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日本一パン食べる都市は?今日からパリ最高パン屋賞受賞店出店パンフェス「捨てないパン屋」全国に広げよう

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

食の世界では流行りすたりがあるが、「パン」は、話題にのぼらない年などないようだ。最近の流行りは「高級食パン」だろうか。

そんなパンを、最も購入している都市はどこだろう。

総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(平成27年(2015年)~29年(2017年)平均)を調べてみた。

※ 2010年4月1日現在で政令指定都市であった都道府県庁所在市以外の都市(川崎市,相模原市,浜松市,堺市及び北九州市)

購入量は京都市がナンバーワン!

まず購入量(g:グラム)で見てみる。

1、京都市 58,377

2、堺市  55,958

3、大津市 55,591

4、大阪市 54,816

5、岡山市 54,584

6、神戸市 54,016

7、奈良市 52,901

8、名古屋市51,599

9、松江市 51,502

10、広島市 51,333

(全国平均 45,205)

京都市がダントツトップ。ラーメン(中華麺)に関しては東北・北陸など北が多いようだが、こうしてみると、西日本が多い。

では次に購買金額(円)を見てみる。

金額でも京都市がトップ!

1、京都市 38,915

2、神戸市 38,179

3、岡山市 36,900

4、堺市  36,855

5、大阪市 36,355

6、大津市 36,097

7、奈良市 35,149

8、広島市 34,584

9、横浜市 34,505

10、福岡市 34,156

金額でも京都市がトップ。

パンの支出が多い都市。総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(平成27年(2015年)~29年(2017年)平均)(総務省統計局HPより)
パンの支出が多い都市。総務省統計局の家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(平成27年(2015年)~29年(2017年)平均)(総務省統計局HPより)

くしくも、京都市のジェイアール京都伊勢丹では、本日2月27日から3月4日まで「パンとコーヒーのある暮らし パンフェスティバル」が開催される。今回で5回目となるこのパンフェスティバルも、京都市民がパン好きであることが背景にあるのだろう。2011年にパリ最高パン屋賞を受賞し、2013年には「パリで最も美味しいクロワッサン」で3位に選ばれたブーランジェリーも出店するそうだ。

フランス・パリの風景(筆者撮影)
フランス・パリの風景(筆者撮影)

量では上位10位に入っていなかった横浜市(量で13位)や福岡市(量で12位)が入っている。逆に、量では10位以内に入っていた名古屋市(金額13位)や松江市(金額で17位)は入っていない。

量・金額ともに、西日本が多いようだ。

フランス・パリで販売されるサンドウィッチ(筆者撮影)
フランス・パリで販売されるサンドウィッチ(筆者撮影)

商売上のパンは廃棄が多い

一方、商業ベースで販売されるパンは、野菜などの生鮮食品や乳製品、大豆製品などと並び、廃棄が多い代表格の一つだ。

全国展開しているコンビニやスーパーしかり。スーパーの方が見切り(値引き)販売をするから、その分、廃棄は減るだろう。

個人が家庭用に購入するパンだけでなく、ホテルのビュッフェなどでも、パンは、切って置いておくと乾燥してくるので、廃棄となる。中にはリサイクルで家畜の餌や植物の肥料(堆肥)に活用している企業もあるが、全てではない。人に食べてもらうために、生産者や調理者が汗をかいて作ったものだから、本来は、リサイクルの手前で出来るだけ留める方がいい。

「パンは廃棄が多い」の根拠は、主に3点ある。

1、当事者が自ら語る

パンの商売に関わる当事者である大手パンメーカーやコンビニ、スーパーなどで働く社員やパート・アルバイト、個人商店の方などが、自ら話している。

定期的に大学生にアンケートをとってみると、飲食系でバイトしている割合は過半数を超えている。そして、必ず出てくるのがパンをごみ袋何袋分も捨てているという現状だ。パンだけでなく、他の飲食系も相当量だ。

筆者が全国講演で地方都市などへ行った際にも、直接、パンメーカーの社員の方から悩みを伺った。

2、デパ地下パン屋で毎晩廃棄に悩むメーカーがフードバンクへ相談

これも当事者が語ったからわかることだが、デパ地下に入っているパンメーカーから、フードバンクへ相談にきたことがあった。

この百貨店は、パンメーカーに対し、「閉店間際のお客様にもたくさん種類があるように」と指示し、「百貨店のブランドイメージが落ちるから安売り禁止」だそうだ。したがって、毎晩、山のように、焼きたてパンを捨てている。

3、消費者がパン屋が捨てるのを見た

顧客である消費者自身が、パン屋やコンビニ、スーパーのごみ捨て現場で捨てられるのを目にしている。中にはソーシャルメディアへ写真付きで投稿されているものもある。

「捨てない・働かない・旅する」パン屋

以前は大量に毎日捨てていたという広島市のブーランジェリー・ドリアンも、今では「捨てない・働かない・旅するパン屋」だ。2015年秋からパンを1個も捨てていない。

広島市、ブーランジェリー・ドリアン(ブーランジェリー・ドリアンHPより)
広島市、ブーランジェリー・ドリアン(ブーランジェリー・ドリアンHPより)

店主の田村陽至(ようじ)さんは、著書『捨てないパン屋』で、「何億円パンを売ろうが、大量に捨てるなら何の価値もない」と語っている。

広島市、ブーランジェリー・ドリアンの田村陽至(ようじ)さん・芙美さんご夫妻(筆者撮影)
広島市、ブーランジェリー・ドリアンの田村陽至(ようじ)さん・芙美さんご夫妻(筆者撮影)

パン購入ランキング1位の京都市は家庭ごみも事業系ごみも全国的に少ない!

パン購入金額・購入量ともに全国1位の京都市は、ごみ削減や食品ロスの分野では先進自治体だ。拙著『賞味期限のウソ』でも9ページを割いて京都市の取り組みを紹介している。国内外から観光客が訪れ、修学旅行生も年間110万人来るというのに、その少なさは秀逸だ。

そして、京都府全体で見ても優れている。

何しろ、家庭から出る生活系収集可燃ごみ排出量(1人1日あたり)は、京都府が47都道府県中、1位だ(平成28年度実績、環境省発表による)。

1、京都府  183 (g/人・日)

2、大阪府  211

3、和歌山県 305

4、神奈川県 319

5、北海道  343

6、秋田県  355

7、長野県  366

8、広島県  385

9、福岡県 400

10、香川県 401

京都市制作の食品ロス削減のためのリーフレット(筆者撮影)
京都市制作の食品ロス削減のためのリーフレット(筆者撮影)

京都府は、家庭系で1位であるだけではない。企業などから出る事業系のごみを合算して平均化した値でも上位に位置している。

1、長野県  822 (g/人・日)

2、滋賀県  831

3、熊本県  843

4、京都府  845

5、沖縄県  854

6、埼玉県  867

7、神奈川県 872

7、香川県  872 (神奈川県と同点)

9、佐賀県  877

10、静岡県 886

京都市は自治体では珍しく、食品ロス削減のための実証実験を複数実施している(筆者撮影)
京都市は自治体では珍しく、食品ロス削減のための実証実験を複数実施している(筆者撮影)

パン需要の多い西日本のパン屋さんは捨てない工夫を

東北・北陸で購買量の多いラーメン(中華麺)と違い、パンは、西日本で需要が多いことがわかった。

西日本でパンを販売する事業者の方は、ぜひ「捨てないパン屋」を見習って、捨てない工夫をして頂きたい。

たとえば、埼玉県川口市の坂巻達也さんは、父親の代から営んできたパン屋を、現在、レストランや保育園などの法人向けのみに絞った。消費者向けは100%予約制販売にしている。それにより、食品ロスはほとんどゼロになったそうだ。

埼玉県川口市の坂巻達也さん。前に並んだパンは全て予約されたもの。このあと全て売り切れた(筆者撮影)
埼玉県川口市の坂巻達也さん。前に並んだパンは全て予約されたもの。このあと全て売り切れた(筆者撮影)

われわれ消費者が地元の「捨てないパン屋」を見極めるコツ

われわれ消費者が損をしないためには、毎日、山のように捨てるパン屋では買わないことだ。なぜなら、そういうパンには捨てるコストが入っているから。

とは言え、なかなか理想通りにはいかないのはもちろんだ。それを承知の上で、近くの「捨てないパン屋」を見極めるコツは2つ。

1、閉店間際にどれくらいパンが残っているかをチェックする。山のように残しているか。「閉店間際のお客様に対しても多種類のパンをご用意して・・・」というのは言い訳に過ぎない。売り切る努力をしているかどうか。

2、ごみ捨て現場をチェックする。独立した店舗であれば、目にするチャンスがある。

食べ物売る商売で捨てる食べ物の処理は「税金やで!」

多くの人が誤解しているが、事業者が出す食べ物ごみのうち、産業廃棄物として事業者が全てのコストを持つのはメーカーから出たものだけ。

コンビニ・スーパーの売れ残りや、ホテルのビュッフェや飲食店の食べ残しは、事業系一般廃棄物として、その市区町村の家庭ごみと一緒に焼却処分されることがほとんどだ。つまり、事業者負担だけでなく、われわれの納めた税金を使っている。自治体によってその額は違うが、東京都世田谷区の場合、そのコストは、1キロあたり55円。パンや恵方巻きの大量廃棄の映像を他人事のように見ている場合ではないのだ。

「捨てないパン屋」を広島だけでなく全国に広めることは、パン屋さんにとっても、パンを買うわれわれ消費者にとっても、メリットになる。

参考記事:

捨てない・働かない・旅するパン屋は愛溢れる自然体 夫婦で年商2500万円 薪の石釜で焼く国産小麦パン

「何億円パンを売ろうが大量に捨てるなら何の価値もない」借金店を年商2500万円にした 捨てないパン屋

コンビニスーパー売れ残り廃棄に税金使われるのに「事業ごみは事業者負担で税金0」の誤解は企業に好都合?

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京都でパンフェス、パリの人気店も登場(Lmaga.jp)

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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