NPB12球団ジュニアトーナメント―今年の阪神タイガースジュニアは・・・?
■プロ野球選手も誕生している「NPB12球団ジュニアトーナメント」
先日、阪神タイガースのセレクションが行われた。といっても、もちろんプロではなく「阪神タイガースジュニアチーム」の話だ。
一般社団法人日本野球機構(NPB)の事業のひとつである「NPB12球団ジュニアトーナメント」はNPBとプロ野球12球団が連携し、子供たちが“プロ野球への夢”という目標をより身近に持てるよう企画、創設された。参加チームは各球団のOB選手が監督に就任し、小学5、6年生で構成される。
2005年にスタートしたこの大会だが、毎年8月に各球団のセレクションが行われてチームが結成され、それぞれ練習を重ねて12月にトーナメントが開催される。
試合方式は、まずグループリーグから始まる。12球団を3チームずつ4つのグループに分け、各グループ3チームによる総当り戦を行い、最も勝利数の多いチームが決勝トーナメントに進出する。つまり4チームが準決勝に進むわけだ。
チームの選手は18名。嬉しいのは憧れのプロ野球選手と同じユニフォームを身にまとって戦えること。そして全国のトップレベルの試合が体験できるのだ。
昨年までにこの大会に出場した選手の中から17名がプロの舞台に立っている。東北楽天ゴールデンイーグルスの松井裕樹投手もそのひとりだ。DeNAベイスターズジュニアとして出場した松井投手は「小学生のうちから高いレベルの選手とプレーできるというのは、その後の野球人生においてとてもプラスになりました。小学生にとっては、その時はわからなくても、あとになって有意義であったと思える大会になると思います」とコメントし、同じく大会に出場してプロに進んだ同級生として田口麗斗投手(読売ジャイアンツ)や森友哉選手(西武ライオンズ)の名前を挙げている。
■阪神タイガースジュニアチームのセレクション
さて件の阪神タイガースジュニアチームの選手セレクションは8月8日から10日まで3日間かけて行われた。昨年までは2日間だったが、監督やコーチから「もう少し見たかった。もっとじっくりレベルを見極めたい」との声があったことと雨天も考慮に入れ、今年は3日間とした。
監督は八木裕氏。ジュニアチームでは今年初めて指揮を執る。投手と捕手を担当するバッテリーコーチは中谷仁氏。昨年に続いて2度目だ。バッティングコーチの庄田隆弘氏は3年連続となる。この3人が逸材の発掘に目を光らせる。
今年の参加総数は185名。まず初日の午前に遠投と50m走のテストだ。この記録を参考に午後からの参加者を選出。午後はマシン打撃やノックなどの技術テストを行い、ここで50名に絞られた。
2日目はマシン打撃やバント、シートノックなどをチェックし、35名が通過した。
最終日は午前中にバッティングや守備をした後、午後からは「実戦で力を発揮できる選手を見極めるため」と2つのチームに分けて紅白戦を行った。ゲームでの対応力はもちろんだが、打席や守備への準備や声出し、ほかの選手へのサポートなども評価の対象になった。こうして今年の阪神タイガースジュニアチームの選手18名が決定した。
■ジュニアチーム首脳陣の話
八木監督にチーム作りについて聞いた。「選手たちには、ここでは基礎をしっかり体験してもらいたい。そして、これからの野球人生のプラスになるようなチームにしたいね。もちろん勝つためにやるし、勝つに越したことはないけど、それだけじゃなくチームメイトとしっかり気持ちを通じ合わせて、元気で明るいチームにしたい」。
またセレクションから漏れた子供に対しても「他のチームの選手と話したこともプラスになるし、いい経験。受からなかった選手も落ち込む必要はない。今後また中学でリベンジすればいい。これからリベンジのチャンスはいくらでもあるんだから」とのメッセージを送った。
中谷コーチはセクションの間も、子供たちへのアドバイスを惜しまなかった。特に強調していたのは「準備の大切さ」だ。漫然と素振りをしている子供には「相手ピッチャーにタイミングを合わせて振らんと意味ないやろ!下向いて振ってどうするねん!!」など、準備の仕方も口酸っぱく繰り返した。
「持っている力の半分も出せないのがセレクション。そこで大切になってくるのは準備」と語る。「本当はチームが結成されてから教えることで、セレクションではそういうことができているかどうかも判断材料になるんだけど、みんなあまりにも緊張していいところが見せられないと思って、ついつい言っちゃいました」。普段の力を発揮してほしいとの“親心”からだ。
「今回した自分の準備がうまくいったのか、ダメだったのかをしっかり振り返ってほしい」と、このセレクションに参加したことが今後への糧になることを説いていた。
ジュニアチームの指導は3年目を迎えた庄田コーチも、「過去2年のチームはそこそこ打ったんで、この2年の経験を生かして今年もバッティングをしっかり頑張らせたい」と意気込んでいる。セレクションでもひとりひとりをじっくり丁寧に観察していた。
「選ばれた子にとっては何かプラスになるようにやっていきたい。大会もそうだけど、将来に向けてプラスになることを伝えられたり教えてあげられたら」と愛情たっぷりだ。
■野球界全体の活性化
阪神タイガースの球団からは営業部興行担当の浅井智文氏が事務局の担当者として参加しているが、2年前からセレクションに力を入れ始めたという。「他のチームもレベルが上がっている。より多くの子供が参加してくれたら…」と話す浅井氏が願うのは、野球界全体の活性化だ。
「それぞれ自分のチームでは4番やエース、キャプテンという子が集まってくる。いわゆる“お山の大将”がね。それが自分の実力より上の子と出会ったりする。自分のチームでは一番上やと思っていたのに『こんなに上がいる』とビックリしたりね。『次元が違う』ということもある。そこでどう感じてくれるか。自分がトップと思っていたら成長はないから。それをまた自分のチームで活かしてくれたら嬉しいね」。
こういったことが野球界全体を盛り上げ、「地道な活動やけど、野球振興にも繋がっていくんじゃないかな」と浅井氏は話す。また「プロの正しい指導を受けた子供が増えることも、野球振興に繋がる」と、この大会およびセレクションのもつ役割は小さくないと語る。
■阪神タイガースにも大会出身者が・・・!!
実はタイガースにもこの大会の出身者がいる。ルーキーの高山俊選手だ。「千葉ですけどね」と千葉ロッテマリーンズジュニア出身であると明かし、参加したことで「野球のレベルの高さを知りました」と収穫を挙げる。
そして今年の参加者に向けて「ボクはすごくいい経験ができた。そんな経験なかなかできないので、ぜひ楽しんでほしいし、頑張ってください」とメッセージをくれた。
今年12回目を迎える「NPB12球団ジュニアトーナメント」。阪神タイガースジュニアチームは悲願の初優勝を目指す。