高まるテロへの警戒「米最高レベルの要人警備」を見せつけられた。9.11追悼式典取材での体験談
2001年9月11日の同時多発テロ以降、アメリカの空港、観光地、エンタメやスポーツ会場など人が集まるあらゆる場所では金属探知機が設置され、「空港並み」のセキュリティ体制が敷かれるようになった。
特に9.11の追悼式典のような国家のVIPを伴う場となると、「国家最高レベル」の警備体制となる。筆者は毎年、世界貿易センターの倒壊跡地であるグラウンド・ゼロで行われる9.11追悼式典の取材をしているが、年を追うごとに警備が厳しくなっている実感がある。特に今年は厳重なチェックが何重にも連なるなどこの数年でもっとも厳しく、米当局がテロを相当警戒している様子が窺えた。
どのような警備体制だったのか、記録としてここに残しておく。
まずはそもそもの話だが、筆者のような記者、そして遺族は、事前に身分を明かした上で登録しており、承認された記者や遺族、関係者だけがこの式典会場(敷地)に入ることができる。
昨年はセキュリティ体制が敷かれた入り口のテントで、金属製タンブラーが引っかかった。手放すか敷地内での取材を諦めるかの二択を迫られ、泣く泣く没収され捨てられた。これを教訓に、今年は水筒類はいっさい持参しなかった(市販のペットボトルは持ち込み可)。
3年前(以下の記事の時点)はもっと緩く、事前登録なしでも筆者は記者として敷地に入ることができた。持ち物チェックをされた記憶もない。副大統領がこんな近くにいるのに意外と緩いのねと思ったのを覚えている。記者に対するセキュリティは2年前から強まったような気がする。
さて今年は、まずプレス用の窓口でプレスパスを受け取る。そこからエスコートが必ず付き、セキュリティのある入り口まで案内してくれた。入り口付近にはライフルなどで物々しく武装した警官が何人も立っている。一人の警官が私に、カメラバッグを含む全手荷物を道路に置くようにと言う。K-9(警察犬)が荷物をチェックするそうだ。このような指示は今年が初めてだった。
K-9がやって来て荷物をチェックしたが、それで終わりではない。その警官は道路に置かれたままの私の荷物を開け、中身を入念に確認し始めた。カメラのスイッチを入れメモリーカードの内容までチェックしていた。相手は警官と言えど、見知らぬ者が自分の持ち物を触り、ベタベタと手垢をつけられるのは決して気持ちの良いことではない。しかし受け入れないと中に入って取材できないのだからしょうがない。
やっと通過の許可が下り、金属探知機のあるセキュリティを通る。
やっと会場敷地内に入ることができても、勝手に記者スペースに行くことはできない。別のエスコートが現れ、記者を何人かまとめてそこまで誘導した。
敷地内ではウロウロできず、式典開始後しばらくはそのスペースに留まっておく必要がある。式の開始を待っている間、近くの簡易トイレに行こうとしたら、トイレに行くのもエスコートが必要だと言われた。すぐそこなのに!
式典が始まりしばらくすると、我々も記者スペースから遺族やVIPが参列する近くに行くことが許可された。取材や撮影を終え会場を去る時も、行きと同じチェックポイントを利用するが、検査はなし。
米国でテロへの警戒強まる
毎年ニューヨークで人々に9.11の記憶を聞いているが、またいつか同じようなテロがこの地で起こるのではないかと心配する人は多い。
アメリカが警戒しているのは、9.11のような規模のテロだけではない。国内テロに対しても警戒している。昨年5月にはニューヨーク州バッファローのスーパーで人種的な動機により男が10人を射殺した事件が起こった。2018年にはペンシルベニア州ピッツバーグのシナゴーグで乱射事件があり11人が死亡した。
8つの州を除く全米の多くの州では、2010年から21年の間に少なくとも各1件の国内テロ事件が発生している。さらに「過去10年間で国内テロに関連した捜査は357%増加」と米国会計検査院(GAO)は伝える。
国内外あらゆるテロを事前に防ぐためには、厳重すぎるほどの「自衛」が必要なのだと、9.11追悼式の厳重な警備体制を通し、改めて実感した。
(Text and photos by Kasumi Abe) 本記事の無断転載やAI学習への利用禁止