『関わらず』って書いていませんか? 実は、間違いです!【記者的言葉解説】
普段の生活の中で、『~にもかかわらず』という言葉、使ったことがありますよね。ブログやSNSなどの文章の中でも、書くことがあると思います。その際、漢字で『関わらず』と書いていませんか。
実はこれ、漢字で書いてしまうと、意味的に間違っているのです。
この記事では、執筆記事1万本以上、取材経験5000回以上の元テレビ局芸能記者で現・フリー記者のコティマムが、『ニュース記事に使われている何気ない言葉』を解説。今回は『かかわらず』という言葉についてご説明します。知ればニュースを読むのが「ちょ~っとだけ楽しくなる」かも……しれません。(構成・文=コティマム)
逆説の意味で使用する『かかわらず』
『かかわらず』を使用する時の文章は、「〇〇すると自分が言ったにもかかわらず、忘れていた」や、「大雨だったもかかわらず、そのイベントには人が集まった」など、逆説の意味で使用しますよね。「~だったけど、~だった」という使い方です。
上の写真は、筆者の小学2年生の娘が使っている『小学新漢字辞典』(全家研)です。『関』という字は、読み方としては確かに「かかわる」と読めます。「関係する」「関連する」という意味での「かかわる」です。この「関係・関連」や「関与」を否定する場合は、「関係・関連しない」「関与しない」「関わらない」となりますよね。この使い方は正解です。
しかし、「~にもかかわらず」は、「関係・関連していない、関与していない」という『関わることへの否定』ではありません。「~していたのに、しかし、~しなかった」「~だったのに、しかし、~だった」という逆接の意味になるので、「『関係』という意味での『かかわる』の否定」ではないのです。
そのため、逆接の意味で「かかわらず」を使う時は、『関わらず』ではなく、『かかわらず』と書きます。
そもそもの意味が違うから『関』が使えない
記者たちが原稿を書く際に使用する記者ハンドブックや用事用語辞典では、「常用外漢字は使わない」「難しい(読みづらい)漢字は平仮名に直す」などのルールがあります。例えば『真面目』は『まじめ』、『抜擢』は『抜てき』または『抜擢(ばってき)』などと書いています。
しかし今回の『かかわらず』は、常用外漢字や「読み方が難しい」という配慮で平仮名にしているのではなく、そもそもの意味が違うため『関』の字が使えないのです。上の写真は記者ハンドブック(共同通信社)の内容で、
とされています。
また、下記は筆者が以前使用していた『朝日新聞の用語の手引き』(朝日新聞出版)ですが、こちらにも
と書かれています。
実は筆者も芸能記者になったばかりの頃は間違えていて、デスクや編集長から「逆接の『かかわらず』は平仮名だよ」と指導されていました……。
つまり、
○ 危ない人には関わらずに、距離を置こう
という使い方で「関」を漢字にするのは正解ですが、
○ 「静かにして」と頼んでいるにも関わらず、どんちゃん騒ぎは続いた
という使い方は間違いです。
○ 「静かにして」と頼んでいるにもかかわらず、どんちゃん騒ぎは続いた
が正しい書き方になります。ニュース記事でも逆接の際は「かかわらず」と書かれているので、チャックしてみてくださいね。
まとめ
普段何気なく読んでいるニュース記事は、多くの“言葉のルール”にのっとって書かれています(この『のっとって』も漢字表記ではなく、平仮名書きという表記ルールがあります)。
『かかわらず』という言葉は、みなさんも日頃から、ブログやSNS、小論文やレポートなどの文章でも書くことがあると思います。その際は、漢字ではなく平仮名で書いてくださいね。今後も記者目線で、「ちょ~っとだけタメになる(?)」言葉解説をつづっていきます。
言葉に関する記事については、『【記者的言葉解説】ニュース記事で書かれる『熊』は『クマ』 片仮名表記にする理由は?』もご覧ください。※スマホからご覧の方は、プロフィールからフォローしていただくと最新記事の見逃しがなくおすすめです。