「出世お断り」の若者が急増! 「課長になるぐらいなら会社を辞めます」のなぜ?
「課長になるぐらいなら、私は会社を辞めます」
「営業お断り」のように「出世お断り」の若手社員が増えている。私(55歳)が新入社員だった頃は、誰もが出世を夢見ていた。昇進して給料を増やし、一戸建てのマイホームを建てることを目指して頑張った。それが今では、昇進を打診されても「断る」と答える人がとても多いのだ。
今回は、「出世お断り」の若者が増えている理由を3つ紹介する。そして、この問題にどう向き合えばいいのかについても考えていきたい。
経営者や人事担当者だけでなく、これから社会に出る学生や転職を考えている人にとっても、参考になる内容だ。ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■管理者の役割がよく分からない
出世したくない一番の理由は、管理者の役割がよく分からないことだ。多くの会社では、管理者の仕事内容が明確ではない。20年近くマネジャー研修をしているが、参加した部長や課長に「マネジメントとは何か?」と聞いても、部下育成、組織運営、目標達成の支援など、さまざまな答えが返ってくる。
この現象はどんなに時代が変わっても同じだ。それぐらい「管理」「マネジメント」は、人によって解釈が異なる言葉となってしまっている。
本来、マネジメントとは目標を達成するためにリソースを効率よく配分することだ。しかし、多くの人がマネジャーの仕事を広く解釈しすぎている。そのため、やらなくてもいい仕事まで背負い込み、本来やるべきことができなくなる。これが「割に合わない」と思われる原因になっている。
■若手を育てるのが難しい
若手社員の育成が難しいと感じているマネジャー候補も多い。上司が苦労している姿を見て、「自分にもできるだろうか」と不安になるのだ。
驚いたのは、28歳の若手ホープが言った言葉だ。
「最近の若い人は、何を考えているか分かりません」
28歳の若者でも、23歳、24歳の人が考えていることが理解できないと言う。それほど現代の若者は価値観や働き方の意識が多様化している。自分の上司のやり方では期待通りに育たないに違いない。そう思い込んでも不思議ではないだろう。
■不確実な時代に目標達成が難しい
「VUCA」という言葉をご存じだろうか。
Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を並べて「VUCA」という。現代は、「VUCAの時代」と呼ばれて久しい。
予想外のことが毎年のように起こる。新型コロナウイルスが世界で猛威をふるったとき、管理職の人たちの悩ましい姿を身近で見ていた者からすると、
「こんなプレッシャー耐えられない」
「自分だったら逃げ出したい」
そう思った若者も多いはずだ。
柔軟性のある人材なら問題ないが、これまでと違うことをやりたがらない人にとっては負担が大きい。組織メンバーの意識や行動もその都度変えなければならない。変化に弱いメンバーがいると、マネジャーのストレスは大きくなるからだ。
■3つの対策
この問題を解決するには、3つの対策が必要だ。いずれも会社側の対策が急務である。
(1)マネジャーの定義を明確にする
マネジメントとは目標を達成させるためにリソースを効果効率よく配分することだ。この基本をしっかり伝える必要がある。そして早い段階からスキルアップのための教育をすべきだ。
(2)部下育成の責任範囲を明確にする
マネジャーは部下に教える専門家ではない。親が子どもの勉強を見るぐらいの責任でいいことを伝える。そして部下育成、教育は外部の専門家に任せる。もしくは専用の教材を利用するようにすべきだ。
(3)若者へしっかり啓蒙する
若者に当事者意識を持たせることが大切だ。教育と啓蒙は異なる。啓蒙は上司ではなく会社が行うべきだ。啓蒙が苦手な上司はたくさんいるのだから。
■重要なのは上司の「部下離れ」
出世したくない若者が増えている問題は、簡単には解決できない。しかし管理職、マネジャーの役割を明確にし、部下育成の責任範囲を決め、若者への教育を充実させることで、少しずつ改善できるはずだ。
大切なのは「親離れ」と似た「部下離れ」だ。「私がいないと部下は何もできない」と思い込まないこと。背負い込めば込むほど、次の世代のマネジャーのなり手がいなくなる。
「出世お断り」の若者が増えることは、組織の大きな課題だ。しかし、この課題に真剣に向き合うことで、より良い組織づくりのチャンスにもなる。知恵を出し合い、若者も活躍できる組織を作っていくことが大切だ。
<参考記事>