悲願の初優勝を目指して!阪神タイガースジュニア2018
■タテジマに身を包む阪神タイガースジュニア
年の瀬を迎え、一気に気温も下がった。ロングのダウンを着ていても首をすくめたくなるほどの空気の冷たさを感じる。しかし、そんな寒さなどどこ吹く風とばかりに熱い集団がいる。「タイガースジュニア2018」のメンバーだ。12月末に控える「NPB 12球団ジュニアトーナメント」に向けて、燃えに燃えている。
「NPB 12球団ジュニアトーナメント」とは、日本野球機構(NPB)の事業のひとつで、NPBとプロ野球12球団が連携し、子どもたちが“プロ野球への夢”という目標をより身近にもてるよう2005年に企画、創設されたものだ。
各球団のOB選手が監督やコーチに就任し、小学6年生を中心に結成された「ジュニアチーム」が頂点を目指して戦う。過去、このジュニアトーナメントを経験した中から多くのプロ野球選手が誕生している。昨年、タイガースジュニア出身者がはじめてプロのドラフト指名を受けた。千葉ロッテマリーンズの安田尚憲選手がそうである。
今年も昨年同様、16人の精鋭たちが選出された。8月上旬にセレクションが行われたが、年々受験者が増え、今年は昨年より100名ほど多い約360名が集まり、しのぎを削った。(参照記事⇒阪神タイガースジュニア2018セレクション)
選ばれた16人は8月に合宿で結束を固め、9月には甲子園球場の室内練習場で練習をした。日頃、タイガースの選手が練習をしている場所ということで、興奮が隠しきれなかった。この日はユニフォームの採寸も行った。プロの選手とまったく同じユニフォームを身にまとえるのもまた、このジュニアトーナメントの醍醐味のひとつだ。
11月には自身で選んだ背番号のついたユニフォームを着て、甲子園球場のグラウンドでの練習も経験した。広くて美しいスタジアムに思わず声も弾み、体もより動いた。
他球団のジュニアチームとの練習試合も11試合行い、試合を重ねるごとにチームワークもよくなった。戦績も9勝2敗(勝率.818)と上々で、本番に向けて気持ちも昂ぶってきた。
■3人の首脳陣
タイガースジュニアの指揮を執って3年目となる八木裕監督は、「たくさんの選手の中から選ばれたことに誇りを持って、思いきったプレーをしてほしい」と言い、「まだまだバットが振れていない。素振りというのは効果があるから、早素振り、全力の素振りを忘れないように」と自宅でも素振りを継続するよう課している。
2年目の鶴直人ピッチングコーチは「ピッチャー陣は順調」とうなずく。「『全員が主力で投げられるよう、コーチを悩ませてくれ。結果で示してくれ』と言ってきた」。投手陣はそれに応え、本当に誰を主戦にするか悩まされるくらいに各自が自主練習を頑張ってきたという。
技術だけでなく取り組む姿勢を大事にし、加えて状況判断なども考慮して、誰がどの場面で投げるかを決めていく。「本番になると緊張も加わるし、プロの球場という雰囲気もある。そこで勝ちにいくのに誰が適正か」。厳しいようだが、やるからには勝ちを求めていく。
「トーナメントでさらに成長してくれると思うし、勝ってさらに成長できるから、なんとしても勝ちたい。勝たせてあげたい。その土台はできたので、楽しみ。でも浮ついたことは言いたくない。まずは予選からしっかりやっていきたい」。手応えを感じつつも、それが油断にならないようにと気を引き締めている。
はじめてジュニアチームに就いたのは、タイガースアカデミーでも講師をしている柴田講平バッティングコーチだ。「セレクションではお互いに知らない者同士だったのが、会話も弾むようになって、だんだんと子どもたち同士の距離感もなくなってきた。それがチームワークに繋がっている」と変化を感じ取っている。「ひとりだけがよくてもダメ。誰かが悪かったら他の子がカバーする。野球はそういうもの。少年野球はそういうのを大事にしたい」。
「全力疾走とか、言われなくでもできるようになってきた。当たり前のことを当たり前にやることは難しいけど、今の時期から伝えるのが務めだと思っている」と、メンバーたちの成長に心を砕いている。
結成当初は“もったいないプレー”も多々見られたという。「最初に経験したのがよかった。今はそういうもったいないミスもなくなってきたし、緊迫した場面でも慌てず落ち着いてプレーできるようになった。より引き締まったゲームができている」。その進化に感心し、「先制されても簡単には終わらないなというのを感じさせてくれる。試合をするごとにチーム力が上がってきた」と目を細める。
■16人のちびっこ虎戦士
それでは16人のちびっこ虎戦士たちを紹介しよう。(背番号・名前・ポジション・投/打・所属チーム)⇒文末に顔写真
0 澤田陸翔(内野手・外野手)右/右・明峰少年野球クラブ
1 高槁直輝(投手・外野手)右/右・荻野フェニックス
2 井関駿翔(捕手)右/右・城南少年野球団
3 小森拓人(内野手)右/左・貝塚スポーツ少年団東地区
4 西光塁生(内野手)右/右・熊取ジャガーズ
5 西村大和(投手・内野手)右/左・西脇ワイルドキッズ☆主将
6 才田和空(内野手・外野手)右/右・浜甲タイガース
7 佐々木陽樹(内野手・外野手)右/右・レインボージュニア ベースボールクラブ
8 三浦大輝(外野手)右/右・金屋少年野球クラブ
9 高津優(内野手)右/右・山北フェニックス
10 高槁響希(捕手・内野手)右/右・北ナニワハヤテタイガーズ
11 木ノ下修人(投手・外野手)左/左・浜脇タイガース
17 中元煌翔(投手・内野手)右/右・印南黒潮少年野球クラブ
18 豊島虎児(投手・外野手)右/左・南津守タイガー
22 堀内将太(投手)右/右・箕面ジュニアーズ
44 只石貫太(捕手・内野手)右/右・守口ブルーファイターズ
■“トレーナーの卵”にとっても実践の場
今年からジュニアチームには心強いサポートがついた。タイガースアカデミーも見てもらっている「大阪リゾート&スポーツ専門学校」の先生と生徒5人のチームだ。
練習や試合には必ず帯同し、ウォーミングアップのメニューも作成する。それぞれ筋力や柔軟性など異なるメンバーたちの体の特性を把握し、先生と生徒の間でしっかりと情報共有している。
生徒をまとめている植田優貴先生は「今は痛みがなくても、このまま続けていけば痛みが出るということもある。それを先に見つけるように観察しています。特に肩や肘は成長期に痛めやすいので」と、ひとりひとりのカルテを作っているという。
さらに「中学、高校と野球を続けられるように」と、故障を未然に防ぐだけでなく、筋力などの弱い箇所を強化するトレーニング法も授ける。
メンバーたちは体を見てもらえ、生徒にとっては現場で経験を積める。お互いウィンウィンの関係である。
■いざ!北の大地へ!!
すでに組み合わせが発表になり、タイガースジュニアはグループBに属し、大会2日目の12月28日、東北楽天ゴールデンイーグルス(8:00〜)、オリックス・バファローズ(12:10〜)のそれぞれジュニアチームと戦う。
このグループリーグを1位通過すると、いよいよ決勝トーナメントだ。タイガースジュニアはここ2年、決勝まで進むも最後に涙を飲み、準優勝に終わっている。
優勝を目指すことはもちろんだが、八木監督はメンバーに言う。「北海道で大きな地震があったこと、ニュースで知ってるやろ。雰囲気の違う大会になると思うけど、そういうこともちゃんと頭に入れてプレーすることが大事やぞ。札幌に行って、思いっきりいいプレーすることが、自分たちにできることやからな」。
八木監督が常に説いている「人間力」だ。普段の生活をちゃんとやることが野球に繋がるし、また人への思いやりを持つことが自分を高めることになると伝えている。
「せっかく集まったメンバー。選手にプラスになるようやってあげたい」。人間力を磨きつつ、しっかりと結果も出すよう教育している。今年こそ、悲願を成就するつもりだ。
《阪神タイガースジュニア2018 メンバー》
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(撮影はすべて筆者)