NPB12球団ジュニアトーナメント―「阪神タイガースジュニア 2017」のセレクション
■「プロ野球への夢」という目標をより身近にもてるように
今年も年末に日本野球機構(NPB)の事業のひとつである「NPB12球団ジュニアトーナメント」が開催される。NPBとプロ野球12球団が連携し、子どもたちが“プロ野球への夢”という目標をより身近にもてるよう2005年に企画、創設されたものだ。
各球団のOB選手が監督やコーチに就任し、小学6年生を中心に結成された「ジュニアチーム」が頂点を目指して戦う。過去、このジュニアトーナメントを経験した選手の中から20人のプロ野球選手が誕生している。今年は千葉ロッテマリーンズジュニア出身の藤平尚真投手が東北楽天ゴールデンイーグルスにドラフト1位で入団し、活躍している。(詳細記事⇒タイガースジュニア・セレクション)
■昨年の阪神タイガースジュニアは準優勝
阪神タイガースのジュニアチームは一昨年まで、グループリーグ(予選)で1勝を挙げたのが最高成績だった。しかし昨年、初めて決勝トーナメントに勝ち進み、なんと準優勝に輝いた。(昨年チームの紹介⇒2016メンバー)
今年こそはテッペンを獲ろうと、8月1日から3日間かけて西宮市の浜甲子園運動公園野球場でセレクションを開催した。今年の受験者数は、昨年の185人から247人と1.3倍も増加した。
「準優勝効果もあるのかもしれないし、ジュニアトーナメントやタイガースジュニアの認知度が上がってきているのではないかと思う。受験者が増えるということは、それだけレベルの高い選手が集まるということ」と、阪神タイガースの営業部・興行担当の浅井智文氏も嬉しそうに語る。
今年は合格人数が16人と、これまでの18人から2人少ない。これまではグループリーグ(2試合)で敗退したチームは練習試合を行い、本戦を含めて少なくとも3試合は戦うことができた。
しかし今年はトーナメント会場である札幌ドーム近くの室内練習場がとれないため、決勝トーナメントに進めない8球団は練習試合ができず、2試合のみとなる。出場できない選手も出てくるであろうことから、16人で編成することとなった。
つまり、より狭き門となったわけだ。
■落ちたところからが勝負
初日、緊張感あふれる面持ちの受験者を前にして八木裕監督はこう話した。「野球の技術だけじゃなく、大きな声で挨拶ができるとか、そういうところも見ているから」。
午前に50m走と遠投のテストが行われ、ここで約150人に絞られた。
涙を飲んだ子どもたちに八木監督は「これからまだまだ成長する。体も大きくなるし、技術も上がる。そしてチャンスはまたいくらでもある。だから絶対に諦めるな。野球をやり続けろ。落ちたところからが勝負だから」と激励の言葉を贈った。
その後は打撃や守備の技術テスト、そして紅白戦などの実戦テストが続いた。
2日目は50人で始まり最終日に臨んだのは24人、そして最終的に16人の精鋭選手が選出された。
■監督は、「代打の神様」として活躍した八木裕氏
昨年に続いて2年目となる八木監督は「16人個々に光るところがあった。これからが楽しみ」と目を細める。
昨年の大会については「タイガースジュニアにとっても初の決勝トーナメントに進出できた。それを達成するために勝ちにこだわったが、選手起用に関してなかなか出られない選手もいたというのは、自分自身の反省点」と振り返る。
それを踏まえ、「もちろん出た選手も出ていない選手も勉強にはなるんだけど、16人全員がいい経験ができるような大会にしたいね。選手の力量はこれから把握していくけど、できるだけ多くの選手を使っていきたい」と考えている。
■野手コーチは、走行守三拍子そろった庄田隆弘氏
野手担当として4年目となる庄田隆弘コーチは「去年は打線を固定できず本番を迎えたので、調子のいい選手を入れ替え、やり繰りしながら臨んだ。それが当たったところもあった」と省みる。
「去年、あとから出た選手が活躍してくれたりということもあったので、今年はより選手の見極めをしっかりやりたい。こうじゃなきゃいけないという固定観念に縛られずにやりたい」と意気込む。
「去年もセレクションでズバ抜けた選手はいなかった。今年も特別に目立つ子はいない。去年のように、個ではなくチームで勝てるようプラスアルファの部分…考え方も含めた指導をきっちりやりたい」と、チームとして機能するよう教えていくつもりだ。
「去年いい形で結果が出たので、いい部分は去年に倣ってやっていきたい」。コーチとしての3年の実績にも期待が懸かる。
■投手コーチは、抜群の野球センスが光る鶴直人氏
そして新たに加わったのは投手担当の鶴直人コーチだ。
2005年、高校生ドラフト1位で阪神タイガースに入団して117試合に登板し、9勝を挙げた。昨年ユニフォームを脱ぎ、今年からは営業のファンサービス部門でチームを盛り立てている。
タイガースジュニアでの初のコーチにも「責任感をもってやりますよ。やるからには優勝を目指したい」とエネルギッシュに臨んでいる。
「選手には今後の野球観を含め、いい方向にいくように、いい経験になるようにしたい。選手が何か変わるきっかけ、よくなるきっかけになるように。勝ちにこだわるのはもちろんだけど、その中で練習方法であったり、姿勢や野球の考え方、そういったことも話していきたい。最終的には人間力なので、それを踏まえて育ってくれたら」と非常に熱い。
小学生への指導は初めてだというが、「八木さんや庄田さんにもアドバイスをもらいながら、自分も一緒に成長していけたら。ボクが培ってきたことをできる限り伝えていきたい」と、鶴コーチならではの手腕を発揮してくれそうだ。
「野球の競技人口が減っている。技術のある子を増やしてくのももちろんだけど、野球振興に尽力できるよう頑張っていきたい」。話せば話すほど“野球愛”が痛いほど伝わってくる。
チームは今後、夏合宿で結束を固め、秋には練習試合重ねて12月末の本番を迎える。
■お手伝いに汗を流した2016年メンバーたち
さて、このセレクションには毎年、前年のチームがお手伝いにくる。今年は2016年メンバーがやってきた。そう、準優勝に輝いた選手たちだ。
1年が経ち、久しぶりにタテジマのユニフォームに袖を通したメンバーは背も伸び、表情も少し大人っぽくなっていた。先輩風を吹かせて、セレクションの受験生たちをバックアップする姿は頼もしく映った。
そんな2016年メンバーの“現在地”を、次の記事で紹介しよう。