていたのですが、耳鼻科や脳外科を受診すると、「良性発作性頭位めまい症」と言われました。天井がくるくると回転し、そのせいで立つこともできず、酔ってしまうほどの目まいです。
しかし、7年もこの目まいと付き合っていると、「そろそろ来るぞ」というのが分かるようになりました。筆者の場合は、疲れが溜まった時や、寝不足の時、天気が下り坂になる時に、フワフワした目まいから始まることが多いです。この”フワフワ”状態の時にしっかり眠ったり、頭や首を動かさないようにすれば、くるくる回転する前に回復することが多いです(※あくまでも筆者の場合)。
なぜ、こんなことを書いているかというと、まさに今朝、フワフワ目まいに襲われたからです。しかも今回は耳鳴りまで発生しているので、いろいろなスケジュールを調整して、体を動かさないようにして過ごしています(座っていれば耳鳴りだけなので、こうして記事を書いております)。
さて、ここまでの文章で、お気づきでしょうか。「めまい」という書き方が2種類あることを――。
そうです。「目まい」と「めまい」という書き方をしています。そして、おそらく多くの方がイメージする「眩暈」や「目眩」という漢字は使用していません。この漢字は、ニュース記事でも使われることはほとんどありません。
この記事では、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。今回は『めまい』についてご説明します。知ればニュースを読むのが「ちょ~っとだけ楽しくなる」かも……しれません。(構成・文=コティマム)
「眩」も「暈」も常用外漢字
「めまい」という言葉は漢字で眩暈、目眩と書きますが、ニュースなどの原稿では基本は「目まい」と書きます。
記者たちが原稿を書く際に使用する記者ハンドブックや用事用語辞典では、「常用外漢字は使わない」「難しい(読みづらい)漢字は平仮名に直す」などのルールがあります。
記者ハンドブックでは、
と示されています。
「くらむ」や「”めまい”そのもの」を表す「眩」と「暈」の字が常用外漢字なので、記事に書く際は使えないのです。基本的に、読みづらい漢字や分かりづらい漢字は平仮名に直すので、「めまい」と平仮名で書いても正解です。先ほどの「良性発作性頭位めまい症」は、めまいの部分が平仮名になっていますね。
「良性発作性頭位めまい症」の場合は、「めまい」以外の言葉が漢字になっているので、平仮名だと分かりやすく目立ちます。
常用外漢字を平仮名にすることで読みづらくなることも
しかし文章の中で平仮名表記が続くと、少し読みづらくなることも。例えば
・今朝からめまいがする
・いきなりめまいがして倒れた
・動けないほどのめまいで会社を休んだ
など文章で読んだ時、特に平仮名と並んだ場合は、「めまい」という言葉が埋もれてしまいますよね。「からめまい」や「りめまい」「どのめまい」など、読み間違えてしまう可能性もあります。
読みやすい文章にするために、「読みづらい漢字を平仮名に直している」にもかかわらず、平仮名にすることで逆に読みづらくなる場合も結構あります。記者たちもルールにのっとって原稿を書きながら、「逆に読みづらいよね」と感じていることもあるのです(例えば外来語の「マネジャー」や「ジャージー」などの表記。こちらもいつか解説します)。
「めまい」の場合は、「目」は常用漢字で使えますので、記者ハンドブックでも「目まい」という書き方になっています。漢字が一文字入れば、
・今朝から目まいがする
・いきなり目まいがして倒れた
・動けないほどの目まいで会社を休んだ
と、文中で「めまい」が埋もれません。逆に先ほどの「良性発作性頭位めまい症」は、「めまい」の前後が漢字なので、「良性発作性頭位目まい症」だと、少し読みづらいかもしれません。
平仮名の「めまい」も漢字を使った「目まい」もどちらも使用できますが、前後の文章に合わせて対応していきます(ただし、記事の地の文で”表記の揺れ”があるのはNGです。地の文の1行目が「めまい」なのに、5行目は「目まい」だと、どちらかに揃えることになります)。
まとめ
普段何気なく読んでいるニュース記事は、多くの“言葉のルール”にのっとって書かれています(この『のっとって』も漢字表記ではなく、平仮名書きという表記ルールがあります)。
筆者は、普段の取材記事の中では「めまい」という言葉を使う機会があまりないのですが、見慣れている「目眩」や「眩暈」という漢字も、ニュース記事などでは使われることはあまりないのです。
今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。ちなみに、今回の記事内で使用した『かかわらず』という言葉についても、『【記者的言葉解説】『関わらず』って書いていませんか? 実は、間違いです!』で解説していますので、チェックしてみてくださいね。
言葉に関する記事については、『【記者的言葉解説】『太郎』『太朗』『祐介』『裕介』―記者泣かせな漢字たち』もご覧ください。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。